読まれてコンバージョンにつながる導入事例の書き方

読まれてコンバージョンにつながる導入事例の書き方

「◯◯(商品名)を導入したキッカケを教えてください」

こんな一文から始まる導入事例を、書いてしまっているマーケター・ライター向けです。

読まれもしなければコンバージョンにもつながらない、でも書いてあることは興味深いのに・・・そんな導入事例を抱えているなら参考にしてみてください。

※ BtoBサービスにおける導入事例を前提にしています。

なぜ、「導入したキッカケ」はクソ事例なのか?

導入事例に対するニーズが、売り手と買い手(読み手)でズレているな・・・と感じることがよくあります。

よくある導入事例のストーリー構成はこんな感じでしょう。

1. 導入したきっかけ
2. 選んだ決め手 / 他社との違い
3. 使用したメリット
4. プラスアルファな使い方
5. 他社への紹介

この流れから読み取れる売り手が導入事例に望むニーズとは、「商品を比較検討している読み手の行動を後押ししてほしい」というものです。

言い換えれば、すでに何かしらの商品を導入することは社内決定しているわけでして、カスタマージャーニーマップでいうと後期の人に向けたコンテンツなわけです。

でも、
実は読み手が導入事例を読みたいときのニーズは違っていて、「同じ状況の他社ではどうやって困難を切り抜けているんだろう」という情報を探しています。

つまり、人の苦労話が読みたいんですね。商品なんてこれっぽっちも興味がないんです。同じ業界や同規模の会社で働いている、同じような仕事をこなす人たちの働き方に興味があるんです。

そんなニーズを持っている読み手に対して、「◯◯(商品名)を導入したキッカケを教えて下さい」という一文からはじまる導入事例は、読んでもらえないしコンバージョンにもつながらないですよね。

神話の法則を使った、導入事例の構成

読み手のニーズに沿った導入事例をどうやって書いたらいいのか?

僕は、神話の法則というストーリテリングに沿った導入事例を書いています。

参考までに、僕がマーケティングしているCarelyの導入事例でその違いを紹介しておきます。

「導入したきっかけは?」からはじまる導入事例

「神話の法則」に則った導入事例

この2つはどちらも十分に知名度の高い企業ですが、実はページ閲覧時間は2倍、CVへの寄与率は3倍ぐらいの違いがあります。神話の法則を使った導入事例は平均で2分半、長いもので4分を超える閲覧時間になります。

それで具体的にどんな構成になっているかというと、こんな感じ。

1. 日常
2. 事件
3. 試行錯誤
4. 解決
5. 未来

もう少し具体的に説明しておきますね。

1.日常パートは、客観的な共通点をすばやく把握するため

・リード文
・インタビューを受けた会社の紹介
・インタビューを受けた担当者の紹介

導入事例でもはじめの部分ですし、どのページを見ても定型的に書かれているパートですよね。

導入事例を読みたい人って、なるべく自分の環境と近しい人の物語を読みたいんです。だからこれから読む導入事例は、どんな業界のどうくらいの規模感の会社で、どういう体制で普段仕事をしている人が答えているのかを的確に教えてあげる部分です。

ここでは刺激的だったり、珍しかったり、意表をつくようなことを書くことはNGです。そういった意外性はタイトルで十分で、本文を読み始めた人にはまず安心してもらいましょう。

2.事件は、いきなり・悲劇的に・具体的に描写する

日常パートで緩和した空気をもたせたら、間をおかずすぐに事件を発生させます。人が文章を読みすすめるエネルギーを絶やさないためには緊張と緩和による落差を利用すること。

また、日常パートでは客観的な共通点を知らせたので事件パートでは主観的な共通点を読み手に持たせる役割があります。

もし主観的な表現が苦手なら、とにかく具体的に描写することを心がけておくといいでしょう。

「健保からは取得の難易度が高いと聞いていたのであきらめていました」
↓具体的な描写↓
「KDDI健康保険組合の方からも「審査は厳しい。計画するだけでなく実体が伴う必要がある」と言われました。担当者はわたし一人だけなので今年の取得はあきらめたんです。」

3.試行錯誤パートは、お役立ち情報を散りばめる

日常パートも事件パートも基本的には商品の話を1ミリもしません。なぜならいづれも商品と出会う前からあるエピソードだからです。

買い手(読み手)が導入事例を読みたがる理由は、「同じ状況の他社ではどうやって困難を切り抜けているんだろう」という情報を知りたいため。

だから試行錯誤パートでも、なるべく商品の話はだしません。

なるべくと言っているのは実際のところ商品の話はそろそろ書かざるを得ないからですね。

お役立ち情報と商品メリットを1:1の割合で書き連ねていきます。

認定取得のためには立派な計画だけでなくて、きちんと実行したことを示せる証跡が必要になります。←お役立ち情報
チャットで健康相談できることを示すのに、実はCarelyの営業資料をそのまま貼り付けて提出しました。←商品に関する情報

4.解決パートでは運用のコツを紹介する

いつもまでも商品に触れないわけにはいかないので、ようやく商品の機能的価値を訴求していきます。

ただここでも注意点があって、「導入したキッカケ」は書きません。というか書く必要がないんですね。

日常→事件→試行錯誤と続いてきた流れによって、読み手はインタビューを受けている会社へ感情移入ができている状態になっているはず。

「感情移入」という点が大切で、
導入したキッカケに論理的な考察が含まれることってマレなんですね。

他社と比較して連携機能が充実していた、サポート体制が充実していた、トライアルしたら使いやすい画面だった・・・というのは後付の理由。

本当の導入したキッカケというのは、
・なんとなく良さそうに見えた
・料金が安くて上司を説得しやすそうだった
・営業が親身に話を聞いてくれたから、話やすかったから

こんなもんです。だから、導入したキッカケを文字で読んで伝えることって難しくて、体験してもらう以外に方法はないんですね。

で、
代わりに解決パートで伝えることは導入した後の運用のコツです。

繰り返しになっちゃいますが、読み手が導入事例に求めているのって「同じ状況の他社ではどうやって困難を切り抜けているんだろう」という情報なんですよね。

で、商品を導入して運用するってことも担当者にとっては困難のひとつ。だから運用のコツをいくつか伝えておくことで、資料請求などのコンバージョンハードルを効果的に下げることができます。

5.未来パートは、ご自由に

最後は短くまとめればOKです。
あえてヒントがあるなら、飛ばし読み対策ですかね。

上から順番に読んでくれた人は何を書いても読んでくれますが、見出しだけを読み飛ばしてきた人に対して「はじめから読みススメたほうがおもしろういよ」と分かってもらえるのが最後のパートです。

「同じ状況の他社ではどうやって困難を切り抜けているんだろう」という情報を知ることができるという期待をもたせることですね。


カスタマージャーニーマップに沿った導入事例

読まれるための導入事例の構成についてはお話できたので、コンバージョンをとるための導入事例についても書いておきますね。

BtoBサービスのWEBサイトを運営している方は、GoogleAnalyticsを使って「導入事例を経由したユーザーのCVR」を調べてみてください。明らかにサイト平均CVRよりも高い、はずです。

じゃぁWEBサイトに訪問した人をもっと導入事例に誘導したら、CVRはうなぎのぼりになるね!

という改善施策はどこのマーケチームでも聞かれる。でも、実際のところ適当に導入事例へのPVを増やしたところでコンバージョンが大幅増するケースはほとんどありません。

なぜか?

カスタマージャーニーマップ上、不適切な人を導入事例に誘導してしまっているからなんですね。

さて、ここでいうカスタマージャーニーマップとは僕自身はこんな感じでフェーズを区切っています。

1. 受動的認知 -日頃の情報収集。セミナーに参加したり、本読んだり、SNSを眺めているだけ。

2. 積極的認知 -業務の中で困ったことがあったので情報収集。専門サイトを探してみたり、上司や同僚に聞いてみたり。

3.興味で検索 -新しい解決策を知ったり、特定のサービスを進められたから検索する。別に何かほしい情報が決まってるわけではない。

4.比較で検索 -ほしいものや判断基準が明確になってきたので、知っている商品やサービスがその条件を満たしているかを調べてる。

5.共有のための行動 -同僚に教えたり、会議で議題にあげるために資料請求や問い合わせてみる。正確な情報が必要になったから売り手に聞き始めた。

6.損失回避の行動 -どちらかと言えば、特定の商品を導入することが決まってる。でもまだ不安があるから、決定するギリギリまで調べたい。

このうち導入事例がコンバージョンにつながるフェーズは、2と3と6です。

で、
多くの企業が6に向けた導入事例は用意できています。だからCVRは非常に高くなるんですね。

一方で2と3のフェーズにいる人、まだ商品名やサービス名さえはっきり覚えてないような人のための導入事例を用意できていません。

導入事例に対するニーズが、売り手と買い手でズレている

この記事のはじめの方で書いたのですが、

売り手が導入事例に望むニーズとは、「商品を比較検討している読み手の行動を後押ししてほしい」というものです。

言い換えれば、すでに何かしらの商品を導入することは社内決定しているわけでして、カスタマージャーニーマップでいうと後期の人に向けたコンテンツなわけです。

でも、
実は読み手が導入事例を読みたいときのニーズは違っていて、「同じ状況の他社ではどうやって困難を切り抜けているんだろう」という情報を探しています。


そこで、今回はカスタマージャーニーマップの前半にいる人のニーズに沿った導入事例の書き方をお伝えしたわけです。

今日、僕からお伝えできるノウハウは以上です。ありがとうございました。

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