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岩沢兄弟が取りくんできた、家族の距離と行動をちょっとずつ変えていく、「家族空間」のプロトタイピングをご紹介

こんにちは、岩沢兄弟の兄嫁・えりです。

ずっとこれはどこかで伝えたいと思っていたことがあり、今日は珍しく私がnoteを書いています。それは、岩沢兄弟がここ数年ちょこちょこと取りくんでいる「家族間コミュニケーション」のことです。

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今、兄弟ともに千葉に住まいをうつし、弟一家は両親・祖母の暮らす家の向かいに、兄一家はそこから徒歩15分くらいのエリアに住んでいます。

これだけ近くに家族が住むのは、兄弟が10代の頃以来(25年以上ぶり)のことなので、変わらないところもあれば、大きく変わっていることもあるわけです。

以前、弟・たかしくんがnoteにも書いていましたが、やはり1番変わったのは、両親・祖母ともに老いてきている。ということでしょうか。25年の月日は、老老介護や引きこもりといった、どこかのニュースで見るような家族問題が自分ごととして目の前にあったりするのです。

でも、ここでズシンとおもーくならずに、かといって過剰に「みんなで助け合おう!はつらつコミュニケーションとっていこうぜ!」みたいなテンションでもなく、「誰かに負荷が偏りすぎずに、それぞれが自然に佇める」くらいの温度感を目指して、家の中のちょっとした改装・工夫を始めるのが岩沢兄弟。

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↑ 年始はZoom親族会やってみたり

今回は、岩沢兄弟がここ1-2年かけて試してきた数々の「家族空間」のプロトタイピングとそこで考えたことをご紹介します。私視点だけだと語りきれないこともあるので、たかしくんが補足コメントを入れるという形式でお送りします。

1、祖母のベッドをダイニングキッチンに置いてみた

やっぱり1番大きいのはこれです。2年前の改装の中心点だったとも言えるのではないでしょうか。祖母宅は2階建てて、祖母の部屋は2階にありました。介護状態になるにつれ、1階に祖母の居場所をうつすことに決まったのですが、大胆にもダイニングエリアにベッドを移したんです。さらに、以前は倉庫的に使われていた場所を壊して、主に父がテレビを楽しめる空間に様かわり。

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左:改装前の祖母宅1階の見取り図。家族がくつろげるスペースはダイニングのみで、お父さんは別部屋の寝室でテレビをみてこもる生活。

右:改装後。納戸を壊してお父さんのリビングスペースに。ダイニングエリアにおばあちゃんの介護ベッドを設置。ダイニングエリアも棚を取り払って代わりにカウンターを設置。

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↑改装前

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↑改装後

これまで、お父さんはおばあちゃんの介護にはほぼ関与していなかったんです。でもこの間取りに変わってから、ちょっと視線を移せば目の前にいることもあり、自然に手伝うように。例えば、おばあちゃんがトイレに移動するときに声をかけたり、何か障害物があればどけたり。ご飯前の薬の準備なんかも。ささやかなことかもしれませんが、家族にとっては大きな変化でした。

<弟・たかしのコメント>
「納戸だった部屋は、元々は祖父の母を祖母が介護していた部屋であり、その後は僕らの勉強机が置かれていた部屋でもありました。なので、どうにもこの部屋の使い所が難しい。であれば、壁を壊してみるのが良いという流れで大きなリビングが誕生しました。近すぎず遠すぎず、長時間耐えられる家族の距離を検討しました。
介護に全振りした空間ではなくて、祖母の自立した生活を極力維持するために、つたい歩きでトイレには行けるようにし、調子のいいときには母とキッチンで料理が出来たりするように、ルートは検討しました」

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2、ダイニングテーブルを円卓にしてみた

テーブルが四角から丸になっただけで、どうして居心地が変わるんだろう。これまでのダイニングテーブルはよくあるおおきな長方形のテーブルだったんですが、岩沢兄弟はこれを円卓に変えてみたのです。理由は丸の方がたくさん座れるということだったんですが、実際たしかにたくさん座れることはもちろん、関係がフラットになる感じがあります。上座下座とかの概念が消えるからでしょうか。

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<弟・たかしのコメント>
「円卓へのこだわりは、兄・ひとしの発案。次の段階として、中華料理店によくある回転台も作って追加しようと計画中です」

3、円卓とベッドから見える位置にスライドショーモニターを設置してみた

たかしくんが、祖母ベッドと円卓から見える位置にモニターを設置して、そこにGoogleフォトを連動して自動で延々とスライドショーが流れるように。昔から現在に至るまでの家族の写真が表示される仕組みです。当初はへーとしか思っていなかったのですが、これがすごくて。とにかく自然に見ちゃうんです。おばあちゃんが毎回スライドショーをみて「あれは誰?」と聞くのです。同じアルバムだとこちらも正直飽きますが、スライドショーは自動でどんどん更新されるので、こちらも飽きずに楽しめる。

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<弟・たかしのコメント>
「ちょっとした会話のための家庭内デジタルサイネージ。Google Chromecastを接続したテレビを壁掛けしています。再生の仕組みもシンプルにGoogleフォトの共有アルバムをスライドショー再生。新しい写真も家族みんなでアルバムに追加できるようにしています」

4、トイレの扉を外してみた

トイレはプライベートスペース。ほとんどの場合、内側から鍵がかかります。でも、痴呆の症状が見られる祖母が鍵をかけてしまい、自分で開けられなくて閉じ込め状態になる……なんてアクシデントが起こる可能性がおおいにあるわけです。そこで「じゃあ扉なんてとっちゃえばいいんじゃない?」と言い出すのが岩沢兄弟。本当にトイレの扉が外されました。丸見えなんですが、トイレの位置的にダイニングエリアから死角になっていてみえないんです。特に大きな変化はありません。でも「ちゃんと鍵あいてる?」という小さい不安が消え去るだけで精神的に随分楽になります。難点は、ちゃんと扉をしめたいメンバーは使いづらい・・・ということでしょうか笑(わたしはいつも別のトイレを使っています)

<弟・たかしのコメント>
「実は、このトイレは僕が小さい頃に閉じ込められた(内側から鍵を掛けて開けられなくなった)思い出のトイレなんです。。改装の際に、車椅子や歩行器での転回や移乗のためのスペースどうしようかと考えていたときに、そうか扉取っちゃおうかと取ってしまいました」

介護も引きこもりも、喧嘩もなくならない。でも、ないことにしない。

こうして書くと、ものすごく良い家族!という話にきこえるかもしれませんが、大きくは変わっていないです。相変わらずお母さんの介護負荷は高いし、ちょっとしたことで喧嘩がはじまったりもします。

それでも、私はすごくいいなと思うのは、そういうなくならないものだけど、ないことにしないで、ひとつずつ行動を変えていくような工夫をしていっているところ。

重く受け止めすぎず、しかし流さず。適度に受け止めてちょっとだけ流れを変える。そういう日本武道っぽい感じの所作で、家族空間にも工夫を入れていくところが、どこか岩沢兄弟らしいのですよね。



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