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史上最速で移動するサウナと露天風呂を楽しみながら東京九州フェリーで洋上1泊ワーケーション

ワーケーションという言葉の定義はともかく、快適な環境で仕事ができることはとても大切なことです。ワーケーションはすべての職種や業種で実現できることではありませんが、普通にショートバケーションとしても、また純粋に移動の手段としてものんびりとした船旅はおすすめです。そこで2021年7月1日に就航したの東京九州フェリー(新門司ー横須賀)の「はまゆう」でワーケーションしたのでちょっとしたTipsも含めて書いてみます。

私はほぼ同じ航路のオーシャン東九フェリー(徳島経由)には2度乗船したことがありますが、本船の方が圧倒的に快適です。特に強烈におすすめする理由は、下記の動画にすべて集約されています、ぜひご覧ください。

この動画は船上の露天風呂から撮影したものです。心地よい潮風を受けながら大海原を進む船の上で風呂に入れます。豪華なクルーズ船にあるジャグジーでは水着を着用する必要がありますが、本船にあるのはあくまでも露天風呂。素っ裸の開放感が半端ないです。真偽はわかりませんが史上最速で移動する露天風呂らしいです。

東京九州フェリーは横須賀港と新門司港の間を21時間かけて航行します。船舶や航路の詳細や予約方法は公式サイトを確認していただきたいですが、運賃は12,000円で、この料金だけで大部屋ではなくカプセルホテルのような空間が用意され、さらに一室あたり7,000円(定員1名のみ)、32,000円(最大で4名まで入室可能)、48,000円(最大で2名まで入室可能)の追加料金でホテルのような個室も選択できます。

所要時間は上り下りどちらも24時前に出港して21時前に到着します。ということは、上り下りともに到着地側に自宅がないと別途到着先で宿を確保する必要があるということです。首都圏にお住まいであれば、21時に横須賀から帰宅できるかです。横須賀港の最寄りである京浜急行の横須賀中央駅から品川まで1時間かからないので、その範囲はかなり広いのではないでしょうか。なお日曜発の便は運休です。

もちろんフェリーなので車を持ち込めますが、車両運搬料金が3、4万円かかります。この金額にはは一人分の運賃(12,000円)を含んでいます。家族や複数人での旅行ではなく、ワーケーションという視点では車を持ち込むのはあまり現実的ではないでしょう。

船内はとにかくきれいで快適です。運賃のみ12,000円で確保できる「ツーリストA」のベッドスペースではパソコン操作は事実上できませんが、船内にはいたるところに電源付きのデスクスペースが用意されているので、仕事はそちらですれば問題ありません。問題はインターネット接続状況です。

ツーリストAの船室スペースはカプセルホテルのようなな感じでロールスクリーンを下げられる
ツーリストAはこのように2室が向き合う配置
ステートの船室はちょっと広めのホテルのツインルームくらいで部屋には海が見られる窓がある
ステートのトイレと洗面所 右側がシャワーブース
シャワーブース
船首にあるフォワードサロンというスペースは誰でもゆったりくつろげるスペース
中央部は吹き抜けになっていてエレベーターもある

航路を大まかに書くと下の図のようになります。台風時などはわかりませんが通常は瀬戸内海ではなく太平洋岸を航行します。そのため陸地に近いときには携帯電話のネットワークを掴み、離れると接続できません。体感的には高知沖から伊豆半島沖まではつながらない時間が半分弱はあるように思いました。私の回線はNTTドコモで、おそらく他キャリアはこれよりカバーエリアは狭いのではないでしょうか。

船内には常時フリーWiFiが提供されていますが、上流がケータイネットワーク(ドコモだと思われる)であるために、直接つなぐのと接続状況は変わりません。なお通話に関してはネット接続より広範囲で接続するので、航路上8割以上で通話ができます。うまく繋げるコツは陸側のデッキに出ることです。

航路図

ワーケーション的には、移動中常にインターネットに接続しなければならないとか、オンラインミーティングがあるという場合はタイミングによって接続できない可能性があります。ここをが問題なければ、12,000円で得られる非日常体験と作業効率は非常に優れています。

利用方法の一例として、首都圏在住者の場合は成田からLCCで福岡まで飛びます。もちろん羽田から飛んでもいいですが、いまならLCCで5,000円ほどで、セールのタイミングに合えばさらに安く福岡まで行くことができます。

福岡空港から天神などの福岡市内中心部には地下鉄で15分もあれば到着できるので、夕食にイカやもつ鍋、その他の食事を楽しむことができます。天神あたりから新門司港までは電車と無料のシャトルバスで2時間くらいです。無料シャトルバスは小倉駅を22時20分発なので、20時くらいまで福岡の街で食事ができます。シャトルバスは23時に新門司港フェリーターミナルに到着し、乗船開始は23時10分。新門司の出港は23時55分です。

夜中の出航なのでまずは寝ることになります。と言っても船内レストランは25時まで営業しているので、メニューがやや限定的ではありますが遅い時間の食事も可能です。レストランではアルコール類も提供され、アルコール自販機もあります。プチコンビニのような売店もあります。

食事の提供時間は深夜食が24時から25時、朝食が8時から9時、昼食が11時から13時、夕食が18時から20時の営業になっています。オーダーはタブレットで席から行い、決済はセルフレジでカードも使えます。金額も味も満足というかとても美味しいです。

もちろん高級飲食店ではないですが、食費はアルコール抜きで1,500円ほどもあれば十分といった価格帯です。また昼の時間帯にはオープンスペースで船上バーベキューもできるのです。炭火ではなく電熱コンロを使いますが、船の上でビールとともに海風を浴びながらバーベキューをするのはやはり非常に心地よい食事になります。

オーダー端末
船上バーべキューもできる



なんと言っても露天風呂とドライサウナが最高です。屋内の大浴場はゆらゆらと揺れながら航行する船の動きに連動して波打ちます。これもまた唯一無二の体験です。露天風呂とサウナを備えているフェリーは他に次の航路と船舶があるようです。関東を発着するのはこの東京九州フェリーのみです。

はまなす、あかしあ 舞鶴ー小樽(露天・ミストサウナ)
らべんだあ、あざれあ 新潟ー小樽(露天・ドライサウナ)
すすらん、すいせん 敦賀ー苫小牧(露天・ドライサウナ)
らいらっく、ゆうかり 敦賀ー苫小牧(露天・ミストサウナ)

船上の露天風呂は同時に4,5人は入浴できそうな広さ
屋内の浴室
ドライサウナは6名くらい収容可能。水風呂こそ無いがここでのととのいは他を圧倒する(撮影したときはコロナの影響でサウナは稼働していなかったがその後の乗船時に満喫できた)
サウナ室から露天風呂と海を望む

筆者の船上ワーケーションの満足度は200%と言ってもよいです。より便利になるだろうなと思うのは、飛行機のように衛星インターネット、またはStarlinkに接続して常時インターネット環境を確保できるようにしてくれれば完璧です。その場合はもちろん有料で構わわなくて、ユーザーが選択できるようにすればいいと思います。

ちなみに船室のテレビでは地上波(大抵はフルセグではなくワンセグ受信になる)と衛星放送が視聴できます。ツーリストAの部屋にはテレビはありません。トレーニングマシンやシアタールーム、カラオケルームもあります。私は体験していませんが、シアタールームでプラネタリウム上映が3回ほど行われます。

船旅での懸念事項があるとすれば船酔いでしょう。これは個人差があるのでなんとも言えませんけど、船舶としては揺れは極めて少ない方です。参考までに本船の全長は223メートル、15,500トンという巨大船です。念のために定番の酔い止め薬の「アスロン ニスキャップ」を持参すれば完璧だと思います。乗船時に揺れの予想を聞いて、必要であれば乗船の1時間位前に飲んでおくとよいでしょう。揺れが続くなら翌日昼頃にもう一錠。なおこの薬は酔ってからでは結構手遅れです。

移動の21時間中に実際に起きてワーケーション稼働できるのは7時から20時までの最大13時間ほど。流石に延々と連続して仕事をするわけではないので、数時間おきに3回も露天風呂に入ってしまいました。


最後にお役立ち情報を2つ。東京九州フェリーには「はまゆう」と「それいゆ」の2隻(ドックダイヤなどで変更になることもある)が就航しており、2席は基本的に同じ船で、レイアウトも船室の配置も同じです。そのため上りと下りでは日当たりや見える景色が180度変わることになります。そこで重要なのが露天風呂からの景色なのです。下の図をごらんください。

これは新門司発、横須賀行きの場合で左舷側が北側になります。ということは女性用の浴室と露天風呂は常に北側、すなわち陸側になります。日焼けを嫌う向きには好都合です。一方の男性用は常に南側、太平洋側ということになるので日光浴には最高の環境となるわけです。風呂のレイアウトは航路や船によって変えていないそうなので常にこうなります。新門司行きでは全てが逆になるわけです。

もうひとつは船室の選択についての情報です。先程は北側か南側か、つまり陸側か海側かという話を書きました。北側のメリットは陸上の携帯電波を掴みやすいということ。特に完全個室形で船室にいる時間が長い場合には結構差が出ます。少しでも長時間安定した通信環境を得たい場合は、北側になる部屋を選択するといいです。

船室の中でベストの選択は、最も安いツーリストA(12,000円)の部屋の中でも左舷側の「A44-73」という船室番号です。ここは他のタイプAとは異なり、唯一小さな丸窓があって景色が見られのです。また多目的室の配置の関係で、ここだけ奥側に回り込んでいて事実上の個室となって、プライベート感が極めて高いのです。

このタイプの部屋はこの左舷側のA44-73のみであり右舷側にはこういうレイアウトの船室は存在しません。船室の指定はインターネットでできます。逆に言えば、これ以外の各クラスの部屋はクラス間での差はあるが同一クラス内での優劣はありません。

ツーリストAでおすすめの部屋はA44-73

午前10時20分頃には紀伊半島沖で「はまゆう」と「それいゆ」がすれ違います。この際に横須賀行きから先に汽笛を鳴らし、それに門司行きが答えます。正確なタイミングは船内アナウンスで教えてくれます。デッキでこれを体験すると、腹に響くほどの汽笛の音が大迫力です。

新門司港のフェリーターミナルは、従来からあるお台場行きのオーシャン東九フェリーや泉大津行きの阪急ファリーの乗り場とは異なり、もっと奥側に新たに作られたので注意が必要です。また横須賀港に到着しても、連絡シャトルバス、路線バスなどの足がまったくありません。タクシーはいるだろうと思ったが、自分で呼ばない限り1台も客待ちはいなませんでした。

横須賀中央駅まで歩いて10分ちょっとなので歩けなくはないです。荷物が多かったり雨が降っているととちょっと大変だろうと思います。新門司と同じように無料シャトルバスを、せめて路線バスを走らせてもらいたいものです。

このように到着地に出張などの目的がなくとも、移動だけが目的の船旅ワーケーションは絶対ありだと思います。土日も料金は変わらないので、首都圏の方は土曜の午後に出発してから日曜の夜まで過ごすことをおすすめします。総額3万円以内で得られる体験としてはかなり上質なものだになると思います。

船の揺れ方は天候にかなり左右されるので、直前とか当日に決めるのが一番正解かもしれません。たぶん空いていると思います。あまりの心地よさに私はこれまでにこの航路を2度も利用してしまっった程です。そしてきっとまた利用することになると思います。

本記事は株式会社ビズライト・テクノロジーが運営していたオウンドメディア「GASKET」で2021年8月28日に私が執筆したものを新たに編集したものです。


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