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庵野監督と「シン・仮面ライダー」 3.

池松壮亮さんの言い放った「どうせやり直しでしょ?」の一言は、番組制作側にとっては想定外の嬉しい必殺技となったに違いない。

でも、池松さんは最後にこうも話されている。

「これはぼくの勝手な解釈ですけど・・・」と前置きし、

「もしアニメーションに勝てるとしたら ”肉体感” と ”生っぽさ” しかないと思う」

(中略)

「だからこそ、みんな苦労した」

「正解のない旅に出たわけですから」

誰も推し量ることのできなかった監督の心中を汲み取っていたのは、他ならぬ池松さんだった。

また、いみじくも彼の言った「正解のない旅に出たわけですから」が答えだったと思う。
番組中垣間見ることができる監督の彼に対する信頼や接し方をみても、その存在が監督自身にとっての小さな光明だったのだろうとも感じた。
僭越だけれど、池松壮亮さんは人の機微を捉えることのできる賢い人で、とても良い俳優さんだという印象を受けた。

庵野監督が自他共に認めるオタク、ギークであることは周知の事実で、そういった人は才能と引き換えに往々にして言葉足らずなところがあったりする。
撮影中、アクション監督の田渕さんとほぼ毎日一緒だったという監督助手の大庭さんはパンフレットの中で「その後のモーションキャプチャー収録のときとかは、庵野さんと田渕さんが以心伝心のような関係で」とまで話されている。

アクションへの解釈の相違をもう少し上手く言語化し伝えることができていれば、同じ泥臭い戦いのラストであったとしてもいまとは違った評価になったのではないか、また監督ご自身もっと納得いくものをやり遂げることができたのではないかと思えてならない。
「仮面ライダー」という良い素材だけに惜しまれる。

最後に。
この話の初めにドキュメンタリーを最初に観たときの率直な感想をこう書いている。     

あぁ、これは酷い。なるほど、炎上も納得の不条理さ 

ただし、これは「このドキュメンタリーが恣意的に編集されたものでなければ」の話。

庵野監督の擁護ではないけれど、いわゆる切り抜きと同じで編集の仕方によっては印象操作が可能だし、とても面白いドキュメンタリーで番組制作側としては大成功だろうけれど、庵野監督自身のブランディングと捉えると明らかに裏目になったとしか思えないことなど、この編集にはいくばくかの狡猾さを感じなくもない。

ドキュメンタリーなので事実だろうけれど、ぼくはこういうことだと解釈している。

「嘘はついていないけれど、言っていないこと(観せていない部分)もある」



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