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木島櫻谷の燕子花図 #48

『ライトアップ木島櫻谷 -四季連作大屏風と沁みる「生写し」』
泉屋博古館東京
2024年4月29日(月祝)


今日の一枚は、木島櫻谷「燕子花図」。

住友本家を飾るために描かれた。住友家としても自慢の品に違いない。

木島櫻谷 燕子花図 大正6年(1917) 泉屋博古館


当然に尾形光琳を意識した屏風であろう。


尾形光琳の燕子花は型紙を使ったと言われているが、そこまで意匠化されていない。花は一つひとつ描写されており、つぼみも混じる。


でありながら、リズミカルなところは失われていないのが面白い。


燕子花図(部分)


木島櫻谷の燕子花は、色がハッキリしていて、新品のような鮮やかさである。


この鮮やかさの源は緑である。

木島櫻谷の緑は独特だ。瑞々しくも、どこか不自然な緑。化学絵具なのだろうか。


この緑が、尾形光琳とは違う、新しい燕子花図を作り出しているように思う。

燕子花図(部分)


木島櫻谷の青には粉感がある。絵具の粉がそのまま固まったかのようだ。

この絵具は、見る角度によって色が変わる。屏風はギザギザにして立て掛けるため、同じ青でありながら色にバラエティが出てくるようだ。


この青には、何かキラキラするものも混ざっている。このキラキラも、色のバラエティに一役買っているであろう。


ところで、金と緑と青の組合せは、マティスにもあった組合せではないか。

アンリ・マティス 生命の木の習作


マティスの生命の木を見たとき、この3色の組合せに美しさを感じたのであった。

色の相性なのか、それとも燕子花の記憶ありきで感じたマティスの美しさだったのだろうか。



柳桜図は、木島櫻谷の独特の緑が遺憾なく表されている。瑞々しくも不自然な緑。この柳の瑞々しくかつ軽やかな感じと、桜の分厚い存在感が、よき対照をなしていて、とても美しい。

雪中梅花は、雪の白さと紅梅のコントラストが美しい。白に比べて紅はほんのちょっとなのに、十分なコントラストになり得ている。雪が梅に降り積もる感じは、三井記念美術館にある円山応挙のようであるが、積もっている雪の厚みは、木島櫻谷の方が圧倒的である。


竹林白鶴。福田平八郎が竹は緑でないと言ったのと対照的に、木島櫻谷の緑の竹が徹底的に意匠化されている。また、鈴木其一を彷彿とさせる流水。同じ青でありながら、そこまでグロテスクでないのは粉感のためか。


泉屋博古館東京



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