見出し画像

#413 「大人」になってく私たち

 元服とは、日本で成人を示すものとして行われた通過儀礼の一つです。その歴史は奈良時代まで遡ると言われ、おおよそ数え年で12 - 16歳の子どもが(諸説はあるそうです)、「大人」として扱われるようになりました。

 昔は現代よりも遥かに大人と子どもの世界が区別されていた時代。また、昔は幼い時に命を落とす子どもも非常に多かった。そのような時代の背景において、元服という儀式は、大人になるまで生きることができた奇跡と、より広い世界に出ていく門出を祝う大切な儀式であったと想像できます。

 本日1月8日は成人の日。国民の休日として設定されることが象徴するように、時代は変われど、新成人が「大人として」社会に出ていく日を祝う気持ちは変わらないのかもしれません。

 2022年の民法改正により、18歳が法律上の「成人」となりました。2016年に選挙権が20歳から18歳に引き下げられたことに加え、携帯電話の契約、ローンを組む、クレジットカードをつくる、一人暮らしの部屋を借りるなど親の同意なしに可能となっている。

 『成人年齢は18歳なのに 成人式では20歳が多い理由とは』という記事を見つけました。

 記事では、成人式の対象年齢を20歳に据え置きしている自治体が多い理由を分析。大分県国東市では「高校を出たばかりで実感がない」「お酒が飲めない」などと18歳での式典開催に不満が相次いだそうです。「法律上」の成人よりも、飲酒や喫煙など「エンタメ上」の成人の方が、成人式を楽しみにしているのかもしれません。

 一方、三重県伊賀市と宮崎県美郷町は18歳の成人式を継続するとのこと。参加者からは「大学に進学したばかりで経済的に苦しい」「18歳開催に反対する署名が多く集まったのになぜ強行したのか」といった批判もある中、「周りの大人たちに守られてきた子ども時代を終え、新成人たちが社会的な責任を持ち、大人の社会へ仲間入りすることを自覚する。また、社会が新成人を祝福し、成人として扱うことを確認する節目として行うのが『成人式』です」と説明しています。

 選挙権、契約など、私たちは年齢と共に多くの社会的責任を負って生きていかなければなりません。厳しいことを言うならば、人は本質的に「孤独」だからこそ、そのような社会的責任を全うすることで、誰かに助けてもらうことができるのです。一方、そのような社会的責任はある意味では、当たり前だからこそ、その価値や大きさに気づくことが少ない。日本の投票率が低いのも、民主主義という概念の重要性を認識していない結果だとも言えるでしょう。

 タバコや飲酒などのエンターテイメントの部分は、それをできることが決して「大人になる」ことではありません。もちろん、成人式を楽しむこと自体は良いことだと思います。親しい友達と少し背伸びをしながらお酒とタバコを楽しみながら、自分の未来について話し合う。それはいわゆる青春の1ページです。しかし、人生の本のページは確実に捲られていき、その先にある物語を良いものにするには、「社会的義務を全うする成人」であることが求められるのです。

 より自由に、より伸びやかに、社会的責任を自ら全うする
そんな新成人の皆様のご多幸を心より願っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?