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【ゲームレビュー・クリア後ネタバレ】「生と死も因果も巡る」から「生かせばいつか生かされる三部作へ」

The Last Of Us Part IIのクリア後・ネタバレなゲームレビューです。ネタバレなしのゲームレビューは以下で紹介してます。

ここでは本作をプレーしたことがある方、特にクリア後の方を対象に、ネタバレ全開でレビューしたいと思います。

生と死も因果も巡る:

本作は、殺せばいつか殺される、復讐は復讐を呼ぶ、多くの生き残った人間たちや犬たちの生と死、そして新しい命が描かれます。

①ジョエルに巡る:

前作の主人公ジョエルは、感染症勃発の混乱で愛娘サラを失った中年男性です。ジョエルは前作で数え切れないほど多くの死を直接的に生み出し、人類を感染症から救うことよりもエリー一人の命を助けたがために、間接的に数え切れないほど多くの人の命を救うことを選ばず、また、さらに多くの命が失われるきっかけを作りました。もちろん、世界を救おうとしていたアビーの父、医師のジェリーや多くのファイアフライ構成員たち、依頼人のマーリーンを殺します。サラを失い、多くの悪人も善人も殺し、エリーを助けたジョエルは、今作冒頭でアビーを助けた後に、そのアビーにゴルフクラブで撲殺されます。生と死、殺して殺される因果が巡りました。

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②エリーに巡る:

今作の主人公エリーは、自分の身体が人類全体を救う唯一の可能性との重責を担って生きています。ひとつの命が人類全体を救いうるという極端な生と死のアンバランスさが、エリーが抱える複雑さです。エリーは今作で、ジョエルが自分に嘘をついていたことや、死に囲まれた世界で思春期を迎えたこと、自分が生き延びたことによって人類が救われなかったことなどで、強い自己否定(感染者の嚙み跡に被せた蛾と植物のタトゥーも一例?)や強烈な死への執着にさいなまれているように見えます。また女性である自分と生殖が可能な男性ではなく、同性である女性に恋心を抱くあたりも複雑なものを覚えます。娘の父(代わりのジョエル)に対する反抗期も重なり、とても複雑な主人公が今作のエリーです。

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エリーは、自分ひとりの命とそれ以外のすべての命を抱えた生と死の巡りの中で苦しみます。ジョエルを失ったことで、ジョエルとは何者だったのか、自分とは何者なのかというアイデンティティを、まさに死に物狂いで見つけるためにも、ジョエルを殺したアビーとその仲間への復讐の旅にエリーは出かけていくわけですね。

そこで感染者たちだけでなく、多くのWLFやセラファイトたちの死体を累々と積み重ねたアビーは、今作の最後でその因果が巡り、ディーナとJJ(ディーナの赤ちゃん)を失い、左手の薬指と小指を第一関節から失います。そしてジョエルとの思い出が深い彼の遺品のギターで、ジョエルが好きだった曲をうまく弾くことができなくなります。生と死、因果が巡りました。

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③アビーに巡る:

アビーの物語にも生と死、因果が巡っています。父ジェリーを失い、父を殺したジョエルに復讐を遂げたものの、そのことで仲間であるリア、ニック、ジョーダン、ノラ、マニー、そしてメルとオーウェン(アリスも……涙)を失います。

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しかしアビーの物語は、アビーの方がエリーよりも年長なことも相まって、エリーよりもアビーの人生は一歩先を行っています。アビーの物語は復讐の連鎖から解放されていく物語です。エリーの命を見逃すことから始まるその過程で、敵だったヤーラやレブと打ち解け、許し合い、命を賭して助け合うようになり、エリーの命をまたも奪わず生かし、レブを救い出し、最後には非戦を標榜し、因果の結果としてエリーに生かされることになります。

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④他の人にも巡る:

主要キャラ以外の周りでも、生と死、因果は巡っています。

ジョエルの弟であるトミーは多くの人を殺してきましたが、ジョエルやエリーにとっては心優しい男でした。しかし因果が巡ってか、アビーとレブに攻撃されて、左足が不自由になり右目の視力を失い(?)、心優しき人間性が、今作の最後には復讐にとりつかれた哀れなものになり、パートナーのマリアとも不仲になったまま今作を終えます。

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アビーによるジョエル撲殺現場にいたアビーの仲間たちはみな、トミーかエリー(リアはセラファイトによって?)によって殺されてしまいます。リア、ニック、ジョーダン、ノラ、マニー、メル、オーウェンですね。

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なかでもアビーの恋敵になってしまったメルは妊娠していましたし、アビーによるジョエル殺害をよく思っていないメンバーでした。オーウェンが撃たれた際にエリーに刃を向けたことで、逆に殺されてしまいました。因果がここでも巡った感があります。

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オーウェンはアビーと同じく、アビーの父ジェリーがジョエルに殺害されたことへの復讐心を当初こそ持っていましたが、WLFの活動に共感を失い、エリーに殺された際にはメルを守ろうとしたがゆえにエリーに殺されてしまうという、さびしい最後を迎えます。プレイヤーからは憎まれるよりも愛されたキャラクターだったと思います(男としてはなんとも優柔不断でしたが……)。

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そして犬のアリス。エリーが殺した際に、この犬は他の犬と比べてキャラがあったからもしかしてと思っていたら、アビー編で案の定、名前付きで出てきたので、犬好きとしてはややヘコんでしまいました。

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なお、PSVitaをプレイしていたホイットニーも、アビー編ではいいキャラした仲間でしたし、エリー編で登場した際も憎めない顔をしてましたね。友達のアビーを守ろうとして殺されたと思うと、思うところありますね。

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生と死も因果も巡る。

The Last Of Us Part IIを読み解くキーコンセプトだと思います。

生かせばいつか生かされる三部作へ:

本作は前作の続編、第二作目ですが、私は第三作目は大いにあると思います。今作は作品の内容からしても、制作者側の狙い通りだとは思いますが、大いに賛否両論が巻き起こった作品です。悪名は無名に勝るわけで、この計画的に引き起こされた賛否の嵐をしずめるためには、第三作目が待たれます。そして第三作目をかの有名なドラクエIIIがロトの物語を見事に伝説に変えたことに倣って、ジョエルとエリーの物語であるThe Last Of UsのPart IIIを「そして伝説に」するために必要なことを以下、考えておこうと思います。

三部作の落としどころは、伝説のためにはただのハッピーエンドでも真っ黒なバッドエンドでもなく、ビターながらもカタルシスのあるハッピーエンドを期待しています。

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①追悼。生かしても生かしてもらえなかった方々へ:

今作は三部作を想定した上での二作目の役割として、ちょうどスターウォーズシリーズの「帝国の逆襲」と同じく(エリーとダースベイダー=アナーキン・スカイウォーカーを重ねる考察も大いにありだと思ってます!大きな悲劇の物語で、第三作目に向けて最後に希望の光を少しだけ見せて終わりました。

今作では「殺せばいつか殺される」の因果が巡り巡る一方、「生かせばいつか生かされる」の因果が(第三作目のために計画的に)巡らない、成就しない流れになっています。

例えば父ジェリーはアビーの回想で、シマウマを助けたり、医師として多くの命を救うために奮闘するこころ良き人物として描かれますが、ジョエルに殺されてしまいます。

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元セラファイト(蔑称「スカー(英語で引っかき傷)」のヤーラは、妹(知らないと弟に見えます)のレブを、制裁を加えようとする仲間たちや母から守るために自分を犠牲にした人物です。レブを助けようとしたために、左腕の骨を砕かれてコンパートメント症候群を発症、左腕を失います。その後も失った腕の傷に苦しみながら旅を続け、レブを追いかけていくと母親が死んでいたりなど悲劇は止まらず、最後はWLFに見つかり撃たれ、敵の指導者アイザックを撃ち取ると同時にいっせいに銃弾を浴びて死んでしまいます。頑張ってひいき目に解釈しても、ヤーラが自己犠牲をみずからの喜びとしていたのならば、レブのために腕を失ってもレブを救い、多くの命が失われるきっかけとなるWLFの指導者アイザックを自分の命と引き換えに殺せたのだから、幸せな人物と言えそうですが、ヤーラが幸せそうな雰囲気は終始なく、なかなか救われない運命でした。「生かせばいつか生かされる」因果に殉じた人物としては、あまりにハッピーとは言い難いエンドだったと思います。

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ディーナの元カレでJJの肉親であるジェシーも、エリーやディーナを命を懸けて守りながらも多くの人を殺し、最後はアビーに瞬殺される憂き目に遭いました。

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WLFの仲間たちも同様です。アビー編で描かれる彼らは、エリー編では気づきにくいものの、正義はエリー側と違えど仲間(犬も含みます!)の命を大事にする、血の通った人間たちです。彼らも多くの命を奪ってきたのと同じく、多くの命を救い生かしてきたと思いますが、みな悲劇的に殺されてしまいます。

結局みんな同じなんですね(アビー以外)。レゲエの裏打ちみたいなものですが、「殺せばいつか殺される」が表のリズムだとして、裏のリズムである「生かせばいつか生かされる」も存在するのですが、あまりレゲエのようなお気楽な音楽は聞こえてこないのが、今作第二作目だと思います。ジョエルもトミーもジェシーも本当は、多くの人を殺し、同じく生かしてきたんだと思います。

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②祝福。生かせばいつか生かされそうになった唯一の方へ:

殺せばいつか殺される、復讐は復讐を呼ぶ悪循環を、今作では唯一アビーだけが生き永らえて実現しています。エリーを生かし、ヤーラを生かし、レブを生かし、エリーをまた生かし、レブをまた生かした結果、最後はエリーによって自らとレブを生かされます。おめでとうございます(笑)!

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そして伝説へ:

思うに、第三作目はこの、第二作目の最後ですこしだけ見えた光明、「生かせばいつか生かされる」が、エリーによって実現される物語になるのではないでしょうか?そして今作ではあまり触れられなかった要素、つまり「人類が感染症から救われるためのワクチンを作る物語」になる可能性が、非常に高いと思います。かなり順当な予想でしょう。

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今作で宙ぶらりんになっていることとしては、まず、ディーナとJJの行方がありますね。彼女らがどこに行ったのか、無事なのか、これからどうなるのか、これは第三作目で大いに描いてもらいましょう。私が思うに、ディーナは今作でたくさん殺してますので、「生かせばいつか生かされる」因果よりも、「殺せばいつか殺される」因果が巡ってしまいそうな気がしてます。

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JJが第三作目での救済対象にもなりそうですね。さらに飛躍して、第三作目が第二作目から十年以上経ってからの設定などになれば、JJが第三作目の主人公も大いにあり得ますね。エリーが前半、JJが後半の主人公。最後はまたエリーが主人公になど、ジョエル、エリー、アビーに次ぐ新しい操作キャラがJJになる展開、あると思います。いずれにせよ、エリーが自分の命と引き換えにワクチンを作ろうとするのか、命を失わずともワクチンが作れる展開(これはこのシリーズにしては生ぬるい展開すぎると思います(汗))になるのかわかりませんが、第三作目で感染症問題にも一応の決着をつけるならば、エリーの免疫が中心テーマになるはずです。

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ただ、ゾンビものの大御所である「ウォーキングデッド」シリーズでは、現在はシーズン10の最後で止まってますが(コロナの影響で撮影がストップしてました)、シーズン11がラストシーズンと謳いながらもまだ、ゾンビ現象自体の解明やワクチンなどについては迫らないままにシーズンを終えようとしています。ゾンビ現象=死の隠喩だとしたら、人類が死を乗り越えるような展開はもしかしたら、興ざめなのかもしれません。

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さて、トミーの運命は微妙ですね。第二作目の最後には、いわゆる闇落ちしてましたが、第三作目でどちらの因果に絡めとられるか、これは制作会社ノーティドッグの腕の見せ所、楽しみにしたいです。

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アビーの運命も微妙ですね。しかしアビーはトミーとは逆に今作の最後で光を見てるので、第三作目でビターな要素候補として、まさに今作のジョエルのように、早めに「生かせばいつか生かされる」因果をプレイヤーにいったんは失望させるために死ぬ気もします。やはり「殺せばいつか殺される」因果が優勢なのかと思わせるための要因ですね。今作でやむなくと言えども、WLFの仲間を殺し始めたことは、やはり許されない方が納得感があるかもしれません。

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これはアビーではなくレブが役割を担う可能性も大いに高いと思います。レブが第三作目、ないし、第二作目と第三作目のあいだで殺されて、第三作目開始時点でアビーが闇落ちして出てくるのも面白い展開ですね。はたまた逆に、レブが最後まで生き残るキャラという展開も面白いですね。エリーとディーナを中心に描かれたLGBTですが、実はレブもLGBT絡みな描かれ方をしていますね。こちらは相当抑制された描かれ方でしたが、レブが第三作目で男性と恋に落ちて、子供を産むような展開もなきにしもあらずかと思います。

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ないし、レブが第三作目の主人公もあり得ますね。第一作目の主人公ジョエルはサラを失い、エリーを助けるも人類全体を犠牲にして、アビーに殺される。第二作目の主人公エリーはジョエルを失い、アビーを助け、第三作目で誰か(JJかレブ?)に殺される。そして第三作目の主人公レブは、ヤーラを失い、誰か(アビー、JJ、新しいキャラクター、人類全体?)を救う、ないし許すもエリーを犠牲にして、誰かに(JJ、新しいキャラクター、アビー、トミー?)殺されそうになるが許されて生き延びる、という展開がベタですが、The Last Of Us三部作に決着をつけやすいと思います。

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いかがでしたでしょうか?

いずれの結末になるのか、ならないのか、私は第三作目を待っております。

そして伝説へ……。

ノーティドッグ社、ぜひワンコを殺傷しないで済む第三作目を!涙笑

(了)


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