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長谷川等伯の松林図屏風 #39

『特集 博物館に初もうで 謹賀辰年(きんがしんねん)―年の初めの龍づくし―』
東京国立博物館
2024年1月6日(土)


東京国立博物館の年末年始の常設展の特集。なかなかの賑わいである。

新年の東京国立博物館 池の写りこみが美しい


今日の一枚は、長谷川等伯 松林図屏風。年末年始の特集で展示される。

靄がかかっており、とても静かで、とても湿っている。


長谷川等伯「松林図屏風」国宝 安土桃山時代 16世紀 東京国立博物館


安土桃山時代は狩野永徳や俵屋宗達らの豪華絢爛な印象が強いが、その真逆である。そんな時代に、この屏風を描くとは、何ということであろうか。

多くの来場者がこの屏風の前で佇み、じっと見つめている。そうしたくなる屏風である。

日本画には、描かないことで、描かれないものを描いている、そんな作品が多くあると思うが、その最高峰を見ている気になってくる。

山田五郎のオトナの教養講座(YouTube)に、「東洋の竜が飛ぶと聞き、飛ぶからには翼があるはずと、ドラゴンに翼を書き足した西洋」という話があったが、こういった合理主義とも真逆の話である。


康熙帝筆 楷書四字軸「龍飛鳳舞」中国清時代 1686年 東京国立博物館


清朝4代皇帝康熙帝の書。勢いがあり力強い。書は全然分からないのだが、皇帝らしい堂々とした書である。


曽我直庵「龍虎図屏風」右隻 安土桃山時代~江戸時代 17世紀 東京国立博物館


様々な龍が展示されていたが、この龍の顔は、最も王道な龍ではないか。爪は見栄をはっていて強い存在感を放っている。


伝陳容筆「五龍図巻」重要文化財 中国南宋時代 13世紀 東京国立博物館


昨年、台北の故宮博物院に行ったのをきっかけに、宋時代は中国文化の一つのピークであると知った。その宋の時代の龍。顔が日本の龍とだいぶ違う。


道入作「黒楽梯子文筒茶碗」江戸時代 17世紀 東京国立博物館


2024年1月、本館4室 茶の美術 がリニューアル。その初期展示は、特別展「本阿弥光悦の大宇宙」にちなんでいるとのこと。楽茶碗は独特の美しさがあってよい。この茶碗は背が高く、梯子の文があって、斬新である。


伊藤若冲筆「松梅群鶏図屏風」江戸時代 18世紀 東京国立博物館


なんと鶏の活動的なことよ。やはり、二本足ですくっと立つ鶏が最も若冲らしいと思ってしまう。点描の灯籠は、鶏の描写と全然異なり、かなりの異物感があるが、これも若冲ならでは、であろう。


十二代沈寿官作「色絵金襴手花卉文大瓶」 明治25年 1892年 シカゴ・コロンブス世界博覧会事務局


司馬遼太郎の小説「故郷忘じ難く候」の沈寿官である。十二代ということは、あの小説に出てくる沈寿官のお父さんであろうか。沈寿官には精密な透かし彫りのイメージがあったが、透かし彫りではないながら、精密さは驚くべきものがある。


渡辺省亭「雪中群鶏図」明治26年(1893年) シカゴ・コロンブス世界博覧会事務局


印象派のドガが欲しがったという渡辺省亭。渡辺省亭の美術展には行けなかったのだが、しれっと展示されているのがトーハクの凄いところなのではなかろうか。


真生流 山根由美氏 本館エントランスのいけばな


「博物館に初もうで」には初めて行ったが、一度は行ってもよいと思う。



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