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6.減り続ける水力発電の発電量

 FIT制度が導入された2012~2015年、大規模水力発電を除く再生可能エネルギーの設備設置容量の年平均伸び率は25~27%にまで急上昇したが、2016年以降は伸び率が若干鈍化する傾向を示した。
 
それでは再生可能エネルギーの主力である水力発電に注目し、2011年の東日本大震災以降のFIT買取価格発電電力量の推移をみてみよう。


6.1 水力発電のFIT買取価格の推移について

 水力発電開発の歴史は古く、大規模水力発電の開発はほぼ終了し、新規立地は少ないとして、2012年7月のFITでは、出力:3万kW未満の中小水力発電に限定して普及が進められた。

 一例として、中小水力発電(0.1~3万kW)について、当初に設定された買取価格は24円/kW、買取期間は20年であった。
 2017年4月、改正FIT法の施行で、0.1~3万kWの価格区分が、0.5~3万kW(20円、20年)、0.1~0.5万kW(27円、20年)に分離された。

 2023年に入り、0.5~3万kW(16円、20年)は買取価格が減額されたが、0.5万kW未満の中小水力発電については、10年間にわたり当初に設定された買取価格について、減額などの変更はなかった。

 ただ、2014年4月、FITを既設の中小水力発電設備の更新にも適用すべく、既設の中小水力発電設備の電気設備と水圧鉄管を更新する「既設導水路活用型区分」(14~25円、20年)が別に設定された。
 これは2012年の買取価格が、従来の売電価格の3倍近くに設定されたことで、自家発電用の水力発電設備を保有する企業が相次いで売電用に改修を始めたための対応である。

 資源エネルギー庁が示す2020年の発電単価(中水力10.9円/kWh、小水力25.3円/kWh)と比較すると、中水力には”うまみ”のある買取価格設定である。また、稼働年数が40年と長いのも中小水力の利点である。

6.2 水力発電の発電電力量の推移

 直近10年間に注目して、経済産業省が公表している電源別の発電電力量から、水力発電による発電電力量のみを切り出してみてみよう。

 FIT制度が導入された2012~2015年、水力発電の発電電力量の年平均伸び率は3.8~5.1%と順調に上昇したが、2015年あたりでピークを示して、2017年以降はー1.7と明らかな減少傾向を示している。

 このまま-1.7%で発電電力量が減少を続けた場合、2030年には670億kWhに減少すると予測される。これは、第6次エネルギー基本計画で目標とした総発電電力量(9300~9400億kWh)の11%とする水力発電の電力量(1023~1034憶kWh)の65.5~64.8%にとどまることになる。

図7 2010年以降の水力発電電力量の推移 出典:経済産業省

 何故、水力発電は第6次エネルギー基本計画で設定した目標値に達しないのであろうか?そもそも、何故、2015年をピークに水力発電の発電電力量は減少を続けているのか?大規模水力発電は無視してよいのであろうか?多くの疑問が生じた場合には、さらなる情報収集が必要である。 

 次に、2011年の東日本大震災以降の国内の太陽光発電の導入状況について、より詳しくエネルギー事情をみてみよう。(つづく)


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