岩井秀一郎

今日は。歴史研究者(自称)の岩井と申します。平成29『多田駿伝』(小学館)でデビューし…

岩井秀一郎

今日は。歴史研究者(自称)の岩井と申します。平成29『多田駿伝』(小学館)でデビューし、「第26回山本七平賞奨励賞」を頂きました。専門(?)は日本近現代史。読書、猫が好き、強迫性障害です。新刊『軍務局長 武藤章』(祥伝社)。他『今村均』(PHP研究所)など。

マガジン

  • 自民党結成ーーー「自主独立」を目指して

    戦後日本のかたちを作った与党・自民党の結成までを、人物中心に描いていきたいと思います。

  • 青年将校――安藤輝三の二・二六事件

    「第四回宮帯出版大賞」にて入選した拙稿をまとめました。まだ知処女作出版前で色々拙いところはありますが、暇つぶしにでもどうぞ。

最近の記事

私の就活回想記

※最後の部分を除いて無料で読めます。 楽しかった学生時代。しかし……。 私が4年制大学に通っていたのは、平成19年から平成23年までの期間でした(わけあって、現役から2年遅れ……)。日本大学の史学科に入学し、単位取得に苦労したものはありましたが、無事4年間で卒業できました。 この4年間は私にとってとても充実した期間でした。気の合う友人と旅行に出かけたり、大学図書館に篭ったり、キャンパスで一人ぼーっとしたり。何より、自分が好きな「歴史」を専門的に学べたこともとても大きかった

有料
100
    • 最高裁判所長官・石田和外ーーー朝ドラ『虎に翼』桂場等一郎のモデルとなった気骨の裁判官

      モデル・石田和外 皆さん、現在放送されているNHK朝の連続テレビ小説(朝ドラ)『虎に翼』はご覧になられているでしょうか。主人公の伊藤沙莉さん演じる猪爪寅子は、女性初の弁護士の一人、三淵嘉子がモデルになっています。他の朝ドラと同じく、『虎に翼』も実在の人物や事件がもとになったものが数多く出てきますが、今回の朝ドラでも印象的な人物や事件が多く出てきました。例えば、主人公の父が巻き込まれた「共亜事件」は実際にあった「帝人事件」を元にしており、これは冤罪どころか「事件そのものが存

      有料
      300
      • 私の強迫性障害

        ※本記事はあくまで私個人の経験談です。障害について医学的な見解を提示するものではなく、正確性などについても保証できません。 ※本記事は記憶に頼って書いているため、時期が不正確な可能性があります。 ※画像は現在飲んでいる薬剤 強迫性障害、という病気をご存知でしょうか。この病気については、以下のような説明があります。 〈きわめて強い不安感や不快感(強迫観念)をもち、それを打ち消すための行為(強迫行為)を繰り返す。 強迫症の症状を強迫症状といいます。強迫症状は、「強迫観念」と

        有料
        100
        • 私の執筆談 その二

          ※本記事は、「私の執筆談 その一」の続きです。未読の方はこちらからどうぞ。 テーマ設定 「小学館ノンフィクション大賞」に狙いを定めた私は、次にテーマの選択に移りました。類似性のないもの、それでいて「自分が興味を持って執筆できるもの」でなくてはなりません。数百枚の原稿を書く以上、単に「賞狙いの奇抜なテーマ」を選んでも、調べて書き切るだけの熱意が続きません。自分が興味を持てる、かつ誰も書いたことのないようなテーマは何か---。 このように考えた結果、たどり着いたのがかつて読ん

          有料
          100〜
          割引あり

        私の就活回想記

        マガジン

        • 自民党結成ーーー「自主独立」を目指して
          5本
        • 青年将校――安藤輝三の二・二六事件
          4本

        記事

          憲法無効論とは何か?

          護憲でもなく、改憲でもない「無効論」 毎年、4月末から5月はじめはゴールデンウィークとして多くの国民がレジャーを楽しむ時期となっています。そしてこのゴールデンウィークの中の1日に「憲法記念日」があるのは皆さんご存知でしょう。昭和22年の5月3日、日本国憲法が施行されたことに因む祝日です。 憲法については、現在でも「護憲」「改憲」を巡って論争が絶えず、一度ぐらいは耳にしたことがあるのではないでしょうか。 しかし、ここに護憲でも改憲でもない、「憲法無効論」という立場があります。

          有料
          300

          憲法無効論とは何か?

          私の執筆談 その一

          ※有料設定にしてありますが、最後まで無料で読めます。面白いと思った方は、ご購入よろしくお願いします。 まえがき 私はこれまで、合計8冊の単著を書いてきました。共著を含めれば、10冊になります。内容は全て近現代(主に昭和)に活躍した陸軍軍人が対象で、新書6冊、単行本2冊です。 厳密にデータをとったわけではありませんが、こういったテーマでこれだけの冊数を書いている同じ世代(30〜40代)はそんなに多くはないかと思います(残念ながらそれほど売れているわけではありませんが…)。今

          有料
          300

          私の執筆談 その一

          自民党結成–––第四章 政局の混乱

          ※画像は国立国会図書館「近代日本人の肖像」より 二つの短命政権①−−−片山内閣吉田茂率いる日本自由党は昭和二十二年四月の選挙で社会党に敗北し、与党の座から降りることになった。総辞職した吉田内閣の後をうけて組閣したのは片山哲、我が国初の社会党政権の誕生である。安定多数とはいえないが、社会党が政権を取るという点では、画期的なことではあった。片山自身、この時の選挙について、 <ここで初めて、名実ともに戦後にふさわしい、生まれ変わった日本の政治体制が誕生することになったのである>

          自民党結成–––第四章 政局の混乱

          自民党結成–––第三章 吉田茂と鳩山一郎 その2

          ※画像は国立国会図書館「近代日本人の肖像」より 三つの約束前回記述したように、組閣目前で公職追放の悲劇にあった鳩山は、党を譲るに当たって「三つの約束」を吉田茂と結んだ。 <金はないし、金作りもしないこと、閣僚の選定には君(※筆者注、鳩山のこと)は口出しはしないこと、それから嫌になったら何時でも投げ出すこと>(吉田茂『回想十年 1』) 吉田本人の言によれば、この時は早くやめるつもりで引き受け、結局「四囲の情勢に押されて」(同書)引き受けたということだが、やはり権力の座にい

          自民党結成–––第三章 吉田茂と鳩山一郎 その2

          自民党結成––−第二章 吉田茂と鳩山一郎 その1

          ※画像は国立国会図書館「近代日本人の肖像」より 「ワンマン宰相」のあせり昭和二十八年二月二十八日、その事件は起こった。この日は第十五会国会衆議院予算委員会が行われており、総理大臣の吉田茂と、社会党右派の西村榮一の論戦が行われていた。 ここで、吉田は西村に対して感情的になり、うっかり「バカヤロー」と発言してしまう。字面だけ見ると吉田が怒鳴りつけたように見える(またその方が「吉田らしい」とも言える)が、実際は小声でつぶやいたのがマイクに拾われた、ということらしい。西村はこれに

          自民党結成––−第二章 吉田茂と鳩山一郎 その1

          私の読書の話

          はじめに「読書論」などというほどきちんとした方法論ではありませんが、自分がやっている読書の方法、本についての考え方などを少し述べてみたいと思います。 「傍線」は引かない「読書論」の本を読むと、「傍線を引く」ことの効用を説くものが結構あります。つい最近も、ネット記事で「読書のコツ」として線を引くことを勧めたものを読みました。私も、かつてそういう本を読み、チャレンジしてみたことが一度あります。 しかし、二冊ほどの本に赤線を引いてみて、すぐにやめました。うまく表現する事はできな

          私の読書の話

          昭和史の余話として。

          はじめにここでは、私が執筆していく過程で見つけた話で、本に入れられなかったり本筋とあまり関係ない話でちょっと面白いな、と思ったものを紹介させていただきます。 ある東條側近の話大東亜戦争中、最も長い期間首相をつとめたのは陸軍大将の東條英機です。彼は開戦を決定した時の首相でもあり、戦後はいわゆる「A級戦犯」として処刑されてしまいます。 その東條には、いわゆる「側近」と呼ばれる特定の人物がいました。特に東條家にも信頼されたのが秘書官の赤松貞雄、「黙れ」事件で有名な武闘派の佐藤賢

          昭和史の余話として。

          近現代史作家と無呼吸

          はじめに※以下は、個人的体験に基づく見解であり、病気の正確性について保証するものではありません。睡眠時無呼吸症候群や強迫性障害の治療については、専門医に相談してください。特にオチはありません。 「睡眠時無呼吸症候群」(SAS)という病気をご存知でしょうか。睡眠中、10秒以上の無呼吸が発生し、それが一時間のうち5回以上発生する症状の事をこう呼びます。多くの場合、いびきを伴うらしいです。 いびきだけでも家族などの同居人にとっては迷惑ですが、それ以上に本人にとって悪影響を及ぼす

          近現代史作家と無呼吸

          自民党結成––−第一章 岸信介の復活

          「容疑者」巣鴨を出る昭和二十三年、クリスマスイブ。まだ日本の庶民に「クリスマス」というものが根付く前のことだ。一人の男が東京都巣鴨拘置所を後にし、「シャバ」へと戻ってきた。彼の名は、岸信介。戦前は有能な官僚として腕をふるい、大東亜(太平洋)戦争開戦に際しては、東條英機内閣の閣僚に名を連ねていた。 しかし後に東條とは対立し、その内閣総辞職のきっかけをつくった人物でもある。だが、彼もまた、東京国際軍事裁判(東京裁判)のいわゆる「A級戦犯容疑者」として逮捕され、スガモ・プリズンに

          自民党結成––−第一章 岸信介の復活

          自民党結成–––「自主独立」をめざして

          ※本記事は、一応連載するつもりです(週に一度ぐらい)。反応が良ければ、書籍になるかもしれません。以下、「だ、である調」で書き進めます。編集者の手を通したものではないので、多少の間違いはお許しください。 令和二(二〇二〇)年九月十六日、通算、連続ともに我が国憲政史上最長の在職日数を誇った安倍晋三内閣は総辞職した。後を継いだのは、第二次安倍政権下で長く官房長官をつとめた菅義偉である。菅は第九十九代総理大臣であると同時に、第二十六代自由民主党総裁でもある。自民党が安定的な多数を誇

          自民党結成–––「自主独立」をめざして

          宮城事件とある歴史学者–––「諫死」の論理

          前回、宮城事件と歴史学者・平泉澄との関係について簡単に述べてきました。今回は、事件首謀者を支えた平泉のイデオロギーと、その影響について述べていきたいと思います。表記などは前回記事と同じ基準です。前回記事は、こちらから。 忠誠の対象は「天皇」「平泉史学」にとって絶対的な忠誠の対象は「天皇」でした。平泉にとってそれは戦後も変わらず、少年向けに書かれた日本通史『物語日本史(中)』(単行本原題は『少年日本史』)にその思想がよく現れた一節があります。時は鎌倉時代、後鳥羽上皇が鎌倉幕府

          有料
          150

          宮城事件とある歴史学者–––「諫死」の論理

          吾輩の猫たちである。

          厳密に調べた訳ではありませんが、昔から物書きには猫好きが多いような気がします。というより、家で仕事をしている身にとって、動物を買うなら散歩の必要がない猫の方が相性がいいようにみえる、ということかもしれません(もちろん、犬好きがいないというわけではありません)。 私も一応、本を書いて収入を得ている身であり、家には猫が二匹います。飼っているというより、猫好きにとっては「一緒に暮らしている」といった方がピンとくるでしょう。そして大多数の猫好きの例にもれず、私も「猫自慢」が好きです

          吾輩の猫たちである。