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□童貞の日よ

□童貞の日よ


麥の穂のはたはたとしてなつかしく
光りしゆふべよ童貞の日よ


ゆふべしろく古里ふるさとの空に見ゆる星わが童
貞を偲ぶ淋しさ


たそがれの秋空寒し星のひかりわが
童貞のかよはきあはれ


心すませばあまりに淋し蟋蟀いとどなき秋
空ひそか夕ざりにけり


麥の穂のこの秋小みちひらりひらり
銀紙のごとく光る鍬さき

   □思ひで□

ゆるやけくたけし秋夜のしづ風に星
降りやがて虫鳴きにけり


夏きぬと黍の畑に汗びたりの子す
やかに冬待ちにけり


くみすればわれの心のもどかしさは
なれつあれば淋し人みな
  (若き夢想家哀鳥、草三郎へ)


(函館毎日新聞 大正六年十月十日 
第一万一千五百六十二號 九日夕刊 一面より)



※草川義英は與志夫の函館商業学校時代のペンネーム、同学校の生徒
 を中心に結成された夜光詩社という短歌クラブに所属していた。
[解説]夜光詩社について

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       函館市中央図書館、国立国会図書館、所蔵


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