誰も救われない昔話【「モモワロウ物語」感想】
1月15日にポケモン公式からアップロードされた動画、知られざる「モモワロウ物語」の感想です。
DLC番外編で詳しく語られることのなかったモモワロウのおはなし。まさかちゃんと語られるとは思っていなかったので意外や意外。
そして見てみると、たった5分の動画なのにしばらくモモワロウのことしか考えられなくなっていた。
なんて悲しい、誰も救われない物語なんだろう。
モモワロウの解像度がグッと上がるものの、好感度は上がったり下がったり。とても複雑な気持ちになる。以下、主観的な推測も含まれます。
モモワロウへ抱く感情
まず、愛おしさ。おじいさんおばあさんに可愛がられて喜ぶモモワロウは可愛く、愛おしかった。
共感。愛されたいという気持ちはよく分かるし、入念に準備する臆病さもよく分かる。それが分かるからモモワロウに感情移入してしまうのかもしれない。
あと、怒り。なんでくさりもちをおじいさんおばあさんに食べさせた?愛が欲しいからって、それで良かったんか?お前はもう十分過ぎるほど愛されていたんだぞ?
そして何より仮面を奪うな、オーガポンの幸せを奪うな。
あとは、悲しみ…?惜しみ…?他人の行動を見て「あーあ、こうすれば良かったのになあ」と思う感情。この感情の名前ってなんだ?
こういうことは自分が言われるのもあまり好きじゃないけど、そう思わずにはいられなかった。
くさりもち食べさせなければ良かったのに、と。
モモワロウとおじいさんおばあさん
おじいさんとおばあさんはモモワロウを我が子のように可愛がっていた。
最初動画を見た時は、モモワロウが受け取った愛に気付かなかったことが全ての始まりかつ最大の過ちだと思った。愛されていることに気付きさえすれば平和だったのに。
でもよく見ると「もっと愛されたい」だったから、愛されていることには気付いていたはず。
なら惜しむべきは欲望の際限のなさか、その手段か。
モモワロウは、愛に関しては常人より欲深かったのかもしれない。その欲深さがくさりもちの能力に反映されているんだと思う。
愛される手段について。モモワロウは、おじいさんおばあさんを支配することを選んだ。そこに躊躇はなかったのか。支配は勝手に人の気持ちを変えること、そうして得られるのは本当の愛じゃないとは思わなかったのだろうか?偽物の愛でも嬉しいのか?
ここで、番外編で見られたくさりもちを食べた人のキビキビ踊る様子を思い出してみる。
あのダンスは明確に支配って感じだった。でも昔話のおじいさんおばあさんには、その様子は見られなかった。
じゃあ、おじいさんおばあさんは支配されていなかったのでは?あのくさりもちは欲望を増幅する効果はあれど支配の効果はなく、おじいさんたちはただ美味しいもちをくれるモモワロウを余計に愛しただけだったのでは?
美味しいもちを食べてもらえて嬉しいし、欲望増幅も利用できる。
欲望を増幅させる→モモワロウがその欲望を叶える→感謝され愛される。そこで貰う愛は歪められていない本物だった。
という考察をしてみる。
どちらにしろモモワロウには、誰かを不幸にしたいという悪意は一切なかったんだよね。ただ愛されたいという動機が悲劇に繋がるの、悲し過ぎる。
モモワロウ一行とオーガポン
オーガポンたちの留守を狙って仮面を盗むことをともっこに命じたモモワロウ。これは弁解の余地はないと思う。盗みはダメだよ。
盗みが誰かの不幸に繋がることを理解していなかったんだろうなぁ。
モモワロウが仮面を盗もうとした理由はおじいさんおばあさんが仮面を欲しがったから。
おじいさんおばあさんが仮面を欲しがったのは、モモワロウのくさりもちで欲望が過剰に増幅されてしまったから。
そう考えると、番外編での印象からだいぶ変わったと言っても、同情できるとは言っても、愛されたい気持ちが根源で悪意はなかったとしても、やっぱりモモワロウが悪いのは自分の中で揺るぎないと思う。
誰も救われない
モモワロウは仮面も仲間も幸せも、全部失った。
ともっこたちもボコボコにされた。
男は命を落とした。
オーガポンは相棒の男を失った。
おじいさんおばあさんは、モモワロウが帰ってくるのを見届けることができなかった。
もし仮に、番外編でモモワロウが仮面を入手して帰ったとしても迎えるおじいさんおばあさんはもういない。
誰も救われない、悲しみしかない。
この物語を見て自分がしたのも「モモワロウが悪いじゃん」という追及…。決して良いものではない。こちらも救われない気持ちになっちまうよ。
教訓と吾妻道長
昔話には教訓がつきもの。
この話の教訓は、際限のない欲望は周りの人と自分を不幸にすることがある。たとえ悪意がなくても、ということか。
こうして考えてみて思い出したのが、特撮番組「仮面ライダーギーツ」に登場する仮面ライダーバッファ、吾妻道長の主張だ。
詳しい説明は省略するが、ギーツの世界は幸せの総量は決まっていて、誰かが理想や幸せを願うことで誰かが不幸になる世界。だから「何も願うな、今ある幸せだけを享受して生きればいい」と行動していたのが道長だった。
これ、モモワロウのおはなしに刺さりませんか?
モモワロウが「もっと愛されたい」と今以上を望んだことで全員が不幸になった。今の愛に満足できていれば全員幸せだった。大きい幸せではなかったかもしれないが、普通に幸せに暮らしましたとさ、で終われたはず。
モモワロウは「変わり映えのない暮らしに飽きた」と言われているから、遅かれ早かれ何かしら行動は起こしていたかもしれないが。
それでもオーガポンたちを巻き込むことにはならなかったと思う。
モモワロウが願わなければ…。
ここに来て道長の主張にもしかしたらそうなのかも、と考えさせられるとは思わなかったな。
結び
誰が悪いか明らかにする犯人探しをしたい、というあまり良くない気持ちも含め、色々な感情を抱えることになったモモワロウ物語だけど、そのおかげで一気にモモワロウのことが色んな意味で好きになった。
モモワロウ物語はくさりもちのような効果がある、美味しくも危険なおはなしでした。
ポケモン公式、最高ー!
おしまい
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?