見出し画像

#73 【怖い】巨峰etc.商標の価値が0になる「普通名称化」

こちらのnoteの内容は音声でもお聞きいただけます↓
https://stand.fm/episodes/605d4c254580c32d7672595b

第70回目の配信の「商標登録のデメリット」のなかで、
「商標の普通名称化」について、少し触れました。

この「商標の普通名称化」って、
実は結構怖いことなので、
この点について今日は解説します。

★商標の普通名称化とは?

まず「商標の普通名称化」とは、簡単に言うと、
本来は特定の人の商品やサービスであることを示す商標が、
その商品やサービスの一般的な名称であると認められてしまった状態を言います。
一般消費者だけでなく、その業界の業者さんのような取引者からも、
一般名称と認識されている状態ですね。

なぜこんなことが起こるのかというと、
不特定多数の人が、商品・サービスについて見境なく商標を使用してしまうことで、
特定の企業や人が提供する商品・サービスと、
その他の企業や人が提供する似た商品・サービスとの
区別がつかなくなるからです。

★普通名称化の例

普通名称化の具体例をあげますと、
まず有名なのは「エスカレータ」ですね。
デパートとかでよく乗る、自動で昇り降りできる階段式の装置です。
元々は、オーチスという会社の米国の登録商標でしたが、
みんなが同種の装置のことを「エスカレータ」と呼んだために、
普通名称化してしまいました。
今では、オーチス社以外の装置も、「エスカレータ」と呼ばれています。

また、大幸薬品の胃腸薬である「正露丸」も普通名称化の一例です。
今でも大幸薬品の名義で商標登録されたままですが、
裁判で「普通名称化した」と判断されています。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/386/033386_hanrei.pdf
(大阪地裁平成18年7月27日判決 平成17年(ワ)11663号)

試しにAmazonで「正露丸」と調べてみてください。
大幸薬品以外の「正露丸」がいくつか出てきます。
だから、ちょっと前の大幸薬品のCMでは、
「ラッパのマークの大幸薬品の正露丸」と毎回言っているんですね。
つまり、「正露丸」だけだと他と区別がつかなくなってしまうので、
差別化されたラッパのマークをつけて、
「大幸薬品のだよ」と見分けられるようにしています。

さらに、農産物の中にも普通名称化したものがあります。
みなさんご存知、ブドウの「巨峰」、これも登録商標です。
株式会社日本巨峰会というブドウの栽培に関する研究団体が、
今でも商標権を管理していますが、
同じ品種のブドウの一般的名称と認識されていると、
裁判でも判断されました。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/443/011443_hanrei.pdf
(大阪地裁平成14年12月12日判決 平成13年(ワ)9153号)

★普通名称化で商標の価値が0に

ここから先は

748字

¥ 300

サポート機能では、100円から1万円までの金額を自由に設定して、記事の対価としてお金を支払うことができます。日本の経営者や個人事業主、副業されている皆様に役立つ、知的財産の知識を楽しくわかりやすくお届けしています。ぜひ愛あるサポートをしていただけると嬉しいです!