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ドレスコード 前編

「そしたら〇〇〇ホテルにしましょうって返事がきて、ホテルのHPを見てしまいましたよ。
あれ、何て言うんでしたっけ?
そう!ドレスコードってHPに書いてあって。
ドレスコードのあるお店なんて初めてやわって思いました(笑)
でもそれが普段使いなんですよね、きっと。すごいですよね・・・」

目の前で話されているのが 、あの万城目学さんであるということを一瞬忘れそうになる。

万城目学さん 2.

万城目さんのおめでたい話題を書いていて、以前書いたものを読み返しているときに思い出した話がある。

ぼくが19のころ、お店の定休日明けにお師匠さんから聞いた話。

休日、お師匠さんは奥様と某ホテルのバーへ行かれた。
店へ入ろうとすると、入り口であまり柄の良くないカップルと店員さんが揉めていたらしい。
ご想像通り、原因はドレスコードだった。

「お客様、ジーンズでは・・・」と店員さんが入店を制していると、その柄の良くない男性は大きな声でこう言われた。

「アホか、〇〇(ハイブランド)のジーパンやぞ、いくらしたおもてんねん」

ぼくのお師匠さんもたいてい大人げない人だったけれど、その師匠をもってしても「いや、そこちゃうし。あかんやろ」と思われたらしい。

いま思えば、お師匠さんが遭遇した男性は、自分の履いていたものだけでなく「お客様は神様」という言葉の意味も履き違えられていたに違いない。
また、この愚行の根底には、お金をたくさん持っている(稼いでいる)=エライ人といった浅はかな了見があったのだと思う。

時代はバブル真っ只中。
実際にこういった価値観の人たちは多かった。
オープンキッチンのおかげでそんな人たちを目の当たりにできたことも、ぼくにとっては良い経験になった。

つづく


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