立憲民主党の政策第二弾における、憲法違反の疑いについて

今回のnoteはかなり短いです。

立憲民主党政策第二弾

立憲民主党の#政権取ってこれをやる 第二弾が発表されました。

4の前半で語られた「性別・部落・民族・障がい・国籍、あらゆる差別の解消を目指す」という方向性については、私も異論はありません。

これは、日本国憲法第十四条で謳われた、法の下の平等の精神です。

しかし、その憲法の観点から言って、この政策そのものに差別が含まれている可能性がある、その点について今回は書きたいと思います。

「差別のない社会」公約における、ポリティカルコレクトネス違反について

この提言のどこに問題があるのでしょうか?

読者の皆様も、ちょっと考えてみてください。





まず、明確に問題なのは3の公約です。

3.DV対策や性暴力被害者支援など、困難を抱える女性への支援を充実

もちろん、暴力被害者の支援が必要であることを、私は否定するつもりはありません。

しかしDVや性暴力被害者は、女性であるとは限りません。割合としては少ないとしても、男性も含めて様々なジェンダーの人間が、DVや性暴力被害者になっているという事実もあります。

上の公約は、「被害者は女性である(女性以外は被害に遭わない)」というジェンダーバイアスに基づいており、かつそれを強化しているのです。

ここで内閣府の「男女共同参画のための広報の手引き」を参照してみましょう。

その1では、「男女どちらかに偏った表現になっていませんか?」という項目があります。

画像1

広報の内容が男女双方に関わるにもかかわらず、どちらかが想定されていないかのような表現を使うと、伝えるべき相手に正しく伝わりません。

3「男女を対等な関係で描いていますか?」では、被害者を性別と結びつけることを戒めています。

画像2

立憲民主党は、平等で多様な社会を実現するための政策提言において、ポリティカルコレクトネスに反した表現を行う大失策を侵しているのです。

DV・性被害者「女性」は、違憲立法の可能性がある

さらに重大なのは、この公約が法的な平等性に反するという点です。

立憲民主党は被害者「女性」の支援を公約に謳っているからです。もちろん、現実問題として、性暴力被害者もDV被害者も、女性の方が多いでしょう。そうした背景に女性差別が存在するということも理解できます。

しかし政策としては、「被害者」ならば属性に関係なく、個人として救済されるべきです。そこに別の属性を持ち出して法制化するならば、それは日本国憲法に反する違憲立法である可能性が出てきます。

抵触するのは、法の下の平等を謳い、法に基づく差別を禁じた最も重要な条文、すなわち憲法第十四条です。


すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない
(以下略)

この指摘に対してアファーマティブアクションは憲法に違反しないという反論もあります。

しかし、DV・性暴力被害からの救済が性別によって選別されるなら、憲法違反は明らかです。なぜなら、DVであれ性暴力であれ、暴力被害は人権侵害だからです。言い換えれば、暴力の被害者になった時点で、その人は社会的属性のいかんに関わらず「弱者」であり、直ちに法的に救済されなければならないのです。

性別や民族などの属性によって、救済されるべき被害者とそうでない被害者に分けるような法は、日本国憲法のもとでは決して許されることではありません

政府が、ある特定の属性の人間に対して救済を行わないなら、基本的人権はもはや風前の灯火です。そのとき、人権はもはや基本的人権ではなく、政府が自分の都合によって恣意的に認めたり認めなかったりするハーフスペックの人権になるからです。

本多氏への人権侵害と、国内人権機関

大事なことなのでもう一度言います。

救済されるべきは暴力の被害者個人であって、そこには属性は関係ありません。

もちろん女性の方が被害に遭いやすいことは事実であり、その背景には女性差別が存在することもあるでしょう。しかし、法制度としては、個人を救済することによって、結果として社会的な差別が解消されていくという方法論を採るしかないわけです。

立憲民主党の公約は、その原則的な方法論を踏み外しています。

もう一度引用します。

3.DV対策や性暴力被害者支援など、困難を抱える女性への支援を充実
4.  性別・部落・民族・障がい・国籍、あらゆる差別の解消を目指すとともに、差別を防止し、差別に対応するため国内人権機関を設置

自身が直前に挙げた公約が「性別・部落・民族・障がい・国籍、あらゆる差別の解消を目指す」という方針に反していることにも気がつかない程度の政党が「国内人権機関」を設置する訳です。

これは、本多平直元議員についての欠陥だらけの報告書で書かれた党内施策を、政府レベルへと拡大することでしょう。

(3)ジェンダー平等本部の関与とチエック機能をもった仕組
i ジェンダー平等推進本部の機能を強化して、に政策チエック機能をもたせる。
ii 党のアドバイザリーボードとしてジェンダー問題の有識者会議を設ける。(原文ママ)

本多氏の件において、調査報告書はまともな事実認定も聞き取り調査・弁明の機会も与えないままロリペドの差別主義者・パワハラ加害者だと断じ、党執行部は本多氏を処分しようとしました。

言うまでもなく、それは本多氏に対する重大な人権侵害です。それが人権侵害であると認識できないなら、彼が男性という「社会的属性」によって差別されているからに他なりません。

立憲民主党は、個人ではなく、マジョリティとマイノリティの二項対立で社会を理解しています。そして、マジョリティに対して、マイノリティという属性を救済しようとするわけです。

その固定観念・社会理解こそが差別の温床であり、それに基づく選択的な人権救済は日本国憲法に違反します。

差別解消を謳った政策提言パッケージにおいて、ジェンダーバイアスが含まれ、かつ憲法違反の疑いがある公約を出しているのが、残念ながら今の立憲民主党の憲法理解・人権理解のレベルなのです。

そのような政党が、差別を防止し対応する「国内人権機関」の設置を公約に掲げている訳です。

それは日本社会にどのような結果をもたらすのでしょうか。

皆様それぞれご想像いただければと存じます。

最後に

本多平直氏の件について、というか立憲民主党執行部の問題については、過去に書いた記事も併せてご参照いただければと存じます。


本多氏の件については、あと少なくとも2回はnoteに書く予定にしています。

リリースまで、少し時間はかかると思います。今しばらくお待ちいただければと存じます。



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