花輪を於くる言葉 菊 池 與 志 夫 あらゆる世の惰眠をむさぼる群 小飜譯家だち――諸君は、半歳の 全生活をあげてエドガァ・アラン・ ポオ・の心魂をかれ自…
□ 蘇 生 へ る 魂 草 川 義 英 いまはただきみばかりなるわが心もえてあはねばかくも悲しむ ものはみな秋の冷氣にしづもりてかくも淋しきおと…
□草川 義英 きみがふす夏の敷布のみだれより わが遠ざくを今はかなしむ かくわれの遠ざくことを恕らずに なほ病みはてしきみのみこゝろ 大いなる雲をつかみて死にゆけ…
暮笛集 (二) 草川 義英 うつとりと鹿に見入りしこころにて三 笠の山を仰ぎてゐたれ 春日なるこれやいこひのなつかし さ奈良戀ふ子らに小鹿きて鳴く 春日野に順…
暮笛集(一) 草川 義英 午さがり雲ほの見ゆる空のべを鳶の さかしく飛べるなりけりさ □ 春日なる朱塗の宮のさびしさは奈良 をいとしむ心となりはつ …
夜光詩社短歌(下) □草川 義英 (一点) 大鳥居石の鳥居を仰ぐさに去年も 見たるあかつきの月 ひとりゐの冬のあらし夜向ふ山を 雪がとぶかや空の明るさ (函館毎日…
京の河霧 (B) 草 川 義 英 草の穂のさやさやゆれて光る秋小道 に瀧の音ききにけり 遠つきしわがなつかしき初旅に暁空 寒き小村なりけり 夜の空にひそまり見江…
京の河霧 (A) 草 川 義 英 あゝ京の雨夜の街の重き色一夜明く れば霧たちにけり 京の空あけぼのゝ雲鴨川の瀬々の流 れにつれ走る見ゆ 流れ星一つ流れて京の夜…
晩秋雲脚記(下) 夜光詩社 草川 義英 悲しげにまたなつかしく波にうきうれい もなげに吾が船のいづ 海鳥のうけるも小さししづやけき秋の夕 を悲しみてなく 火にも江…
晩秋雲脚記(上) 夜光詩社 草川義英 雨霽れの土の匂もなつかしや旅にあひぬ る時雨なりけり 旅にきて蛇使ひの眼を見てありぬかはき し心して見てありぬ ぐつたりとい…
(函館毎日新聞 大正六年十一月十二日 十一日夕刊 第一万一千五百九十三號 一面より) ※「坊ちゃんの歌集」 ※[解説]夜光詩社について ※草川義英は與志夫の函…
夢 夜光詩社 草川義英 ゆくりなく眠りさびしむ心にて昔お もふにた江がたき日よ 雨の音秋の夜の雨ふける思こゝろに 泌みし人も忘れず 君にしてしみじ…
□童貞の日よ 麥の穂のはたはたとしてなつかしく 光りし夕よ童貞の日よ 夕しろく古里の空に見ゆる星わが童 貞を偲ぶ淋しさ たそがれの秋空寒し星のひかりわが 童貞のか…
秋の思出から 夜光詩社 草川 義英 哀鳥さんへ―― た江久しかれんだめくらず暮しゆくわがみ 淋しむ秋木立かな そとしづむほこりの小さきかれんだをめく る心も秋の…
夜 光 貝 (上) 沖の島は世のおち人のいねる土夜はさめざ めと冷遇に泣く 草川 義英 ほたるぐさぽつちりしぼみ夜となればこの 川邊にをみなごも見ゆ…
ほ た る 草 (ある初夏の思ひ出の斷片) 草川義英 谷あひのうす靄も消江月かげに螢とび交ふ 竹やぶの見ゆ。 竹やぶの靑竹の中ほのぼ…
一錢亭文庫 / 菊池 與志夫
2023年6月6日 05:24
花輪を於くる言葉 菊 池 與 志 夫 あらゆる世の惰眠をむさぼる群小飜譯家だち――諸君は、半歳の全生活をあげてエドガァ・アラン・ポオ・の心魂をかれ自らの心魂とした、わが兄弟品川力君の情熱の炬火をあびまさに慚愧すべきである。若し世の偏狭なる人、彼のこの宇宙に燦たる譯詩の完成に際しなほ滿腔の感謝と至上なる讚仰の花輪とをおくるに吝かなるものあらば、僕は
2024年5月23日 13:09
□ 蘇 生 へ る 魂 草 川 義 英いまはただきみばかりなるわが心もえてあはねばかくも悲しむものはみな秋の冷氣にしづもりてかくも淋しきおとづれになくはろばろとゆくへもわかぬ澄空を見つゝ密林の細道にいるゆるされぬ罪をおかせしひと時のわがくちびるを君よせむるな雨ぐものひくくもおりて密林のおぐらきあなたはや雨のあし密林のしぐれの昔よなつかしとふたりのこゝろい
2024年5月22日 10:03
□草川 義英きみがふす夏の敷布のみだれよりわが遠ざくを今はかなしむかくわれの遠ざくことを恕らずになほ病みはてしきみのみこゝろ大いなる雲をつかみて死にゆけるきみがゆくゑのはるかなるかも(函館毎日新聞 大正七年一月十九日 十八日夕刊 一面より)※丘二郎こと竹岡次郎さんへの追悼歌。※草川義英は與志夫の函館商業学校時代のペンネーム、同学校の生徒 を中心に結成された夜光詩社と
2024年5月21日 11:25
暮笛集 (二) 草川 義英うつとりと鹿に見入りしこころにて三笠の山を仰ぎてゐたれ春日なるこれやいこひのなつかしさ奈良戀ふ子らに小鹿きて鳴く春日野に順禮の子といこふれば小鹿きて鳴く秋の夕暮はるかなる奈良をかこめる山の峰霧にぬれつゝ遠ざかる見ゆ小鹿なく春日の森の旅いこひ日のふるままに心つかれぬほの暗き春日野あたり夕さりて鹿鳴く森に啄木鳥のゐる秋を寒み雨のは
2024年5月20日 10:24
暮笛集(一) 草川 義英午さがり雲ほの見ゆる空のべを鳶のさかしく飛べるなりけりさ □春日なる朱塗の宮のさびしさは奈良をいとしむ心となりはつ □午さがり旅の身ながらゆくりなく御苑の空に舞ふ鳶を見つ □奈良はよし都を遠くきて見たる三笠の山の綠草よな □ゆくりなく春日の夕のいこひより奈良のむかしを泣けるなりけり □草笛にゆかしき奈良の偲
2024年5月19日 11:14
夜光詩社短歌(下)□草川 義英 (一点)大鳥居石の鳥居を仰ぐさに去年も見たるあかつきの月ひとりゐの冬のあらし夜向ふ山を雪がとぶかや空の明るさ(函館毎日新聞 大正七年一月八日 七日夕刊 一面より)※草川義英は與志夫の函館商業学校時代のペンネーム、同学校の生徒 を中心に結成された夜光詩社という短歌クラブに所属していた。※[解説]夜光詩社について #函館毎日新聞 #大正時代
2024年5月18日 12:34
京の河霧 (B) 草 川 義 英草の穂のさやさやゆれて光る秋小道に瀧の音ききにけり遠つきしわがなつかしき初旅に暁空寒き小村なりけり夜の空にひそまり見江しやまつづきこの暁の雞鳴く空に 故郷の幻想あめりかの國旗を被へる轉宅の馬車のしづかに軋るはつ冬露西亞人三人ならびてたからかに街ゆく瞳に見江し秋かな海燕とぶも床しや春宵のまばゆき雪のふりいでにけり京極
2024年5月17日 08:50
京の河霧 (A) 草 川 義 英あゝ京の雨夜の街の重き色一夜明くれば霧たちにけり京の空あけぼのゝ雲鴨川の瀬々の流れにつれ走る見ゆ流れ星一つ流れて京の夜の祇園の空は雪降る白さなみなみと杯酒に映つる弓月を霧たつ夜に飲む男はもうすぐらき秋の東雲霧の街京の目覺めをなぜで嘆かむ 旅 愁あゝ旅は明石のはてにつきぬれば破れし心を抱きかへあむ夜の雨に松の綠も
2024年5月16日 07:50
晩秋雲脚記(下) 夜光詩社 草川 義英悲しげにまたなつかしく波にうきうれいもなげに吾が船のいづ海鳥のうけるも小さししづやけき秋の夕を悲しみてなく火にも江てかぎらう□づく陽のごとく雲の走せゆく/\へしれずに 奈良の暮れ路に土の匂もとろける如き夕の森に朱に黑に浮彫きれし春日を拜せし時、三々伍々に群れて絕江ず行人を恍惚たらしめし神鹿の床しき眼を見入りたりし時、秋月の
2024年5月15日 13:31
晩秋雲脚記(上) 夜光詩社 草川義英雨霽れの土の匂もなつかしや旅にあひぬる時雨なりけり旅にきて蛇使ひの眼を見てありぬかはきし心して見てありぬぐつたりとい寢んねがひもさもしけれ京の祇園の灯のいろよ浪路はるかの岩の黑さに月も出よこのまゝ秋の夜は更けゆくを夢に泣きすずろに夢をなげかへし秋のつめたき旅のめざめよ秋の雨淋しくながし土にしみ吾の心を濡す都をしらじらと夜の
2024年5月14日 11:30
(函館毎日新聞 大正六年十一月十二日 十一日夕刊 第一万一千五百九十三號 一面より)※「坊ちゃんの歌集」※[解説]夜光詩社について※草川義英は與志夫の函館商業学校時代のペンネーム、同学校の生徒 を中心に結成された夜光詩社という短歌クラブに所属していた。 #函館毎日新聞 #短歌 #夜光詩社 #保坂哀鳥 #函館 #大正時代 函館市中央図書館、国立国会図書館、所蔵
2024年5月13日 09:30
夢 夜光詩社 草川義英ゆくりなく眠りさびしむ心にて昔おもふにた江がたき日よ雨の音秋の夜の雨ふける思こゝろに泌みし人も忘れず君にしてしみじみ偲ぶ雨のおとわがみ思ふにた江がたき夜は □病みだれ□病室にやむ人びとの心なれ野なかしきりて蟋蟀なくなりほそぼそとはぎの毛悲し病むともを偲びつ泣ける病院の雨よ □秋□大いなるちからも強きひそやかな雲
2024年5月12日 07:10
□童貞の日よ麥の穂のはたはたとしてなつかしく光りし夕よ童貞の日よ夕しろく古里の空に見ゆる星わが童貞を偲ぶ淋しさたそがれの秋空寒し星のひかりわが童貞のかよはきあはれ心すませばあまりに淋し蟋蟀なき秋空ひそか夕ざりにけり麥の穂のこの秋小みちひらりひらり銀紙のごとく光る鍬さき □思ひで□ゆるやけくたけし秋夜のしづ風に星降りやがて虫鳴きにけり夏きぬと黍の畑に汗
2024年5月11日 16:03
秋の思出から 夜光詩社 草川 義英哀鳥さんへ――た江久しかれんだめくらず暮しゆくわがみ淋しむ秋木立かなそとしづむほこりの小さきかれんだをめくる心も秋の悲しみはつ秋日かの友おもひたかぶりて虫ちろちろの野にいでしかな三日三夜の月悲しめる友なればしみじみ思へこの良き月にぬすみ寢も職にしあればといふ友の頬白じろと夜に浮きけりぬすみ寢の夜の窓ぬちに悲しかんっし秋たち
2024年5月10日 08:34
夜 光 貝 (上)沖の島は世のおち人のいねる土夜はさめざめと冷遇に泣く 草川 義英ほたるぐさぽつちりしぼみ夜となればこの川邊にをみなごも見ゆ 仝 人(函館毎日新聞 大正六年九月十三日 第一万一千五百三十六號 三面より)(函館毎日新聞 大正六年九月二十一日 第一万一千五百四十四號 一面より)※草川義英は與志夫の函館商業学校時代のペンネーム、同学校の
2024年5月9日 10:12
ほ た る 草(ある初夏の思ひ出の斷片) 草川義英谷あひのうす靄も消江月かげに螢とび交ふ竹やぶの見ゆ。竹やぶの靑竹の中ほのぼのと明かりに見江し口紅もうれし。星あかり螢と光り暁ちかくわが幻に生きなんとする。新らしき麻蚊帳の夜をなつかしみねむりしわれに螢とび來くる。たまさかに眞珠光らしほたるとぶこの田舎道ゆく女かな。はつ夏のむしあ