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世のなかの、美しいもの、醜いもの

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偏愛するテーマを取りあげながら、おもむくままに綴ったエッセイ。
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記事一覧

アリストテレスとフロイトの娘のこと

アリストテレスによれば、「手はなんでもとったり、つかんだりすることができるから、なんにで…

手の肖像

何年か前、書店でなにげなく開いた雑誌で、カルステン・ソーマ―レン(Karsten Thormaehlen)…

手足に願いをかけて

ここのところ手や足のことばかり考えている。 なので、手足形の話でもしようかな。 福井県若…

糸を愛でる

糸が好きで、たくさんもっている。 手先が不器用なせいか、それともミシンとの相性が悪いのか…

カルタフィルスかもしれない人たち

「さまよえるユダヤ人」は作家たちの創作意欲をかきたてる題材のようで、彼の伝説を耳にした…

カルタフィルスの目撃情報

カルタフィルスは実在する(と信じるには創作じみている)目撃情報をいくつか紹介しようと思う…

カルタフィルスの話

カルタフィルスの話をしようと思う。 もしも老いることなく、死ぬことなく、何千年ものあいだ地上をさまよい続けているのだと語る人に出会ったとして。おそらく、たいていの人は気が狂ったと疑うか、笑い飛ばすか、呆れるだろうけれど、きっと、私なら信じてしまうと思う。 もともと呑気な性格だから、というのもあるけれど、そういう「たち」なのだからしょうがない。いつも目で見ていることと空想が入り混じっていて、現実を上手くとらえきれずにいるのだ。でも、現実なんて靴下の裏表みたいに簡単にひっくり返

プエラ・エテルナ(少女論4)

マリと森茉莉とアナイス・ニン。ここに私はシルヴィア・プラスも並べたい。ドラマティックな死…

アナイス・ニンのこと(少女論3)

周囲の讃嘆の眼差しを我物にしてきたモイラのような美少女を現実に知っている。奇しくも森茉莉…

モイラのこと(少女論2)

アナトール・フランスの『マリ』ついでに、もう一人のマリについても書く。 文豪・森鷗外に砂…

マリのこと(少女論1)

アナトール・フランスの『マリ』は、1886年にパリのアシェットという本屋から出版された『我々…

この世でもっとも美しく、残酷な本のこと(3)

とフランスの啓蒙思想家ルソーは書いている。 ここで近代思潮全体に影響を及ぼしたその教育論…

この世でもっとも美しく、残酷な本のこと(2)

マルグリット・オードゥー(Marguerite Audoux)というのがその本の作者の名前だと知ったのは…

この世でもっとも美しく、残酷な本のこと(1)

この世でもっとも美しい本を知っている。 夢さながらの美しい舞台で、詩のように意味深い言葉が綴られた、作者の深い愛憐が文章の隅々まであまねく行き渡っている、人間の善良さと正しさを信じていたくなる、そういう本を知っている。          〈少女〉は、(というのはこの本の主人公ことだけれど)あまり我慢強いとはいえない性格で、優等生というよりはお転婆で、思いこみが強く、つねになにかに困り果てていて、野を駆けたり、鳥と話したり、水に足を浸したりしては、やたらとため息をつく。どうして