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ぼくは、周回遅れ

※ こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

ぼくはいわゆるトレンドというものに、めっぽう疎い。
昔からすべてにおいてそうだった。
食べもの屋さんを長年やっているのに、食のトレンドにさえ正直なところまったくというほど興味がない。だからこれまでその時々で自分がやってみたいと思う店をつくり、やってみたいと思うものを作ってきた。
店でも商品でも基本的には自分がおもしろいと思うか、思わないか、それだけ。
大丸京都店さんへの出店が決まった際、主力商品を何にしようと考えたときも、いま何が流行っているか、といったことは一切考えなかった。

主力商品をドーナツとベーグルにした理由は、「もっともうちの店がやりそうにないものだから」「うちのお客様がきっと驚いてくれると思ったから」。
理由としては、これくらいしかない。
だけど作ると決めたら美味しくなるように一生懸命考えるし、作る。

コッペパンを主力商品にしたときも同じ。
ドーナツもベーグルもやったし、あとは何があるだろ・・・
うちが手掛けて、まさか!?と思われるようなものは・・・
あっ!コッペパンがある!
それでコッペパン。
もちろん美味しくなるように一生懸命考えるし、作る。

ぼくがドーナツ、ベーグルをはじめたときは、ブームやトレンドという意味で外れていたし、完全に周回遅れだった。それも何周も。
ここ1年くらいに受けた取材を振り返るとコッペパンについては、「ちょっとしたブームに乗っちゃったかなぁ・・・ちぇっ」なんて思っていたりする。

ぼくは、これまでの人生で人に相談をしたといった記憶がほとんどない。
そういったことが必要な場合は大抵、本に答えを求めてきた。いまならネットもそう。
ぼくにとって本は、写真集でもない限り収集や本棚にきれいに飾るためのものでなく使うためのものなので付箋は貼りまくるし、赤ペンで線も引きまくる。
小説などを読むのは娯楽目的だけれど、それ以外は目的でなく手段なので本に限らずネットでも構わない(いまならネットの中にも良質な情報や文章も沢山ある)。
人に相談はしないけれど読んだ本から影響を受けることを思うと、著者に間接的に相談しているような気もしてくる。
最近では仕事に直接関係する料理やパン、お菓子の本といったものをめっきり読まなくなり関係のないジャンルばかり読んでいるけれど、ぼくの中ではすべてが仕事に繋がっている。

つい最近は、amazonのCEO ジェフ・ベゾスさんについて書かれたものを夢中になって読み終えた。
この本はECについて知りたかったのと、以前から不思議で仕方がなかったamazonの経営手法、カラクリを知りたいと思ったからだった。
個人的にはめちゃくちゃおもしろい本だったから単純なぼくは読み終えると、スタッフに「いまからamazonに勝てる方法ないかな・・・いや、勝てないにしてもamazonから学ぶことはある」と真顔で話をしていた。

ぼくの数少ない友人の中に秀島さん(NATIONAL DEPART)と宮野さん(knot café  )という方がおられる。お二人ともぼくより若いけれどとても多才でいろんな事業を手掛けられていて、食べもの屋さんも経営されているけれど元々はwebデザインやグラフィックデザインを本業とされていた方々なので、ぼくよりも遥かにネット関連のことや先端のテクノロジーについても詳しい。
そんな人たちとお会いしたときでも、ぼくはスタッフに話すようにamazonの話などを夢中でするものだから柔和な笑顔で聞いてもらえる。

少し前に宮野さんと話していたときのこと。
テクノロジーからamazonについてなど、いろんな話をしたけれどぼくが一番夢中で話していたのはこれだった。

「いまこそ、ブログだと思うんですよ」
(ありとあらゆるSNSが出揃った時代にブログって)

「これからはECも考えているんです」
(我ながらいま更)

薄々自分でも気付いていたけれど、はっきりとわかった。

「あっ・・・やはりぼくは、世の中から周回遅れなんです。それも20年くらいの周回遅れ。
考えてみれば、amazonもGoogleも楽天も創業した時期がうちとそんなに変わらないんですよ、20年くらい。だから20年ほど前、楽天の三木谷さんがいろんなお店に断られながらもECの未来を語り、営業をされていたころのことにぼくはやっと気づいたわけです。だから20年の周回遅れ」

宮野さん、爆笑。
先日、お会いした秀島さんにこの話をしたら、やはり秀島さんも優しく爆笑。

ぼくの周回遅れは、かなりのものらしい。


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