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43.ローマでの住居

どんな家に住むかというのは私にとって、とても大事なことです。
住空間にこだわりはなく、それより洋服や趣味のほうが大事という人もいるでしょう。
でも私には快適空間が必要で、そこにはひとりだけの空間という意味も含まれるのですが、ローマの家には大家さんも同居していました。


知人の紹介で決めたアパート

波乱はあったもののローマでの住居に無事に落ち着き、ついに私のイタリア生活の始まりです。

知人の紹介で決めたアパートは約200㎡はあろうかという広大な物件で、大家さんはそこに独りで住んでいました。
30畳ほどのリビングに加え10畳ほどのダイニング、そして小さなキッチンがありこれらが共有スペース。
ほかにベッドルームが3つとバスルームが2つあります。

定期的に数ヵ月という単位で空いているベッドルームを貸していて、この時の私の占有スペースはベッドルームのうち1つとバスルームでした。
入居者が2人になることもあり、そのときはバスルームは共有となります。
家賃は1ヵ月400ユーロ。
12月から3月は暖房費として月80ユーロが加算されますが、それは建物全体を温めるセントラルヒーティングシステムの使用料です。

ローマ北部に位置していて最寄り駅の地下鉄B線リビア駅から徒歩20分。
ただ、バス停が近くにありテルミニ駅やトレヴィの泉のような中心部まで20~30分で行くことができたので、周辺住民はもっぱら路線バスを利用しているようでした。

建物はローマ街道のひとつサラリア通りに面していて、道路を挟んで対面には広大な緑の美しいヴィッラ・アーダという公園があります。
中心部とは違い観光客が来るようなエリアでもないし比較的のんびりとしたふつうの暮らしができるような立地でした。

大家さんはヒマ人だった

なかなかの好条件でスタートしたローマ暮らしは大家さんとの2人暮らしです。
大家さんは60代の男性で数年前にすでに年金暮らしに入っていました。
まだまだ働けそうな感じなのに、自分は銀行勤めだったので他の人より早く年金生活に入れたのだと自慢げに語っていたのが印象に残っています。

日本ではなんとなく「引退」という雰囲気の付きまとう年金暮らしですが、イタリアではもっと前向きでここから人生の本番が始まる、とでもいうようなイメージ。
誰もがあこがれの年金生活に入るのを心待ちにしているように思います。
今までできなかったことをやりつくすべく、人生を最大限に楽しむためのシステム、それが年金なのです。

この大家さんもまだまだ元気なので日本から来た同居人に興味津々、何かと世話を焼いてくれました。
自分が遠出をするときには一緒に連れて行ってくれたり、友だちとアペリティーボするときも誘ってくれたり。
そして、ニースに別荘を持っていたので数週間をそこで過ごしたり、銀行員時代の知り合いが多いとかでボローニャによく行っていました。

豚の丸焼きパーティー。ちょっと松やにみたいな独特な香りのするギンバイカの枝で風味付け
大家さんが作ってくれたある日のランチ。鳥胸肉をレモン汁でマリネしたのとナスのグリルをオイル、ニンニク、パセリ、オリーブでマリネしたもの
ルーコラ、水牛モッツァレラ、トマトのサラダにメロンと生ハム。9月初旬の食事はまだ夏っぽい

部屋貸しでお小遣いも十分あるし、アクティブな年金暮らしはとても楽しそうです。
イタリアの年金生活者というものを実感しました。

イタリア人はヤキモチ妬き?

大家さんは結婚していたのですが奥さんとは別居中。
そして、ボローニャに遠距離恋愛中の彼女がいました。
元同僚なのだそうです。
なぜローマで一緒に暮らさないのかと聞いたら、彼女はまだ仕事があるからと言っていました。
なので大家さんがボローニャへ行ったり、彼女が休みのときには一緒にニースの別荘で過ごしたり彼女がローマに来たりすることもあり私も知るところとなったのです。

私が滞在していた2ヵ月の間に数回会ったことがありますが、とても感じの良い人でした。
日本文化にも大きな関心と理解があり、一緒に過ごして心地よかったです。

しかし大家さん曰く、彼女はとてもヤキモチ妬きで、大家さんの普通の女友だちにまで疑いの目を向けていたらしく、ローマでの自分の暮らしぶりを彼女にひた隠しにしていたのです。
そのため、私と一緒に出掛けたとしても、そのことを彼女に言ってはいけないと口止めされていました。
ものすごい秘密主義で、私はSNSに自分が行った先の写真をアップすることすら制限され、それは一緒に出掛けたことが彼女にバレるのを恐れてのことです。

これも今なら分かるのですが、イタリア人の独占欲というのは相当なもの。
単なる友だちに対してでさえ「自分のもの」というレッテルを貼って他者に誇示する人もいるほどです。
ハッキリ言ってメンドクサイ。

ここでの暮らしも2ヵ月が過ぎ日本に一時帰国するころにはそうしたさまざまな制限に、私もちょっと辟易してきていました。

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