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オールの小部屋から⑬ ”台割”って何?
急に涼しくなりましたが、みなさんお変わりありませんか。
目下、オール編集部は12月号の校了中です。
「本屋が選ぶ時代小説大賞」など豪華特集目白押しの12月号についてはあらためてお知らせすることにして、今回は、好評発売中の11月号の「台割」について書いてみたいと思います。
小部屋⑨「目次づくりと文春のジャングル」で、目次の不思議について書いたのですが、お読みくださいましたでしょうか。オール讀物の目次は、小説や記事の実際の並び順とは関係なく、いちばん読んでほしいメイン特集を「右」に、次におすすめしたい企画を「左」に、気楽によめる対談・コラム・箸休め企画を「真ん中」に置いてつくっていく、と、ご紹介しました。
「じゃあ本文の小説や記事の”並び順”ってどうやって決めるの?」という疑問を持たれた方もいらっしゃると思います。
どのページにどの小説や記事を載せるか(並び順)、その割り振りを「台割」といいます。目次づくりとほぼ同じタイミング、校了寸前に決めていきます。
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オールの場合、最初の編集ページにグラビア(小説誌にもグラビアってあるんです)、最終ページに「おしまいのページで」というリレーコラム(ベテラン作家5名が交代で執筆)を置くことが決まっています。
では、頭とお尻のあいだ、サンドイッチの”具”に当たる部分をどうつくっていくか。まず巻頭(グラビアの次)には、この号でいちばん最初に読んでほしい小説を置きます。発売中の11月号は、新人賞発表号なので、オール讀物新人賞発の金看板「池袋ウエストゲートパーク」シーズン20、石田衣良さんの「西池袋バッテリーブギ」を巻頭に置こうと決めました。
次に、小説のトリ(=いちばん最後)を考えます。トリというのは寄席の用語で、その日、いちばん最後に演じる演者を指す言葉だそうです。
オール讀物のトリは、時代小説の人気シリーズと決まっています。創刊以来の人気連載だった野村胡堂「銭形平次」が、あるときから毎号巻末に置かれるようになり、以来、現在まで続く伝統になったようです。昭和32年に「銭形平次」が終了したのちは、松本清張「無宿人別帳」、海音寺潮五郎「武将列伝」へと受け継がれ、さらに「柴錬立川文庫」、池波正太郎「鬼平犯科帳」、平岩弓枝「御宿かわせみ」、宇江佐真理「髪結い伊三次捕物余話」といった、時代を代表する人気シリーズが歴代のトリをつとめてきました。
現在では固定のシリーズではなく、夢枕獏さんの「陰陽師」、畠中恵さん「まんまこと」、坂井希久子さん「江戸彩り見立て帖」など、その号ごとにふさわしいシリーズを選んで巻末を飾っていただいています。
この11月号は、宮城谷昌光さんの「三国志名臣列伝」(「甘寧」)をトリに置かせていただきました。
巻頭とトリが決まれば、なんとなく雑誌の形が見えてきます。11月号は新人賞発表号であり、メイン特集が「絶対、『小説家』になる!」でしたので、巻頭のIWGP最新作のあと石田衣良さんのインタビュー「ぼくの作家サバイバル術」を並べてシリーズを25年書き続ける秘訣を紹介。その後に第103回新人賞発表(選評)、受賞作「かはゆき、道賢」、さらに今村翔吾さんのホンネが炸裂する「新人作家のリアルな悩みに答える!」を挟んで、オール新人賞受賞以来40数年続いている赤川次郎さん「幽霊シリーズ」最新作の「昨日、今日、あさって」にご登場いただいて新人賞企画に一区切り――こういう構成にしました。
説明だけではわかりにくいと思うので、ぜひお手元に11月号を置き、最初から順番にページをめくって、この「流れ」を楽しんでいただけたらと思います。
ここまでで約100ページ。オールはいつも100ページくらいまでくると、ちょっと休憩・箸休めということで、必ず、東海林さだおさん「男の分別学」+伊藤理佐さん「妙齢おねえさん道」の人気コラム&漫画をセットで置くことにしています。ここでクスっと笑っていただいて、また小説へ戻る、という流れをつくっているのです。毎号100ページくらいの場所に必ず東海林さんと伊藤さんのコンビが入っているので、手に取って確かめてみてください!
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すべての原稿をページ数どおりピッタリ入れていくのは、パズルのような要素もあります。
全部はご紹介しきれないですが、ここからまた恩田陸さん、夢枕獏さん、北方謙三さんとベテランの読み切り短編を並べ、凪良ゆうさんのトークイベント記事「『汝、星のごとく』私はこう書いた」でひと息ついてさわやかな気持ちになっていただいたところで、話題の新連載、村山由佳さんの「PRIZE-プライズ-」へ繋げ、新鋭の五十嵐律人さんミステリー短編、米澤穂信さん「『警察×本格ミステリ』書き方講座」のセットでミステリパートをつくり……というふうに台割を固めていきます。
特集企画や豪華読み切り短編が一段落したところで連載小説パートへ入り、いよいよトリの「三国志名臣列伝」へ――。計452ページのオール11月号の構成ができあがりました。
この流れを決めると、台割表と呼ばれる「1冊の構成を1ページごとに書き込んだ表」をつくります。最近はエクセルでつくりますが、数年前までは紙にエンピツで書いていました。
台割表は、進行担当のデスクであるHさんがつくってくれます。これがないと校了作業に入れない、大事な「雑誌の設計図」です。
……といったところで、12月号の校了作業に戻りたいと思います!
総力特集「絶対、『小説家』になる!」の11月号をまだお買い求めでない方は、ぜひ、今のうちに!
(オールの小部屋から⑬ 終わり)
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