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香りと都会をめぐる旅(4/2 日記・エッセイ)

地下鉄は都会へと続く道、駅はその入り口。


2か月前、3年間住んだ駅前を離れ、少しのどかなところに引越しました。いつも静かで、鳥の声や風の音がよく聞こえ、空気がきれい。

そんな場所から、今日は久しぶりに電車に乗って、都会に出ることにしました。

知らない駅

しばらくぶりに見る駅には、新しい行き先の電車が。大阪メトロ御堂筋線が先月末に延伸し、北に3駅増えたのです!

御堂筋(みどうすじ)線は、大阪の3大都市を全て通りながら市内を縦断し、さらに南北の市まで繋ぐ、いわば大阪の大動脈。私も街に住んでいた頃はこの路線を頻繁に使い、血液の如く都会を流れていました。

人生で一番使った路線の、50年ぶりの延伸。何だか喜ばしい気持ちが抑えられません。

はじめまして「箕面萱野行き」、これからよろしくね。

久しぶりの、都会。

元々、電車に乗るのは好きだったけれど、駅も遠く滅多に乗らなくなってしまった今では、乗り込むだけでワクワクが止まりませんでした。

梅田駅に着くと、どこからか覚えのある匂いが。それは誰かが香らせたサンダルウッドのラストノート。

アロマ趣味を持ってからあまり都会に出ていなかったので、他人の香水の匂いが分かるようになったことにこの時初めて気が付いたのです。
これが世界の解像度が上がるということか、と、思わず嬉しくなりました。

そう、今日はその「香り」を求めて街にやってきたのです。

旅の目的地

香りと言っても、今回指すのはプロにより調香されたもの。店に並ぶ様々な香りを嗅いで、好きな香り・欲しい商品を探すとともに、ブレンドについて勉強することが目的です。

今回巡ったのは、「LUCUA 1100(イーレ)」という駅前のショッピングモール。ここで香水やお香などを売っている場所を回りました。

そこで印象的だったお店を3つ、気に入った香りと共に紹介します。

① BAUM 〜3種の樹木の香り〜

資生堂系列の、スキンケア・フレグランスブランド。ナチュラル・モダン系のテイストです。

樹木系の、日本らしい深くてくつろげる森の香りを3種類展開。原材料の天然由来成分比率が95〜97%とすごく高いことに驚きました。

どの香りも気に入ったので全部紹介しちゃう。

トップ:ベルガモット、カモミール
ミドル:サイプレス、コリアンダー、
ゼラニウム、ローズ
ベース:シダーウッド、ベチバー
トップ:カルダモン、ライム
ミドル:イランイラン、ジャスミン、ローズ
ベース:シダーウッド、サンダルウッド、パチュリ
トップ:ゼラニウム、ローズマリー、ユーカリ
ミドル:ローズ、アイリス、バイオレット
ベース:シダーウッド、ガイアックウッド、パチュリ


ここで使われている、ベチバーやパチュリですが、実は単体の精油だとかなり好みが分かれる土のような香り。

私もこの前、スリランカの伝統医療であるアーユルヴェーダを意識した調香をしてみた際に使ったのですが、量を間違えるとすごい香りになります。でも、少量を上手に使えば香りの深みがぐっと広がります。

こういうエレメントを上手に使えるようになりたいな〜と強く思いました。プロによる香りを嗅いで。

② LALINE 〜可憐なさくらんぼと花々の香り〜

イスラエル発のライフスタイルブランド。
爽やかで、フローラル・フルーティーな可愛い甘みのある、白っぽいイメージの心地良い香りがたくさんありました。

特に、「チェリーブロッサム」の香りがドンピシャで好み。中学生の頃に持っていた、Afternoon Tea の桜の香りのヘアミストに似ていました。子どもの頃、2番目に大好きだった香りです!

フルーティー系のかわいくて甘い、可憐な香りで、少女感溢れる印象でした。

これはたぶん買う。

運命の出会い 人生香水になるかも
③SHIRO 〜インセンスクリア〜

さて、旅も終盤になる頃に、これまでの人生で2番にランクインするとびきりのお気に入りブレンドに出会ってしまいます。

SHIROは、日本発のフレグランス・コスメブランド。自然の恵みを余すことなく活用する精神の、シンプル系ブランド。

正直、SHIROはフレグランスミストのイメージだったので、清楚系の万人ウケする売れるやつしか作ってないんでしょ、と思っていました。

甘かった。

SHIROには、フレグランスの他にパフュームのラインがあって、世界各国の調香師から生まれた12種の香りが展開されていました。

全部試香してきたのですが、どれも深みがあり、ドラマチック。ストーリーが感じられる、「記憶の香り」でした。

ラインナップと香りの系統

そして激刺さりした香りがこちら。

INCENSE  CLEAR

それぞれの単語の辞書的意味は下記の通り。

incense:
香。しばしば宗教的儀式で用いる、芳香。

clear:
・澄んだ、透き通った
・はっきりした、くっきりした
・潔白な、やましいところのない

この香りは、まさにその名前のよう。

寺社のお香の様な神聖さ、重さ、深さ、荘厳さ
×
果実の様な透明感、軽さ、甘さ、白さ、澄み

深く息をすると心が浄化されるような、落ち着くけれど引き締まる香り。

あまりに好きすぎて、倒れるかと思いました。このクラスの衝撃は、JILLSTUARTのSomething pure blue scent(これが私のベスト香水、限定品なのが惜しまれる)以来初。

香りの構成を見るなり、驚きました。

意外とシンプルな上に、お香っぽくない。
しかし、好きなわけだと納得しました。

トップのベルガモット、ミドルのジャスミン、ラストのムスクはどれも私の大好きな香り。

そこに、パイン、スパイス、モス(苔)のアクセントが加わることで、唯一無二の香りが生まれています。

なんて研ぎ澄まされたセンスの人だろう。

調香師に関する情報は、日本人であることと、男性であることしか明かされていません。

とりあえず試香紙を持ち帰ってラストノートまで確認することにしましたが、これもきっと買うと思います。最高。

帰り道(おわりに)

帰りの電車で、鼻を澄ませてみると。
きっと人間由来のものではない、さまざまな香りに溢れていることに気が付きました。

電車という管の中、ミチミチに詰まってる人のそれぞれに、センスや好みがあって、それを纏って生きている———。

都市を廻る血液は、こんなにも鮮やかに彩られているのだなぁ。

世界が開けて見えた瞬間でした。

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