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『處女』品川陽子詩抄 (No.8)

處女

にほやかに
たかく
いつ知らず
うれたる木の實よ

いましばしを
葉がくれに
風もゆすらず

               『日本新歌曲集』 世界音楽全集第39巻
                昭和8年 箕作秋吉編 春秋社


永遠の若さをもつフォーレに感じる
高貴性をこの詩を通して書かうとし
た。處女必ずしも常に高貴ではないが
そこに何ものかがあると思ふ、勿論、こ
の曲は所謂處女らしいセンチメンタル
と甘さで歌はるべきではない。
(作曲者、清瀬保二のことば)

日本新歌曲集』 世界音楽全集第39巻
昭和8年1月20日発行 箕作秋吉編 春秋社 より
所蔵:東京文化会館 音楽資料室



(『品川陽子詩抄』平成25(2013)年10月 
            柏崎ふるさと人物館発行 より)


#品川陽子 #品川約百 #詩 #箕作秋吉 #フォーレ
#瀧澤邦行 #佐藤春夫 #婦人之友


※「處女」と「若き畫家の歌へる」の二篇の詩は「主婦之友」昭和二年四月号での入選作品です。


選 者 よ り
              佐 藤  春 夫


 最後に選び出したる品川君の二篇は、この作者の作たるに背かず。哀婉にして清楚なり。一輪の紅芙蓉に似たり。その奥底に少女をとめごころのつつましやかなる情熱をひそめたるは、わけて喜ぶべし、文字に奇を衒ひたるあとなくして詩品自ら高し。また巧ざるうちに一貫せる首尾ありて、詩の傳統を墨守しながら一脈の清新を保ちたる珍重するに足る。先日この作者の別稿を見てその詩才の衰へたるに非ざるかを疑ひしに、今またこの佳作に接して欣快を禁じ得ず。僕はこの作者の詩風を敬愛する者なり。

           「婦人之友」21(4)昭和二年四月一日發行 より




                                  国立国会図書館 所蔵


※サムネイルの画像 出典:国立国会図書館「NDLイメージバンク」
瀧澤邦行による桜の図案
(https://rnavi.ndl.go.jp/imagebank/data/post-49.html)




※楽譜は現在でも購入できるようです。


 清瀬保二 作品No.97 『處女』
■1930.12
■編成 Ⅰ: Voice & pf
             Ⅱ: Voice  fl  ob  cl  bs
                     harp  vln(Ⅰ、Ⅱ)  vla  vlc
■Mf  遠山所蔵(自筆譜Ⅰ)
    国立所蔵(自筆譜Ⅱ)
■出版譜<清瀬保二歌曲集Ⅰ>
 内田るり子編 全音楽譜 1972
初演 ■Ⅰ:1932.4.20
    <清瀬保二第一回作品発表会>
    日本青年館 sop:関種子、pf:清瀬保二
   ■Ⅱ:1934.4.16 <独唱と管弦楽>
    NHK放送 ten:太田黒 養二
    cond:山本直忠 orch:日本放送管弦楽団

     「塔」No.21 1980年 国立音楽大学附属図書館 発行 より


<清瀬保二第一回作品発表会>1932.4.20
 日本青年館 sop:関種子、pf:清瀬保二

演奏された曲(順番不明)
「なめいし」
「草の葉」
「岩と鳥」
「笛」
「海の手紙」
「養老飴屋」
「犬」
「公園の熊の子」
「螺旋人形」
「處女」
石川啄木歌曲
「メクラとチンバ」
「どくだみ」

  清瀬保二氏作品發表会記念撮影(後列右から四人目が品川陽子さん)

「音楽新潮」9(6)
昭和7年(1932)6月1日発行 国立国会図書館所蔵 より




品川 陽子(明治38年(1905)12月6日―平成4年 (1992) 12月12日)
本名は品川 約百よぶ
新潟県柏崎町納屋町に生まれる
詩人
佐藤春夫に師事
兄に、本郷の古書店「ペリカン書房」の品川力、弟は、版画家の品川工

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