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Civic Designとはなにか? Day1まとめ

Civic Design Conference 2021

Civic Designについての国際カンファレンスである"Civic Design Conference"が2021/12/8-10で開催された。今回が第1回目。Slackのグループを見ると330人程度のメンバーがいる。参加者はLA,NY、ワシントンDC、サンフランシスコなどの米国都市をはじめ、カナダの各都市、あるいはCode for America、18Fなどいろいろな公共部門で活動しているデザインパーソンが参加している。

参加者層からも分かる通り北米に軸足をおいた公共とデザインについてのカンファレンスだ。オーディエンスは、UX、CX、サービスデザインなどのロールで働いている人を想定している。全3日で開催され、それぞれテーマが設定されている。

Day1 :  Civic Design Today
Day2:Civic Design Tools and Mindsets
Day3:Civic Futures

以前は国際カンファレンスといえば、現地でいろいろな人と話したりとウキウキワクワクしたけれども、完全にオンラインカンファレンスということで粛々と画面と自分と向き合う時間だった。この記事を通して、日本での公共とデザインの盛り上がりにも微力ながら貢献できればと思います。

Day1はCivic Design Todayというテーマ。2021年現在のCivic Designを定義し、今後の活動を基礎を確立するという趣旨で構成されている。プログラムの詳細はこちら。では、1日目のセッションの中からキーワードをひろっていきたい。


Civic Designの成り立ち

Day1はデンマークデザインセンターをリードするChristian Basonのプレゼンテーションから始まり、彼はCivic Designを取り巻く環境から話を始めた。

世界中で官僚制への疑問が投げかけられるなか、「行政における官僚制への挑戦という文脈で生まれた面もある」とし、「官僚制と市民参加のバランスをとることが重要」であると語った。カンファレンスを通じて、市民へのパワーシフトの重要性は語られるものの、現在の体制や行政組織とのバランスをとるべきという趣旨も常に語られている。


"官僚制"と"市民への共感"

Innovating With People: Unleashing the Potential of Civic Design By Christian Bason

また、官僚制と人間中心的な行政のあり方の違いを示したうえで、Civic Designerと協業経験のある行政内部のマネージメント層に対する追跡調査の結果から、実際には融合可能なものであると結論づけていた。あるマネージメントが語っていた言葉の一つとして引用された"It’s a fake contradiction"という言葉が象徴的だった。


では、Civic Designとはなにか?

Innovating With People: Unleashing the Potential of Civic Design By Christian Bason

①公共の問題に対して問い(Why?)を投げかけ、
②市民と人間を起点にアプローチし、
③プロトタイプによる実験による学びを重視し、
④未来を手触り感のある具体的なものに変えていく
行為だとした。


Civic Designの未来、4つの方向性

BasonはCivic Designの未来を以下の4つに整理する。
ちなみにこの4つは3日間を通してのキーワードともいえるものだった。

Innovating With People: Unleashing the Potential of Civic Design By Christian Bason

①より広範なシステムレベルの問題解決
サイロを超えたより複雑な問題の解決
②倫理とインクルージョン
デジタルやAIにおける、倫理や包摂
③人から生命へ
人から生命へと視点を移す、例えば都市をサステナブルな存在へと変革していくなど
④次世代組織のデザイン
ラボを超えて自己組織化した組織のデザイン、あるいは行政のいたるところでクリエイティビティが発揮されるような状況をデザイン

Civic Design in the US

もうひとつのキーとなるセッションはブルームバーグでイノベーションリードとして活躍し、現在はイリノイ工科大学のInstiteute of Designでも教鞭を執るStephanie Wadeによる講演だ。(ちなみにStephanieと学部長のDenisが合同で行っていたCivic Designのクラスをとっていたので、そこで得られた内容についてはまた別の機会に書きたい。)

世界のトレンドとして、Public Sectorでのデザイン活用はここ10~15年くらいで進んでいる。USにおいては、DARPAやOPM(Office of Personnel Management)が複雑な問題を解くために行政職員を対象にトレーニングを初めたのが最初。2014年には、18FというUS政府向けのテクノロジーとデザインコンサルタント組織が創設されている(現在は120名ほどデザイナーやエンジニア、プロダクトマネージャーなどが連保職員として所属している)。CityレベルだとNYCは2017年頃にService Design Studioを設立している。

Shifting Toward Community-Led Innovation in Local Government

行政組織といっても連邦、州、都市とレイヤーがあるが、とくに都市レベルの成長が著しい。2012年には5ポジションだったCIO(Chief Innovation Officer)が現在は90まで広がっている。2019年の調査によると、OECDに所属する70都市のうち53%でデザイナーを雇用していると回答している。

Building and Sustaining Design in Government By Stephanie Wade

ここからはStephanieのセッション内で語られたことではなくて、DenisやStephanieから大学内で教えてもらった話になるが、行政組織のどのレイヤーを対象にするかというのは非常に重要で、アメリカにおいては市のレベルが動きやすいようだ。Day2のセッションでも出てくるシンガポールはNY市よりも人口規模は小さく(約500万 V.S. 約850万)、市といっても一国家並み。市長の権限も十分に強い。そして連邦や州レベルでは市民の考え方やコンテクストが多様すぎて、ひとまとめの対応が難しいことも理由に挙げられるかもしれない。連邦レベルでの試みは日本のデジタル庁と同じように、GtoG的な側面が強く市民に対面する自治体の後方支援的な動きが主たる目的になっている模様。


デザインの価値を認め続けてもらうには

Stephanieは過去の経験から、行政組織のなかでデザインの価値を認め続けてもらい、拡大していくための5つのTipsを紹介した。

Building and Sustaining Design in Government By Stephanie Wade

Integrate Design
データ分析や行動経済学、アジャイル、Futurismなどいろいろな分野の技術やナレッジを統合していくことでインパクトを生み出していく。

Measure Impact
問題のインパクトを示すこと。特に定量的に示すことが重要で指標をきちんと定義することで、組織内の合意を取り付けたり、何がうまくいって何がうまくいかないのかを示すことができる。

Tell Your Story
最も重要だが、見落とされがちなこと。複雑な社会課題に対する解決策についてのアイデアだけでなく、アイデアと課題との意味のある繋がりをきちんと伝えること。そこにA-ha momontesを生み出すことが必要。そのためには、住民へのインタビューからの引用、現場の写真などを駆使する。また、プレスリリースなどや外部への発表機会を通じて、デザインの価値を広めていくこと。

Teaching Others
プロジェクトを通して組織内部をトレーニング、ブートキャンプ、あるいはランチなどの時間を使って心理的な安全性を確保した状態で、自由に質問を受け付ける機会をつくる。

Plan Ahead
長期間での発展を見据えて、シニアレベルのリーダーや部門長などからの広範なサポートを取り付けておくこと。3.Telling Storyがここにも効いてくる。実際にプレスリリースや発表の数などがアピールポイントになることもある。


Community-Led Innovation

フィラデルフィア、ニューヨーク、モンゴメリーの行政組織に所属するCommunity Centered Designを実践するデザイナーによるパネルディスカッション。ボトムアップのアプローチとしてコミュニティとのコラボレーションを活用する上でどのようなポイントに気をつけているかを語った。

その中で「住民だけでなく行政組織のフロントラインに立つ人(窓口業務など市民と接する職員)の重要性」も訴えていたのが個人的には興味深かった。排他的になりがちな政策の意思決定のパワーを住民+フロントラインへとシフトさせていくことが重要であるとしていた。

Community Centeredなアプローチにおいては、自分はデザイナーではなく、ファシリテーターあるいは"Wathcer"であって、コミュニティメンバー自身がデザインをすると話す場面もあった。Co-designにおけるデザイナーの位置づけについても語った。


Day2:Civic Design Tools and Mindsets

このあたりで力つきたので、Day2は別でまとめようと思う。
Community〜のところで話されていた内容は、Day2でも触れられていた、Design For / with / Byとの議論ともつながっていく。また、Day1でもEquityとEqualityの違いを挙げつつInclusionをテーマに扱ったセッションもあったが、Day2で手厚く語られていたので、そちらで合わせて書いてみようと思う。

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