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庵野監督と「シン・仮面ライダー」 2.

ぼくは少し時間を空け、改めてシン・仮面ライダーのドキュメンタリーを観た。
不思議なもので二度目となるとかなり印象が違い、個人的には映画本編よりも面白く感じたほどだった。

庵野監督は、頑なまでに仮面ライダーという虚構にリアリティを持たせようとされた。
その考え自体はアクション監督である田渕さんも同じだったけれど、それに対する解釈の相違が結果的に田渕さんをはじめとするスタッフさんとの衝突、不信感を生み、俳優さんやスタッフさんたちの苦悩や葛藤、困惑と神妙な面持ちがドキュメンタリー全編を通し強く印象に残る結果となった。
そんな彼らの苦笑まじりの辟易とした表情が、あえてそのことには触れないでおこう、と諦めているようにさえ映ったのは、ぼくだけでないと思う。

監督の言わんとされること、狙いもわからなくはないけれど、あれほどこだわり軋轢まで生んだラストの泥臭い戦いが、ぼくにはまったく伝わらなかった。
率直に書けば大切なラストがあの泥臭い戦いだったがために、ぼくの中での評価は一気に下がった。
虚構にリアリティを持たせることや改造人間のスペックを伝えるための描写としてこれ以上ないほどの説得力を感じたのは、皮肉にもラストでなく冒頭の5分(あるいは10分)だった。

またドキュメンタリーで映し出されていたアクションシーンは、映画本編ではほぼ使われてない。もったいないなと思ったし、予算の都合だと思うけれど陳腐なCGの戦闘シーンを観るくらいならそっちの方が観たかったと思った。
映画の興行成績はともかく、酷評を知ると同様のことを感じた人が多かったのではないかと思う。
ただし陳腐な演出というのは本当に予算の都合なのか、昔のオリジナルへのオマージュとして意図的にそういった演出をされているのか、判断が難しい。
庵野監督ならそういったこともされるだろうし。

そして結果的にこのドキュメンタリー最大の見せ場となり視聴者の多くが衝撃を受けたであろうシーンが、本郷猛を演じた池松壮亮さんがアクションシーンの映像チェック直後、冷めた表情で「どうせやり直しでしょ?」と言い放つ場面。

ぼくには、改造人間のライダーキックよりも破壊力があったようにみえた。

つづく


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