雑文(11)「デリバリーサービス」
デリバリーサービスは、便利だ。
自宅のソファに座ったまま、スマートフォンの画面をタップするだけで商品を注文できる、便利さだ。
支払いだって現金払いじゃなくて、クレジットカード自動引落しだ。便利だ。
ソファに座って、三十秒毎に更新されるマップを見ながら、商品到達を待つのだ。
無論、サービスは割増し料金だが、外着に着替えて外出する、行き帰り階段をのぼりおりする労力を差し引きすると、無問題なのだ。せっかくの休みだから、動きたくないのだ。だからおれは、デリバリーサービスを利用した、デリバリーサービスでいろいろできる世の中だから、おれは利用したのだ。
インターフォンが鳴った。
受話器をあげ、相手さんの名乗りを聞いてから、無意識にエントランスの共用ドアを開けた。
おれは首をかしげた。
スマートフォンの画面に目をやった。
おれは青ざめた。
キャンセルはもうできない。
逃げようかと思ったが、地上八階だ、逃げられない。
アプリのアイコンが似ていたから、しかも隣同士に配置してあったから、おれは、まちがえたんだろう。
玄関のインターフォンが鳴った、玄関の方へ顔を向き、おれは思った、おれが注文したとおり、肉増しの倍ビッグマックよろしく、おれは手際よく殺されてしまうんだろう。
おしまい
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