【考察】自分を「赦す」とはどういうことか？

現在連載中の小説「愛の歌を君に」では、愛憎と赦しがテーマとなっています。中でも今回特筆したいのは第六話でも出てきた「自分を赦す」というテーマ。

読んでくださった方の中には、「相手を赦すのは分かるけど、自分を赦すってどういうこと？」と思った方もいるでしょう。そこで今回はその中の一つ「赦し」について考察していきたいと思います。

・まずは語源から

以前、日本語の語源についての記事を書いた際、「ゆるす」とは「緩める」の「ゆる」と同語源だ、とご紹介しました。

漢字で「赦す」と書く場合、

過失や失敗などを責めないでおく。とがめないことにする。
義務や負担などを引き受けないで済むようにする。免除する。

デジタル大辞泉

などの意味があります。

しかしここではあえて、すべての「ゆるす」（許・赦・聴・緩）の意味から考えてみたいと思います。

デジタル大辞泉によれば、

「聴す」：不都合なことがないとして、そうすることを認める（外出が聴される）
「許す」：相手がしたいようにさせる（わがままを許す）、そうするだけの自由を認める（時間が許せば……）
「緩す」：警戒や緊張状態などをゆるめる（心を緩した友）、引き張ったものを緩める、捉えたものを逃がす

といった意味があります（「赦す」については前述の通り）。

上記の意味を踏まえた上で、わたしの言葉で「赦す」について考えてみます。

・「自分を赦すこと」＝「自愛」

「赦す」の右側の「攵ボク（攴）」は広く動詞を示す記号として用いられ、漢字自体にゆるむ、のびるの意味が含まれます（赤（シャ）は音符で関係がない）。また、「捨（手を放して放置する）」と同系の意味も持っています。

このことから「自分を赦す」とは「自分を緩めること、手放すこと」となり、私なりの言葉で言うなら「ありのままの自分を認め、受け容れること」となります。

「こうすべき（囚われ、思い込み、常識）」と思っていたことが出来なかったり、相手の期待に添えなかったりして赦されなかった。そんな自分を自分で咎めた。けれども、そんな過去や囚われ自体を手放す。自分で自分を「赦す」。それが出来たとき初めて、人は真に「ありのままの自分」を受け容れられるのではないか。

これが今、私の目指す生き方でもある「ありのままの自分を愛する」と言うことだ、と現時点では結論づけています。

緊張が解ける、緩むんだ。ホッとする。かたくなに握っていたものを手放すんだから力は抜ける。それが「ゆるす」と言うことだよ。

上記は、「自分を赦す」について考察していたときに、私の小説に登場する人物である、永江孝太郎がノート上で書き綴った言葉です。彼は過去に母親と仲違いしていた時期があり（詳しくは「好きが言えない2」をご覧下さい😊）、仲間や監督に助けられながら最終的には母親をゆるした経験があるので、一言いいたかったようです。（キャラ対話についてはこちら）

また、彼はこうも言っています。

人は、怒りや憎しみ、悲しみに囚われていると病む。毒を溜め込んでいるのと同じだからね。「赦さない」と言うことはつまり、自分の中で毒を生み、回し続けるようなものさ。だから弱る。最後には死ぬ。

彼らしい言葉だなぁと思いながらも、「赦さない」と怒りを握りしめている人は多いのではないかな、とも思いました。彼のように達観するのは難しいかも知れませんが、「相手を赦せない氣持ちを持っている、自分を赦」せば、必然的に相手のことも赦せるのではないかな、と思いながら執筆しているところです。

☆☆現在連載中の小説「愛の歌を君に」は、
いろうた渾身の大人の恋愛小説です☆☆

↓概要はこちら↓

メジャーデビューして三十年間、プロの歌手として活動してきた麗華れいかのもとに一本の電話がかかってきた。デビュー前、一緒に活動していたかつての仲間、拓海たくみからだった。
彼らを裏切るようにしてデビューした麗華は、「もう一度バンドを組んで欲しい」という彼の誘いに戸惑う。しかしそれが病に冒された彼の、最後の願いだと知り要求を呑む……。

おじさんおばさんが主人公の話なんて……と侮ることなかれ！　「愛の歌を君に」は現代物ですがファンタジー要素満載！　それでいて人生哲学も詰め込まれております。心に刺さる物語が読みたい方はぜひ読んでみてください！！

第一話はこちら！（現在、第12話まで連載中）

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