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クライアントワークのたのしさ

こんにちは。
「バーチャルをハレにする」ファッションブランド、Yarnwinderです。
ブランドオーナーの柑酉衣豆(かんどり いと)と申します。

VRなどのバーチャル世界で楽しめるファッションを日々制作しております。
自分のブランドでは「バーチャルをハレにする」をコンセプトに
リアルでは躊躇してしまう一歩先のファッションやフォーマルスタイルのお洋服を制作しています。
ブランドコンセプトについては次のnoteをご覧ください。

最近のご依頼について

私自身で企画デザインし制作しているブランドとは別にココナラにて受注制作を受けています。

今回「空ノアオイ」さんから依頼を受けて衣装を中心に髪型、顔など一式のセットアップを制作しました。
お披露目からずいぶん時間が経ってしまったのですが…配信もしてもらいました!

制作したモデルはこちらの画像をご覧ください。

全身、衣装だけでなく義手義足なども併せて制作
フェイシャルや髪型周りも制作いたしました。首のラインは私の好みが…

今回制作の中でも印象深かったのは指示の受け方でした。
最初に5ページにわたる設定資料(全部文章)が届きます。
最終的には64ページにわたる台本まで届いたのです!!

圧巻!!!!!!!!

クライアントワークの「たのしさ」はここにあり!と思うできごとでした。

クライアントワークについて

クライアントワークのたのしさを語る前に私がクライアントワークをどう考えているのか説明していきたいと思います。
ひとくちにクライアントワークと言ってもどこまで自分が関わるのか、そのレベルはさまざまです。

作品もふくめて関わり方は大きくわけて4段階ある、と思っています。


  1. 作品
    私が企画を立てアイデアを一から出し制作したもの

  2. プロデュース
    企画案がすでにありそれを実現するためのアイデア出しから参加制作したもの

  3. ディレクション
    企画案とその実践アイデアがあり、ビジュアル化するためのアイデア出しから参加制作したもの

  4. 受託制作
    明確なビジュアル化アイデアがありそれを決まった形に落とし込む制作


「1. 作品」に関してはクライアントワークではなく、どちらかというと「Yarnwinder」で出している衣装が該当します。
自分で1から企画から組み立てプランニングして制作を進めていくものです。
マーケティング用語でいえば「プロダクトアウト」と大別しておきましょう。
当然、自分で立てた企画がすべて「プロダクトアウト」とは限らないんですが…

対してクライアントワークというのは2〜4の関わり方があると思います。
自分がどの時点からアイデアを出せるか、という度合いが異なってくるのですが
どの時点から関わったとしても「クライアントのアイデアが起点」であることが絶対です。
企画やコンセプト、達成目標…やわらかく言い直すと「やりたいこと」「ほしいもの」はこちら側にはなく、クライアントが持っているものです。

そう、作品と対比させるのであればこちらは「マーケットイン」なんですね。
クライアントの中には「作品」として制作を扱ってくれた方もいて、それはそれで自分の美学が認められたと感じてとても嬉しかった経験もあります。
ですがやっぱり「クライアントのアイデアが起点」なんです。

やりたいことと言っても具体的・抽象的はさまざまで良いと思っています。
その表現方法もさまざまで良い。
美学や美意識レベルの話でもいいし、思い出話や未来予想図でもいい。
もちろん具体的な三面図やラフがあってもいい。
ただひとつ、そのやりたいことの内容は私には作れないものなんです。

それが「クライアントのアイデアが起点」という意味です。

当然、誰かの美学や美意識を起点とするとき自分自身の美学を曲げなければならないこともあります。
自分の作品に対する美学やコンセプトを貫き通す覚悟とは異なった覚悟が必要になってきます。
「自分のアイデアを押し通せない」という苦しさもあると思います。
それでも自分の作品ではない「誰かのもの」を作るときにしか触れられないものがあります。

自分のものではない制作の起点となる優れたアイデアです。

クライアントワークのたのしさとは

クライアントの持つ優れたアイデアは必ず今までの自分の中になかったピースを使うことになります。
それは自分の美学によって排除してきたものかもしれないし、自分には見出せなかった新たな美しさかもしれない。
自分の成長にもなり、殻を破るきっかけにもなってくれます。

以前紹介した「かなや」さんのご依頼でもフリルの制作に試行錯誤して悩んだ…という話を書いています。
すでに具体的で明確なビジュアルがあった「4. 受託制作」にあたるものでしたが、それでも自分だけのアイデアの外を刺激されたと思います。
どうしても自分で制作するとき「VRoidStudioで再現しやすいデザイン」をしてしまうのですが、そうではないアイデアだったからです。

今までもアイデアの緻密さや表現はいろいろな方がいらっしゃっいました。
かなやさんのようにしっかりとした三面図を出していただける方
ご自分でノートに書いてくださった方
パーツごとにいろいろなイメージ写真を載せたビジュアルボードをくれた方
やり取りを何度もして思いを伝えてもらいビジュアル化していった方

どんな形でも誰かのアイデアというのは私の頭の中にない新しいものです。
理解するのに苦しんだり、自分のセンスでないものを選んだ時に困惑したり
といったことも確かにあります。
ただその自分の頭の中にない新しいアイデアには自分の作品を作るのではない誰かのものを作る楽しさが詰まっているんだと思います。

つまり自分のアイデアじゃない、誰かのアイデアに触れることが
クライアントワークの一番の「たのしさ」なのだ
と思うんです。

今回の依頼について

誰かのアイデアに触れながら制作することが「たのしさ」だと思っている私に
64ページにわたる台本を送るんですもの、そりゃぁ楽しすぎるでしょう。

誰にでも緻密に膨大にアイデアを出せ、とは言わないんです。
それは結構な労力と訓練のうえに成り立つものだから。
それゆえに誰かが持つアイデアというのは「とてつもなく貴重」だと思うんです。
それを私にわざわざ渡して、服を作ってください…ということ自体に、クライアントからのリスペクトを感じます。
同時に私も受け取ったものを通して、クライアントへリスペクトを感じるのです。

その表現方法が空ノさんの場合「設定資料」や「台本」といった膨大なクリエイティブだったんです。
空ノアオイさんは声言楽団としてボイスドラマをYoutubeに公開しています。
一番の表現方法で一番のアイデアをしかも大量にもらったということなんです。
それはとても貴重なもので、大変なリスペクトに値するものでした。

そう、そもそも64ページもの台本が何のために送られてきたか…
フェイシャルの大事なディテールとかなんじゃないかと思うじゃないですか…

まさかのあまり見えない、見せない「ショーツ」のためです。

センシティブになる?控えめに小さい表示にしておきます

そう、こういう見えないところに力をこめてアイデアを出せる…というところが何より楽しい制作をしていけることになるんですね。

実はこのあとも他にもうひとつ楽団員の方の制作を承りました…
お披露目されましたらそちらもご紹介いたします。

とにかく誰かのアイデアに触れながら制作できるということは、自分の作品を作るたのしさとはまた違ったたのしさがある。
そこには異なる覚悟もあるし、誰かへのリスペクトを持つことでもある。

自分一人では生み出されなかったものが生まれることがクライアントワークなのだと思います。
自分の作品ではない世界がうまれていく、たのしさです。

ご紹介ー空ノアオイさん

例の台本をもとに描いたイラスト

空ノアオイ
Youtube「ワスレジ声言楽団」:https://www.youtube.com/@wasureji
Twitter「空ノアオイ」:@AOI_KaraNO

声劇団座長を務める、壊れたAIデータ。Vtuberとして活動中。
ボイスドラマ「ある天才達の終末に伴う一考察」をメインコンテンツとして、Youtubeにて公開中。ドラマ以外にも楽曲などを通じても世界観を表現していて、マルチコンテンツとして非常に魅力的。

最近公開された素敵な「歌ってみた」をどうぞ。


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