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毒親の弊害③〜子供の前で性交するな〜

処女喪失をしてから、私はアルコールを摂取したときだけ男と寝ることができた。
初体験の恋人にはのちに浮気をされ、セフレならいいよと言われた。今ならバカにすんじゃねえと一発グーパンチをお見舞いしてやるところだが、当時の私は男の要望に従った。どうせ、本当の愛なんて存在しない。いつかは裏切られる。
両親にさえ愛されなかったのに、誰が私を愛するのだろう。誰も私を本気で愛するわけがないと思っていた。そもそも、愛するということが何なのか、正直今でもよく分からない。ドラマや映画で言われるような「愛してる」という言葉を聞くと、白々しい気持ちになる。

愛してくれなくてよかった。寂しさを紛らわせてくれるだけでよかった。結婚も出産もまったく望んでいなかったし、恋人だろうがセフレだろうが関係なかった。

社会人になり、一人暮らしをしてから、特定の恋人を作るのをやめた。
当時流行っていたGREEというSNSで知り合った男性や、会社の同僚複数人と肉体関係を結んだ。1度限りの人もいたが、数か月続いた人もいた。妻子ある人と不倫もした。1日に複数人と関係することもあった。愛なんてどこにもなかった。

男たちの性欲に従うことなど、酔っていればどうでもよかった。就職した会社が一年で倒産する現実も、仲の良かった女友達が結婚することで抱いた嫉妬も、母から逃げて一番下の弟を実家に残してきた罪悪感も、アルコールで麻痺している間は消えてくれた。

「性行為は気持ち悪いもの」とずっと思ってきたので、酔わないとできないくらい、セックスが不快だった。一度素面でしたとき、頭上で俯瞰している自分がいて、演技している私が見えた。相手の生々しい裸体や、私の身体を触る手つき、表情がクリアになっていき、異常なまでに冷静になり、最後までできなかった。

行為自体が不快でも、好きでもない男に求められることに、存在価値を見出すようになっていった。私ですら、私を要らないと思っているのに。私は要らない子だったのに。たとえ性的な目的だけであっても、必要とされることに一瞬の救いがあった。だからやめられなかった。母から距離を置いても、長年、否定され続けたことに呪われていた。酔いが覚めるといつも、死にたくなった。

男と肌を重ねるごとに、アルコールが増えていく。冷蔵庫にはワインしか入っていないなんてこともザラにあった。仕事が休みの日は、朝からワインを飲んでいた。飲めば飲むほど耐性ができて、簡単には酔わなくなる。アルコールの分解能力は遺伝子によって決まるという。酒豪の父から受け継いだものだろう。母が私にだけよく言っていた「お前は親父にそっくり」を思い出す。

両親は、23歳の私がそんなことになっていたとは知るはずもない。

自分を認めてほしい、存在価値があると思いたい。
それを叶えてくれるのはどうでもいい男たちだけ。
本当は、お父さんとお母さんに大切にされたかった。

性行為を止めたとき、きちんと説明してほしかった。
お父さんとお母さんは愛し合っているんだよと。
怖い思いをさせてごめんね、なにも怖くないよ。
あなたもきっと大人になったら、大好きな人と、なにも飾らないありのままの姿で触れ合うんだよ、そして赤ちゃんが産まれてくるんだよ。
お父さんとお母さんがそうしたことで、あなたが産まれたんだよ。
産まれてきてくれてありがとう、あなたがいるだけで幸せだよ。

そんな風に言えないのなら、子供が寝ているからと油断して、声や音を出してセックスなんかするんじゃねえ。
お前らの欲にまみれた浅はかな行為で、子供の人生が狂うかもしれないことを考えろ。
お前らが見てるよりずっと、子供はお前らを見ているんだよ。

プライマリーシーンを目撃した私が伝えたいのはこれだけ。
お子さんがいる方は、どうか、子供がいるところで性行為をすることをやめてください。確実に子供が不在な時を狙うか、ホテルに行ってください。


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