ジャニーズは本当に加害者集団なのか?

ジャニーズは加害者集団って、みんな本気で思ってるのですか?本当に?

株式会社SMILE-UP.(旧ジャニーズ事務所)が10月3日に行った記者会見について、メディア関係者から極めて多くの批判を集めています。

―井ノ原副社長が記者たちに「落ち着いて」と言ったのはトーンポリシング(加害者側の論点すり替え)だ―
―NGリストによって、私たち記者を排除するのは、決して許されない八百長だ。―

こういう批判に、多くの政治家たちや一般人が同調し、ジャニーズ側を厳しくバッシングしています。その背景には、「ジャニーズは重大な性的虐待を行った加害者側である」という共通認識があります。

しかし、性暴力に対して憤っている「正義側」の皆さんに、私はあえて問い直したいのです。

ジャニーズは加害者集団だというのは、本当なのでしょうか?皆さん、本気でそう考えているのでしょうか?

もちろん、私はジャニー喜多川による児童虐待の事実を否定するものでは決してありませんし、その被害を矮小化するものでもありません。

ただ、虐待が深刻すぎるからこそ、このバッシングではあまりにも大きなものが見落とされており、それゆえ今の動きには大変な暴力性が孕まれている、そのことに少しでも多くの人に気がついて欲しいだけです。

今のジャニーズは、おそらく最も深刻な被害者集団だということ

ジャニー喜多川による加害は、もっぱらジャニーズ事務所の内部で行われました。それが、ビッグモーターなど他の反社会的企業や、政治家の不祥事とは決定的に異なるところです。

被害者が内部にしかいない、だからたいした問題じゃない、と言いたいわけではありません。

そうではなく、ジャニーズは深刻な加害を行った組織でもあると同時に、深刻な被害者の集団でもあるということです。そのあまりにも当たり前のことが、完全に忘れられているように思うのです。

加害者組織でもあり被害者集団でもあるジャニーズ事務所から、主たる加害者は、すなわちジャニー喜多川とその姉である藤島メリー泰子の2人は、その罪を一切背負うことなく、この世から逃げおおせたことは皆さんご存じの通りです。

そうすると、今のジャニーズは、実質的には(つまり個々人を見れば)虐待被害者の集団であるという性質の方が、はるかに大きい。これが論理的な結論です。

最も深刻な被害者は、語ることができない

馬は加害者側を擁護するのか、絶対に許せない、という批判もあるでしょう。私のことは、いくらでも非難したり、罵倒したり、どうぞご自由にすれば良いと思います。

でも、せめてもう少しだけ聞いてください。

もちろん法人としては、ジャニーズ(あるいはSMILE-UP.)は、彼らの創業者による虐待に対して、責任を負っています。そのことを私は決して否定しません。

しかし個々人として見れば、残っている人の多くは、かなりの割合で被虐待サバイバーであると思われるのです。少なくとも、一定の年代以上のタレントは、その可能性が非常に高いでしょう。

また、今の株主であるジュリー藤島が公開した手記を読めば、性的虐待ではないにせよ、母親であるメリーから深刻な虐待を受けていたことは、容易に想像できます。

そもそも、ジャニーによる児童虐待と寵愛は、表裏一体のものでした。愛情という良い側面があったと言いたいのではありません。ジャニーにとっての寵愛が、児童にとっては―あるいは客観的には―児童虐待だったということです。

彼が寵愛した児童が、メディアにプッシュされ、大々的に売り出されていく。そして、沈黙と引き替えに、組織の中で被害者がだんだん上層部に組み込まれていく、このような極めて巧妙な組織構造を、ジャニーとメリーの姉弟が、メディアやスポンサー企業とともに創り上げていったのです。

だとするならば、最も深刻な虐待を受けた人たちは、今も組織の中にいる。もしかすると、今の経営陣でもありうる。そして、彼らの多くは、様々な理由で被害について語ることができない。そのように私たちは想像した方が良いのではないでしょうか。

外部に逃げることができて、告発した被害者だけが被害者はないのです。むしろ、今やこの件は被害者しか残されていないが、そのうちのごく一部だけが被害を訴えている、そのように考える方が、実態に近いのではないかと、私は想像しています。

被害者が告発できない、極めて巧妙な組織構造

先日の記者会見で、新社長の東山紀之は語りました。

結論的に見て見ぬふりをしてきた。どう行動するかわかっていなかった。今であればいろんな人に言えると思うが、当時は家庭と仕事場と、学校ぐらいしかなく、その中で誰に言えるのか、その勇気が僕にはなかった。

「見て見ぬふり」と言ったことだけを取り上げて、東山は加害者側である、社長にふさわしくないという批判が、とある大新聞の記者からありました。

しかし、少なくとも私としては、彼が告発できなかったことを、勇気がないなどととても責めることはできません。当時の状況は、告発しジャニーズ事務所と闘うには、あまりにも悪条件が揃いすぎていたからです。

被害者にとって、最悪の環境要因を列挙します。

  1. 被害者の多くは、当時子どもだった

  2. 心身に深刻なトラウマを負っており、身動きできなかった。

  3. 男児の性被害に対して、社会全体の問題意識があまりにも低かった。被害を訴えても軽んじられたり、嘲笑されたり、虐められたりする恐れが非常に高かった。

  4. メディアが、ジャニーによる児童虐待を取り上げようとせず、むしろ大メディアは事務所側だった

  5. 場合によっては、家族も事務所と共犯関係にあった。

  6. 察はまともに取り合おうとしない可能性が極めて高かった。様々な理由があるが、告発相手が巨大すぎる。現場は子どもの訴えをまともに聞き届けない。警察全体で、男児の性被害に対する意識が極めて低い。そういった複合的な要因が絡んでいる。

  7. 芸能界全体に言えることだが、事務所が闇社会との繋がりが深いという噂があった。

ここまでの悪条件が揃って、どのように闘い、勝つことができるというのでしょうか。正直、客観的に考えても、ほとんど勝ち筋が見えません。仮に私が同じ状況なら、完全に絶望していたと思います。

被害者は大人になってから告発するべきだった、という人もいるでしょう。実際にそうした人もいます。しかし、一度芸能界で売れてしまえば、自らの被害を告発することは極めて困難です。事務所に逆らい、悪いイメージがついたタレントを、どこの企業もメディアも使ってはくれません。

人生をすべて棄てる覚悟で、あるいは下手をすれば殺される覚悟で、被害を告発する勇気がなかったとして、誰がいったい責めることができる資格があるのでしょうか。

虐待被害者の声を絶対に黙殺しない、どんな強大な敵からも必ず守れると断言できるジャーナリストだけが、東山氏に石を投げる資格があると思います。

児童虐待、本当の加害者はいったい誰か

同僚や後輩たちの虐待について、見て見ぬふりをしたら加害と一緒だ、という人もいるでしょう。

しかし、他人の被害を告発すると、被害者やその周囲の人の人生まで、根本から台無しにしてしまう危険性があることは容易に想像がつきます。

そう考えると、彼らの加害者性はあったとしてもごくわずかであり、被害者性の方が遙かに大きいと断言できます。

もちろん、彼ら自身が他人に行った虐待が事実あるなら、それはその人の責任です。ただしその場合も、性暴力組織環境における虐待の連鎖という側面を理解する必要があると思います。

では、誰が虐待被害に最終的な責任があるのか。もちろん、最も悪いのは、ジャニー喜多川であり、メリー藤島です。そして、当時の経営幹部にも大きな責任があります。

しかし、それ以外で最も悪いのは、どう考えてもタレント本人ではなく、メディア、そしてスポンサー企業です。なぜなら、被害者がジャニーズ事務所と闘う上で、ほぼ唯一の勝ち筋は、メディアを味方に付けることだからです。

しかし実際には、メディアがジャニーズ事務所と癒着して、相互依存の中で児童虐待を完全に黙殺し、救済の道を閉ざしてきた、これが現実に起きた出来事です。

今でこそ、SNSで個人で発信し、拡散されれば大きなパワーを持つことがあります。しかし、SNS以前は個人に発信力など一切ありません。メディアとしても虐待は不都合であり、彼らが黙殺する限りにおいて、被害者は完全に沈黙を迫られる状況だったのです。

スポンサー企業は、おそらく大半は児童虐待を知りながら、自社の利益のためにジャニーズタレントを起用しつづけました。それが、ジャニーズ事務所が存続する資金源になりました。また、広告起用によって、ジャニーズはさらに大きな名声を集めました。その結果、多くの児童がジャニーズに応募し、さらに被害を拡大させていったのです。

虐待が表沙汰になることは、スポンサー企業にとっても完全に命取りになるので、彼らもまた事実関係を抑圧する方向に動いたことは想像に難くありません。

ジャニー喜多川とメリー藤島、メディア、そしてスポンサー企業は、共謀して少年たちを性的にも、経済的にも搾取してきました。そうやって被害者の声がほぼ完全に黙殺される極めて巧妙な支配構造を、何十年にもわたって創りつづけてきたのです。

この権力構造は、最高裁判決で児童虐待が認定されても、ジャニーとメリーが死亡しても、強固に存続し続け、BBCという外圧によって初めて崩壊しはじてたことは、皆さんご存知のとおりです。

最後に皆さんにお願い

今回はこれぐらいで止めておきます。

具体的な人物や組織を名指しして批判したい、あるいは政治責任を追及したい気持ちもあるのですが、それはまた別の機会にいたします。

僕が言いたいことは、自分のTwitterにも断片的に書いているので、気になる人は見てください。

ただ、いくつかお願いがあります。

①ジャニーズ(現Smile-Up.)が被害者集団でもあるという認識で、いま起きている出来事をもう一度見つめなおしてください。

  • ジャニーズバッシングを主導しているのはどういう組織で、それはどのような動機なのか。

  • どちらが本当の加害者で、どちらが被害者なのか。

  • 井ノ原副社長のあの発言は、本当にトーンポリシングを意図したものだったのか。

  • なぜ一部の記者がNGリストに入れられたのか。

これらをすべて、考え直してみてほしいのです。

完全に、世界がひっくり返って見えます。

②誰が実際に虐待を受けたのか、特定したり、告白を強要したりするようなことは、絶対にやめてください。それは、セカンドレイプであり、許されることではありません。

そのような振る舞いをする記者が、仮にあなたの部下にいるなら、ジャニーズ問題には一切タッチさせないようにしてほしいのです。その人には性的虐待というデリケートな問題を扱う資格がありません。

もちろん、すべてを闇に葬るべきだと言いたいのではありません。虐待を受けた人には告白・告発を行う権利があるのと同様に、その苦しみと絶望の記憶を墓場まで持っていく権利もあるということです。それは、本人が決めるべき事で、私たちはその決断をただ支えることしかできないのです。

➂被害者の救済とケアに立ち戻ってください。これが最も重要なことで、他の議論は、これに比べば、本当に些末なことです。

救済とケアが必要なのは、名乗り出た被害者だけではありません。今のジャニーズ事務所のタレントたち、ジュニアたち、経営者たち、その家族たち、そして株主のジュリーさんもです。

加害者側」とされたが故に自分の被害は訴えることができず、ただ強烈なバッシングに晒され続けている人たち。彼らもまた、本当は救済とケアを必要としています。

そのことに、皆さん、どうか思い至って欲しいのです。

④最後のお願いです。今回の私のnoteは、完全に無料で公開しています。この記事へのサポートはお断りさせてください。

もし、何かしたいと言ってくださる方がいらっしゃるなら、ジャニーズ案件で一般人が何らかの支援ができる体制が出来たときに、是非そちらに寄付をお願いいたします。

ただ、有意義な記事だと思われた方は、拡散をいただければ本当に嬉しいです。

この記事が、少しでも誰かの救いに繋がることを祈りつつ。

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