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35.シチリア人の彼氏ができた!

仕事と料理教室とシチリア食堂の合間をぬって1年に1ヵ月ほどタオルミーナに滞在するのがなんとなくのルーティンになっていました。
混雑した夏を避け観光客のいないタオルミーナの冬は、海水浴が目的ではない人におすすめの観光シーズンなのです。


仕事にならなかったので自費で行く

2年続けて冬のタオルミーナ滞在となりました。
閑散期なので航空券や宿泊費を抑えることができます。
お盆やお正月といった長期休暇に囚われずに旅ができるのも派遣社員の良いところです。
この年から始めたシチリア旅のプランニングは旅費が出るほどの成果が出ず、結局自費での渡伊となりました。

南イタリア、とくにシチリアは伝統的に冬も旅行シーズン好適地。
太陽の少ない北ヨーロッパの人たちが冬でも暖かいシチリアの陽光を求めてやってくるのです。
とくにイギリス紳士の間では浅黒い肌のエキゾチックなシチリア少年たちは人気の的だったとか。
100年ほど前のそうした時代を感じさせる写真展がタオルミーナで開催されていたのを観たことがあります。

私は常宿となったイゾラベッラに近いアパートに滞在し、毎日のようにトモコさんにどこかに連れて行ってもらい、ますますシチリアの魅力にハマっていっていました。

美人姉妹との再会

夏にお寿司を作らせてもらった魚屋さんファミリーとも再会。
この時は夕食にお呼ばれしてかなり濃い時間を過ごしました。

お寿司と一緒に並べられていた、懐かしいお店のお惣菜の数々。
パン粉をつけて焼いた魚、白身魚をたたいて作ったハンバーグ、それをレモンの葉っぱではさんで焼いたものなど。

私の好きなカタクチイワシのマリネもありました。
お寿司を準備する傍ら、丁寧につくられている様子を見ていた思い出の味です。
入荷したイワシの状態を見ながら酢につける時間を調整するなど伝統レシピが守られています。
これをパンにはさんで食べても美味しいのです。

2年のときをはさんで美しさにますます磨きのかかった姉妹は19歳と17歳になっていました。

妹のほうはその夏の「ミス・イオニア海岸コンテスト」でグランプリに輝いたそうです。
メッシーナからカターニアにかけて広がるイオニア海に面した地域選りすぐりの美人が一堂に会して行われるミス・コンで、約15日間にわたる熾烈の戦いを勝ち抜き、最後の1人となったのです。
その時の様子が書かれた地元紙「LA SICILIA(ラ・シチリア)」の一面トップが家の壁に飾られていました。

見た目は日本でならおそらく25歳、いやアラサーに見えなくもありません。
でも中身は相変わらずで、むしろ日本の17歳より子どもっぽい。
私にまとわりついて「東京いいよね~、連れて行って~」とせがんだり、お土産のインスタント味噌汁の中にワカメを見つけて「アルゲだ~。このお味噌汁パック、学校に持って行くんだ~」とか、どら焼きを見て「あ~、ドラエモンの食べてるのだ~」など無邪気に話していたと思ったら、23時ごろ、いきなりパジャマ姿で登場。
「もう寝る~」と言ってベッドルームへ消えていきました。

お姉さんのほうは夕食を終えて23時から外出。
毎晩、彼氏のところへ行って2時まで帰ってこないのだそうです。
そして奥さんが「昔はパパに寝る前のお話して~ってせがんでたのに、今は彼がお話してあげてるのよ~。うっふっふっ」と、ご主人をからかうように言っていたことも懐かしく思い出されます。

シチリア人の彼氏ができた!

日本人オーナーのB&Bを出て女料理人のアパートに住んでいたときのことです。
近所のエディーコラ(新聞スタンド)で働くシチリア男子と知り合いになりました。

当時、私はプーケットで購入したゾウの刺繍がしてあるバッグを使っていたのですけど、それを見てサッカーチーム「カターニア」のファンだった彼が話しかけてきたのです。
カターニアのシンボルがゾウだったので。
そしてそれをきっかけに、お店の客と店員の枠を超えて個人的な話をするようになりました。

私は、彼が初めて目の当たりにする日本人……ナゾの日本人ケミサキコを除いては。
とくに日本文化やアニメに興味があるわけでもなく、単純に外国人に興味を持ったのだと思います。

2年前の秋に私がタオルミーナを発つとき、メールアドレスの交換をしました。
以降、たまにスカイプでチャットをしたりメールを交換したりという程度の付き合いだったのですが、前年の冬の滞在時に一緒に出掛けるようになり、お互いの家を行き来し、彼の唯一の家族だった母親とも仲良くなり、何となく公認、というふうになったのです。

そういう存在ができると外国語が上達すると言うのは本当ですね。
日本とイタリアとに分かれているので、ひんぱんにやりとりするチャットでイタリア語の瞬発力が養われたように思います。

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