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角野隼人 全国ツアー2024 "KEYS" 京都公演 2/3(土) 感想

一言で表すと、「クラシックガチ勢も、全く分からない人も、皆が驚き楽しめる、新感覚のエンターテイメント・コンサート」

今回は、私と友人の2人で参加してきました。

私の立場はと言うと、3歳から18歳までクラシックピアノを習い、角野氏がグランプリを受賞したPTNAピアノコンペティションにも高校生まで参加していた、元ガチガチのガチ勢。

一方、同行者は、YouTube動画にてCateen名義で活動している角野氏を見つけ、ファンになった、クラシック未経験&ピアノコンサート初参加の非ピアノ弾き。

この異色の2名でコンサートに参戦し、感想交流をしてきました。私の感想をメインに、軽く書き残しておきます。

※サムネは撮影・SNS掲載OK部分です。
※書き起こすまでに2ヶ月近く経ってしまったので、詳細を忘れてしまっている部分があります、悪しからず。

J.S.バッハ:イタリア協奏曲

私にとって一番驚きが大きかったのはこれ。
始まった瞬間、「ん?バッハ・・・だよな?」となるような伸びやかな音色。コンクール仕様・クラシック演奏会仕様のバッハとは異なる弾き方が新鮮でした。しかし、流石は角野。各声部は全て分かれて聴こえるのに、調和するように絡み合い、また対比の表現も素晴らしい。

まさに盤石な基礎ありきの逸脱。
コンサートの一番最初にこの曲を置くことで、時代や作曲家らしさを出しつつも、それだけに囚われない自由な音楽表現を行っていくぞ、と角野氏は予告していたのではないかと思います。

モーツァルト:ピアノ・ソナタ11番「トルコ行進曲付き」

これも驚きがデカかった———。
この曲は、小さい頃から良く弾き込んでいたお気に入りであっただけに、すぐに装飾やアレンジの自由さに気が付きました。「あれ、こんな音あったっけ?」「でもこれ、めっちゃ良い。」

1〜3楽章まで、流れるように続き、涙が出そうなほど繊細で美しい音で奏でられるメロディー・・・。小さくて粒の揃った音はまるで真珠のよう。既に「来れて良かった」の気持ちでいっぱいでした。

同行者にとっても、最初の2曲があまりクラシックらしくない雰囲気の音色だったことが感じられ、驚きがあったようです。

角野隼人:24の調によるトルコ行進曲変奏曲

ここからが本領でした。
と言わんばかりの溢れ出る音楽———。

表現者・角野隼人による目と耳で楽しめるショータイム。ここでは24色に光る玉がピアノ横に登場し、変奏曲の「調性———KEYS」が変わるごとに色が変化する演出もありました。

私自身、現役時代は調性ごとに音色を変えて表現することに楽しみとこだわりを見出していたので、角野氏がどんな表現をしてくるのか楽しみにしていたのですが、やはり凄かった。

色のイメージと曲調の選び方も相まって、角野氏の「調性観」が見事に展開される、目眩く時間。至福でした。

角野隼人:大猫のワルツ

休憩を挟んでここから後半戦。
楽器が増え、グランドピアノ、改造アップライトピアノ、名前を忘れた小さめの鍵盤楽器(チェレスタだっけ?)の3台に加え、なんとお馴染みのトイピアノ、鍵盤ハーモニカまで登場。
角野氏のオリジナル曲と、アレンジ曲で構成されています。

クラシックの時より音量の幅も揺れ方も広がって、自由に歌い踊るような演奏。やはり角野隼人はクラシック演奏者としての顔とは別に、鍵盤楽器による表現を模索するクリエイターとしての顔があると感じました。

私は自分がやっていたからか、前半クラシックの部の方が驚きと発見が多い印象でしたが、同行者は後半オリジナル・アレンジの部の方が表現の幅が広く、面白かったようでした。

ガーシュウィン:パリのアメリカ人

オリジナルは、クラシック音楽をベースにジャズなどの要素も取り入れた、オーケストラ作品。角野氏はオーケストラを鍵盤楽器だけで表現することに挑戦。5種の鍵盤楽器を駆使することで、鍵盤だけとは思えないほどの多彩なサウンドを披露していました。

特に驚いたのが、鍵盤ハーモニカが上手すぎること。抑揚のある波のような息遣いが奏でる音色はまるで管楽器。一瞬、あれ?笛入ってない??と聴き紛うほどでした。

見事なまでの一人オーケストラ。あっぱれ。

ラヴェル:ボレロ

前曲の驚きを超えてきた。
かの有名なオーケストラ曲・ボレロ。

プログラムを最初に見た時、「ボレロなんて、一定の繰り返しで変化の緩やかな曲をピアノで弾いて面白いんだろうか?」と正直思いました。

めちゃくちゃ面白かった。
まず、最初のスネアドラムとフルートのパート。始まるなり、「え?この音どっから出してるの??」と驚くほどに違和感のないタンギング(してないはずだが)。これは改造されたアップライトピアノから鳴っていました。この音のために改造してしまうのもすごいが、改造でこの音が出るのもすごい。ピアノという楽器の新たな可能性を感じました。

一定のモチーフが繰り返される中で段々と別の楽器(音色)が増えていき、広がっていく音楽。弱音から強音へと一筋にゆるやかにクレッシェンドがかかるとともに、舞台も徐々に明るく照らされていき———。高揚した終盤の華やかさは素晴らしいものでした。

小さくて繊細な美しい音を出すのも難しいですが、音量を大きくしつつも割れずに叩かずに、太く音を美しく響かせるのは本当に至難の技。彼は難なくオーケストラ並みの重厚なサウンドを響かせてみせたのです。

素晴らしかった。

(アンコール)角野隼人:ノクターン

ここからはアンコール。角野氏によるオリジナルのノクターン(夜想曲)が披露されました。夜といっても、早朝に近い"夜明け"が表現された作品となっていて、敢えてアップライトピアノで演奏されていました。

すっきりとした澄んだ涼しい空気が流れる中、空の色が徐々に変わっていくかのようなエモーショナルなサウンド。同じ感想を持った方が他にもいるようですが、新海誠映画とマッチしそうな雰囲気の、言わば現代の夜想曲でした。

(アンコール)角野隼人:きらきら星変奏曲

さて拍手に呼び戻されて最後の最後のアンコール。アンコールが2曲以上続くことは、クラシックのコンサートでは起こることなのですが、同行者にとっては初めてだったらしく、驚いていました。

最後の曲はきらきら星変奏曲。各公演ごとに異なる調で演奏するという粋な計らい。(※しかし、肝心の何調だったかを忘れてしまいました・・・。)

ここでは写真撮影と30秒の動画撮影がOK、さらにSNSへのアップも許可されていました!一発しか撮れないので慎重に狙いを定めて、いざ録音。私の大好きなショパンエチュードOp.10のオマージュ部分を見事収めることが出来ました!!しかもちょうど30秒!角野氏のファンサービスへの計画性が感じられました。

最後の最後まで、全ての観客を飽きさせない「魅せ方」は、まさにコンサートのプロでした。

まとめ

「クラシックガチ勢も、全く分からない人も、皆が驚き楽しめる、新感覚のエンターテイメント・コンサート」。

記事を読んだ皆さんには、最初にまとめた一言の意味が分かっていただけたのではないかと思います。

本当に多彩なサウンドに加え、照明や小道具による光の演出、そしてプログラムの時間構成。全てが完璧に仕組まれている、メッセージの詰まったコンサートでした。傑作。
チケット発売日の朝に、2人体制で3会場10時打ちした甲斐がありました。聴きに行けて本当に良かったです。

予告:2024.7.14 武道館公演

そして、次なるコンサートの予告。
なんと、"偶然"角野氏の誕生日に、初めての武道館公演が行われることに決まりました(!!)

クラシックピアノ演奏者としてキャリアをスタートさせながら、YouTubeでの投稿をメインに莫大な数のファンを集めてきた角野氏。ここまで人気になったのは、確かな基礎と技術があるだけでなく、音楽を楽しむ心とそれを様々な人に伝えるための創意工夫の力があるからなのではないかと思います。

この記事を読んで気になった方は、ぜひYouTubeでCateen(角野隼人の活動名)の演奏動画をチェックしてみてください!

もともと好きだった方も、今気になった方も、ぜひ武道館に足を運びましょう!!

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