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エッセイ | 川魚

北海道北見市にある『北の大地の水族館』には「館長が出てくるボタン」があるそうだ。だが「ボタンを押しても館長が出てきません」や「本当に館長はいるのですか?」といったクレームが来てしまっているようで、この件をまとめたネットニュースが面白くてついつい見てしまった。

この水族館へ行ったことはないのだが、何度かテレビで紹介されているのを見たことがある。水族館プロデューサーの中村元がプロデュースしており、「マツコの知らない世界」では「水族館の世界」でたびたび登場している。

私が『北の大地の水族館』を知ったきっかけも「マツコの知らない世界」を見たからである。


『北の大地の水族館』は淡水魚の水族館であるため、川や池、湖に生息する生き物が展示されている。

公式サイトを見ているだけでおもしろいのだが、それと同時に懐かしさが押し寄せてくる。

子どもの頃に川や湖で釣りをしたことがある。私が好きでやっていたわけではなく、父の趣味に連れられて行っていただけなのだが。

写真の魚を見ながら「こんな魚もいたような気がするな」と思っていた。


私は川や湖での釣りが嫌いだった。餌に魚が食いつくのをずっと待っていなければならないし、食いついたとしても当時の私には気付けないようなほんのわずかな食いつきなのだ。針を上げてみれば餌は取られており、餌を付けて、また投げ入れての繰り返しだ。

海釣りであれば強い引きがあって楽しいのだが、川釣りは静かでつまらない。海釣りのような強い引きはめったにない。あったとしたらかなりの大物がかかったということになるが、そんな大物を釣ったことはない。

次第に私は川釣りには行かなくなるのだが、父は季節になれば釣り用の免許を持って出かけて行った。夕方頃に帰ってきたかと思うと、釣った魚を見せてくれる。

ニジマス、アマゴ、イワナ、ヤマメ。子どもの私には違いが全く分からなかったが、父がうれしそうに語るからすごいものだと私も思っていた。


持ち帰ってきた魚は父が料理をしてくれる。料理といっても焼くだけなのだが、内臓の処理をしたり、他の釣り針を飲んでいないかなど確認していた。

まな板の上に並んだ魚は既に死んでいるのだが、父は必ず刃を入れる前に手を合わせていた。当時の私は意味が分かっていなかったが、並んで手を合わせていたと思う。

川魚は淡白な味で少し甘みがある。脂がのっていることなんてないのだが、香りがとても良い。香りは海に住む魚と全く違って、素朴なのだが特徴のある良い香りだ。

最近は川魚なんて食べないが、今でもその香りを思い出して食べたくなる。



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