こし・いたお

140字小説の鬼

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  • 140字小説

    削って削って、磨いて磨いて仕上げた140字小説です。

  • 54字の物語

    10秒足らずで読める物語にて、爽快な落ちをお届けします。

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    隙間時間にサクッと読めて、落ちを楽しめるのがショートショートの魅力です。

  • 短編小説

    数万字に及ぶ小説を書いたのは「不死者の決戦場」が初めてです。創作初期の作品です。文字数が多くなると誤字や脱字が多発します。僕だけだと数百字の短い物語でさえ、誤字が発生しても気付けないことがあります。ましてや数万字ともなればもう…そこで力を貸してくれたのがMさんでした。Mさんは続編の「凍てつく魂の地下迷宮」でも力を貸してくれました。二作品ともMさんの力なしでは未完成のままだったと思います。Mさん、その節は大変お世話になりました!!

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固定された記事

140字小説【届け!!】

「特技はありますか?」それは私がお見合いの時にした夫への質問。「肩だけは強いんです。遠投なら誰にも負けません。役に立ったことは一度もないですけどね」そう言って笑…

こし・いたお
10か月前
16

140字小説【発明王の苦難】

「うわっ!」「凄いわね…何もない所でそんな派手にこけるのは、世界広しといえどあなたくらいよ」僕はただ新しい防犯アイテムを発明したかった。歩くと大きな音のする防犯…

こし・いたお
13時間前
4

140字小説【もっと遠くへ】

「お願いします」「任せて!なんなら毎日でも送っていくよ!」「あ、いえ…」「次の週末は予定入ってる?夜景の綺麗な店を知ってるんだよね」「前を見て運転して下さい。距…

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140字小説【スポットライトが眩しくて】

国語の授業で自由に詩を書いた。終業のベルが迫る頃、みんなの詩を読み終えた先生。先生は最後に僕の書いた詩をみんなの前で読み上げた。詩人の名は伏せて。「この詩を書い…

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140字小説【来ることを知っていた?】

少子化の影響を受け廃校になった母校。僕は10年ぶりに足を運んだ。教室には机や椅子、教卓がそのまま残っている。「この辺かな?」6年2組の教室で自分の席を探した。誰も居…

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140字小説【頭の固い男】

「探したよ!どこ行ってたの?」「待ち合わせ場所が逃げてしまって…」「意味不明なこと言わないで!」「君の言ってたクレープ屋さんの前で待ってたよ。でもあの店キッチン…

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140字小説【ずっと気になっていた…】

何を伝えたいか分からない文章は読み手にストレスを与える。だから僕は必ず最初に結論を書く。ある日、僕が利用しているSNSに内気なファンから3年ぶりのコメントが入った。…

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140字小説【探さないで下さい】

「探さないで下さい」僕はそう書き置きして家を出た。昨夜、5歳の娘に見られてしまったからだ。「ねーねーママ、パパがね、こうして紙を中指と薬指の間に挟んでから、クル…

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140字小説【運び屋】

俺は事故に遭ったらしい。奇跡的に命をとりとめた俺は、見覚えのない女と生活を始めた。俺はその女のことを運び屋と呼んだ。手紙、写真、指輪。毎日のように見覚えのないも…

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140字小説【訳あり】

一人暮らしを始めた私。友人には敷金礼金がないのは訳ありだからと止められた。でも気にせず入居した。決め手は猫と住めること。入居初日、私が目の前に障害物があるかのよ…

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140字小説【浅はかな男たち】

早朝からひったくりを目撃した僕。徒歩での通勤途中、前を歩く女の持つ袋を、後からきた男が奪い取った。正義感に火のついた僕は、走り去る男を追いかけた。男から取り返し…

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140字小説【ヒマワリ】

夫の遺言通りにヒマワリ畑を作った。私には太陽に向かって咲くヒマワリのような明るく優しい夫がいた。その夫に先立たれ独りになった私。やっと心の整理がついたある日、夫…

2

140字小説【目覚ましが鳴らなくて】

「珍しいね、何かあったの?」上司に遅刻の理由を聞かれ言葉に詰まる私。「目覚ましが故障したみたいで…いつもの時間に鳴らなくて…」家のすぐ近くを川が流れ、そこには鉄…

3

140字小説【1日店長】

変なスイッチが入った。「お前じゃ話にならん、責任者をだせ!」見覚えのあるタチの悪いクレーマー。でもバイトの女の子が泣きそうになっているのにキッチンの店長は知らん…

4

140字小説【失って得たもの】

友人は職場の人間関係に悩み心を病んでいた。そこへ追い討ちをかけた仕事中の事故。友人は片腕を失った。物作りが好きだった友人は退院してからずっと引きこもっているとい…

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140字小説【見越していた夫】

「夢のあるプレゼントをありがとう」それは私が生前の夫に伝えた最後の言葉。冷え込みの厳しい夜の高原。肩を寄せ合い満月を眺めていた。私と幼い娘を残し旅立った無念は察…

こし・いたお
2週間前
2
140字小説【届け!!】

140字小説【届け!!】

「特技はありますか?」それは私がお見合いの時にした夫への質問。「肩だけは強いんです。遠投なら誰にも負けません。役に立ったことは一度もないですけどね」そう言って笑った夫の顔が一周忌に蘇り泣いた。あの時、夫と共に川で流された娘は岸へと戻れた。夫が最後の力を振り絞り、投げてくれたから。

140字小説【発明王の苦難】

140字小説【発明王の苦難】

「うわっ!」「凄いわね…何もない所でそんな派手にこけるのは、世界広しといえどあなたくらいよ」僕はただ新しい防犯アイテムを発明したかった。歩くと大きな音のする防犯砂利。それをヒントに発明した透明なバナナの皮。ベランダに置いたことを忘れていた。「防犯カメラでいいのに」妻の正論が痛い…

140字小説【もっと遠くへ】

140字小説【もっと遠くへ】

「お願いします」「任せて!なんなら毎日でも送っていくよ!」「あ、いえ…」「次の週末は予定入ってる?夜景の綺麗な店を知ってるんだよね」「前を見て運転して下さい。距離も詰めすぎです」「大丈夫!この車間距離なら前の車が急ブレーキ踏んでも止まれるよ」「いえ、あなたと私の心の距離です!」

140字小説【スポットライトが眩しくて】

140字小説【スポットライトが眩しくて】

国語の授業で自由に詩を書いた。終業のベルが迫る頃、みんなの詩を読み終えた先生。先生は最後に僕の書いた詩をみんなの前で読み上げた。詩人の名は伏せて。「この詩を書いた人は人生の詩人だと思います」「誰?誰?」と詩人探しが始まる。でも知っているのは2人だけ。スポットライトが眩しかった…。

140字小説【来ることを知っていた?】

140字小説【来ることを知っていた?】

少子化の影響を受け廃校になった母校。僕は10年ぶりに足を運んだ。教室には机や椅子、教卓がそのまま残っている。「この辺かな?」6年2組の教室で自分の席を探した。誰も居ない教室で号令をかける。「起立!気を付け!礼!着席!」10年ぶりの日直。黒板の右端には今日の日付と曜日、僕の名前が…

140字小説【頭の固い男】

140字小説【頭の固い男】

「探したよ!どこ行ってたの?」「待ち合わせ場所が逃げてしまって…」「意味不明なこと言わないで!」「君の言ってたクレープ屋さんの前で待ってたよ。でもあの店キッチンカーだろ。営業時間が終了して帰ったんだ…」「で、追いかけたの?頭が固すぎない?」「柔らかかったら延長してくれたのかい?」

140字小説【ずっと気になっていた…】

140字小説【ずっと気になっていた…】

何を伝えたいか分からない文章は読み手にストレスを与える。だから僕は必ず最初に結論を書く。ある日、僕が利用しているSNSに内気なファンから3年ぶりのコメントが入った。「あの、3年前からずっと気になっていたんですけど…どうしてあなたの140字小説は最初に落ちを書いてしまうんですか?」

140字小説【探さないで下さい】

140字小説【探さないで下さい】

「探さないで下さい」僕はそう書き置きして家を出た。昨夜、5歳の娘に見られてしまったからだ。「ねーねーママ、パパがね、こうして紙を中指と薬指の間に挟んでから、クルッと曲げて数えてたよ」娘の報告を聞いた妻は目を輝かせた。帰宅したぼくの目に映ったのは、へそくりを見つけて喜ぶ妻の顔……。

140字小説【運び屋】

140字小説【運び屋】

俺は事故に遭ったらしい。奇跡的に命をとりとめた俺は、見覚えのない女と生活を始めた。俺はその女のことを運び屋と呼んだ。手紙、写真、指輪。毎日のように見覚えのないものを運んできては俺に見せる。女は事故で声を失ったらしい。ある日、俺は思い出した。運び屋は妻で、運んでくれたのは俺の記憶…

140字小説【訳あり】

140字小説【訳あり】

一人暮らしを始めた私。友人には敷金礼金がないのは訳ありだからと止められた。でも気にせず入居した。決め手は猫と住めること。入居初日、私が目の前に障害物があるかのようにピョンと飛ぶと、猫も真似してピョンと飛んだ。今度は猫が飛んだけど私は騙されない。しかし私は見えない何かに躓き転んだ…

140字小説【浅はかな男たち】

140字小説【浅はかな男たち】

早朝からひったくりを目撃した僕。徒歩での通勤途中、前を歩く女の持つ袋を、後からきた男が奪い取った。正義感に火のついた僕は、走り去る男を追いかけた。男から取り返した袋を女に渡し微笑む僕。また男が戻ってくるかもしれない。女を見守っていると、女は袋をゴミ捨て場に捨てた。今日はゴミの日…

140字小説【ヒマワリ】

140字小説【ヒマワリ】

夫の遺言通りにヒマワリ畑を作った。私には太陽に向かって咲くヒマワリのような明るく優しい夫がいた。その夫に先立たれ独りになった私。やっと心の整理がついたある日、夫の好きだったカレーを作った。ふと窓の外を見ると、お腹を空かせた子どもがヒマワリの種を食べている。「カレー食べてかない?」

140字小説【目覚ましが鳴らなくて】

140字小説【目覚ましが鳴らなくて】

「珍しいね、何かあったの?」上司に遅刻の理由を聞かれ言葉に詰まる私。「目覚ましが故障したみたいで…いつもの時間に鳴らなくて…」家のすぐ近くを川が流れ、そこには鉄道橋が架かっている。「ガタン!ゴトン!」毎朝決まった時刻に聞こえる始発電車の走行音。もう何十年も私の目覚まし代わりだ。

140字小説【1日店長】

140字小説【1日店長】

変なスイッチが入った。「お前じゃ話にならん、責任者をだせ!」見覚えのあるタチの悪いクレーマー。でもバイトの女の子が泣きそうになっているのにキッチンの店長は知らんぷり。争いごとは嫌いだが放ってもおけない。売れない作家の僕は執筆の手を止めると急遽1日店長になった。「うちの子が何か?」

140字小説【失って得たもの】

140字小説【失って得たもの】

友人は職場の人間関係に悩み心を病んでいた。そこへ追い討ちをかけた仕事中の事故。友人は片腕を失った。物作りが好きだった友人は退院してからずっと引きこもっているという。ある日、心配した僕は友人の家を訪ねた。「ほら、フック船長みたいだろ?こっちはロケットパンチ」義手作りにハマっていた。

140字小説【見越していた夫】

140字小説【見越していた夫】

「夢のあるプレゼントをありがとう」それは私が生前の夫に伝えた最後の言葉。冷え込みの厳しい夜の高原。肩を寄せ合い満月を眺めていた。私と幼い娘を残し旅立った無念は察するに余りある。数年後、生活に困窮する私に富裕層から連絡があった。「あなたの所有する月の土地を私に売ってくれませんか?」