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職住近接を目指したら「家族」にぐっと近づいた。 岩沢一家の拠点づくりから実家の片付けまでの課題あれこれ。【職住近接計画 座談会その3】

空間デザインユニット「岩沢兄弟」が、生活と仕事の試行錯誤を語る座談会、第3弾をお届けします。なんと9ヶ月ぶり!「職住近接」を目指して千葉県千葉市に集結した岩沢兄弟とその家族と仲間たち。その後いろいろありました。

<前回までのあらすじ>
コロナ禍を機に地元・千葉市に戻り、住宅も見つかった岩沢兄。兄弟家族が揃ったところで次は活動拠点をつくるぞ! と物件探しがはじまりました。「兄はショップがやりたい」「弟はスタジオをやりたい」と、それぞれ違う拠点をつくる夢を抱いていたけれど……。

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<座談会の登場人物>
👱兄ひとし=岩沢兄弟の兄、デザイナー。2020年夏、東京から千葉へ引っ越してきた。妻と息子の3人暮らし。マイペースで自由なところがいいところ。
🧔弟たかし=岩沢兄弟の弟、ディレクター。兄より早く4年前に千葉へUターン。両親、妻、娘の3世代暮らし。向かいの家には90代の祖母も暮らしている。
🧑兄妻えり=兄の妻。東京でマーケティングの仕事をしつつ、岩沢兄弟のマネージャーも兼務している。千葉移住を機に通勤は週2日に。
👩かずえ=岩沢兄弟の情報発信担当、フリーのプランナー。うっかりノリで岩沢一家の近くに住居兼事務所を借りてしまった。

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あれから「放送室」をはじめました

🧔弟たかし:気づいたら前回の座談会から9ヶ月も経ってしまいましたね。

🧑兄妻えり:本当に。 そのあいだに物件をひとつ借り、2020年10月から「台形放送室」という映像配信ができる拠点をはじめました。空間をつくりながら「試験放送」(YouTube Live)を毎月この4人でやってみて、もう6回目ですね。

👩かずえ:半年! あっという間だ。でも台形放送室はいつになっても完成しない、ずーっと工事したり道具をつくっています。兄、いつできるんですか?

👱兄ひとし:台形放送室は永遠のプロトタイピング空間なんだよ。つまり完成しないことですでに「できている状態」ってわけ

👩かずえ:……うまいこといいますね。

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(▲左から:弟たかし、近所の人かずえ、兄ひとし、兄妻えり。昨年10月、工事中の「台形放送室」にてはじめての試験放送をしている様子)

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「放送室」とはいったい何なのか?

👩かずえ:それにしても、放送室は近所の人からも岩沢兄弟を知る人からも「いったい何の場所なの?」ってよく聞かれます。

🧔弟たかし:はい、僕もよく聞かれます。レンタルスタジオでもないし、事務所でもないし、機材が揃っていて、毎月1回放送する場所。ある意味、僕たちの活動のショーケースというか。兄が言うように空間や機材や活動のプロトタイプでもあるし。

🧑兄妻えり:そもそも「台形放送室」という場所で完結するんじゃなくて、あちこちに小さなメディアセンターをつくってみるプロジェクトとして立ち上げましたね。それは良かった気がします。試験放送を聞いてくれている人が少数でも必ずいて企画につながったりするし。

🧔弟たかし:放送室をつくりたいという相談も定期的に来てますよ。今月、伊豆七島のひとつ、神津島に「くると放送室」も完成しました。島でアートプロジェクトを運営するNPOが運営していきます。

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(▲神津島の「くると放送室」。元スーパーだった場所に、廃材を組み合わせ、映像配信設備をセッティングして感性)

👩かずえ:さっそく島のこども達の遊び場になっていると聞きました。楽しそう。台形放送室はいつまでたってもつくりかけなのに、次の「放送室」はちゃんと形になっているんですね。

👱兄ひとし:やっぱりどんなものでも初号機はプロトタイプだからね。三号機以降も、他の地域や組織で話を進めています。年内には関西あたりにもうひとつ出来るかな。

🧔弟たかし:「使いやすくて見栄えのいいスタジオを◎百万円でつくりたい!」みたいな効率性重視の相談じゃないところがいい流れだなぁ、と。

放送室プロジェクトはそもそも、コロナ禍を受けて始まったアーツカウンシル東京の「STUDIO302」プロジェクトの経験が下敷きになっています。こんな状況下で、あえて「少人数でも人が集まってやるべきこと」をデザインに落としていった挑戦でした。

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次の拠点は祖母宅を改装した「つくるにわ」

👩かずえ:放送室が「職住近接」の「職」の場になるかどうかは、これからという感じですが、さらに生活に近いところで新たな活動拠点づくりの計画を進めていますよね?

👱兄ひとし:「つくるにわ」だね。僕たちの祖母の家の一部、もともと編み物教室だった空間をオープンな感じの事務所にしたいと思って。設計を考えたり、ロゴデザインをつくりはじめたりしてます。

🧑兄妻えり:台形放送室は完成しないのに、もう次の拠点(笑)。

🧔弟たかし:ここは今も90代の祖母が暮らしているし、両親や僕たち兄弟一家も一緒に食事をしたり、日中を過ごしたりしている場所。いよいよ家族の話に近づいたなって状況です。

👩かずえ:そのために今月、デザイナーの黒岩美桜さんにも来てもらったんですよね。つくるにわ予定地を見てもらって、台形放送室の試験放送にも出演してもらいました。

👱兄ひとし:ロゴデザインの会議を生放送したのは楽しかったよね。技能を持った人が、僕たちを捉え直して新しい言葉や形にしてくれるのっていいなぁ。

(▲デザイナー・黒岩美桜さんも参加した3月の試験放送。「つくるにわ」のロゴデザインについて公開会議をしました。YouTubeでアーカイブも公開しています)

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ぶつかったのは「片付け」の壁

👩かずえ:そうやって新しい人が家族の場所にやってくるのも面白い。つくるにわは順調に進みそうな感じがします!

🧔弟たかし:いや、それがそうでもないんですよ。

👩かずえ:えっ。

👱兄ひとし:実は片付けのところで止まっていて。改装したいのはもう使っていない物置状態の部屋なんだけど。

🧑兄妻えり:意外にも使っている場所だということがお母さんやお父さんと話す中でわかってきたんだよね。思い出の写真があったり、掃除道具置き場になっていたりとか。

👱兄ひとし:僕からしたら不思議としか言いようのない使い方だったりするんだけど、家の中のルールそのものを理解して変更する過程が必要そうかな

🧔弟たかし:そこは「片付けて有効活用すればいいじゃない」という論理で進めるんじゃなくて、少し丁寧に寄り添って耳を傾けてみないとですね。改装の方針は家族みんな了承しているんだけど、進めるためのステップはこれから話し合う感じ

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(▲「つくるにわ」になる予定の部屋。家族の思い出と物置としての機能をどう整理するか? が課題です)

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「職住近接」を目指したら「家族」にぐっと近づいた


🧔弟たかし:兄より少し早くUターンをして気づいたことですが、親って自分達が想像しているより老いているんです。「一回確認したからいいよね?」ではだめで、何度も同じ話をする必要があったり、本音を言わない癖がついていたり。

👩かずえ:なるほど。そもそも二十年ぶりの同居ですもんね。

🧔弟たかし:そう、家族といってもコミュニケーションのとりかたから探る必要がある。ずーっとそういうことをやっています。

🧑兄妻えり:わたし達も「職住近接」を目指して引っ越してきたけど、実際は家族そのものにぐっと近づいた感じがします。それに自分の妹も近所に越してきたので、気づけば大家族になった!

👩かずえ:それはいろいろすごい! ということは、拠点というよりまずは家族のことからですね。

🧔弟たかし:そう。岩沢家だけじゃなく、えりさんや僕の妻の家族のことも色々出てきます。でもこうやって頭数が増えるってことはいいことです。家族の抱えている悩みを分け合えるし。地域に開くのはその先なのかなって思ってきました。

👩かずえ:家族のなかの「兄弟」というユニットで活動してるからこそ、公私が一緒になっているのかも。ゆっくりゆっくりですね。

👱兄ひとし:はい、頑張って進めますー。

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(▲つくるにわを併設する予定の岩沢おばあちゃんち。ある意味、岩沢一家の”おへそ”的拠点です)

▼その後の「つくるにわ」について


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