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【第2弾】宅地建物取引士【④宅建を取得しても活かしづらいケースと、効率的な勉強法】

こんにちは。
都内でひっそりと生きる専業主夫です。


資格に合格することが目的になっている方も見受けられますが、私の観点では資格は活かしてナンボです。なぜなら、資格試験においてもお金と時間を投資しており、それを回収できるかどうかが重要と考えているからです。

最終回となる今回は、

  • 宅建の資格を取っても残念ながら活かしづらいケース

  • 効率的な勉強法

  • 合格基準点が変動する相対評価方式

  • 資格を取る目的

  • 受験のモチベーションを上げる教材

について、業界未経験で宅建を取得し、その後不動産業界で3年間の実務経験を持つ私の実体験をもとに解説します。

前回の記事はこちらからどうぞ。




④宅建を取っても活かしづらいケース

1.不動産業界以外の就職(転職)に活かしたい

確かに宅建を取ることで、就職(転職)の際に履歴書に書くこともでき、面接の際のアピールポイントにもなります。ただし、それは一般的に不動産業界に限る話です。住宅ローンの審査などで不動産の知識を求められることはあるので金融業界でも活かせる可能性もありますが、不動産関連の業務がある場合に限ります。

それよりも、金融業界であれば財務について学べる簿記2級や、金融の知識全般を学べるFP2級の方が宅建士より需要は高いと思います。特に簿記2級は不動産業界・金融業界のみならず汎用性が高い資格です。不動産以外の業界で活かすために宅建か簿記2級どちらを取るか悩んでいる方は、簿記2級を取ることをおすすめします。ちなみに、試験の難易度も同じくらいです。


2.不動産投資に活かしたい

不動産投資に興味があり、宅建を取りたいという方もいます。もちろん、宅建を取って損なことはありません。特に不動産投資界隈では、初心者を騙そうとする悪質なセールスを行う会社が非常に多いことで知られており、そうした営業マンに対しての牽制にもなります。

2017年に起きた「積水ハウス地面師詐欺事件」

2018年には「かぼちゃの馬車事件」と呼ばれる銀行・不動産会社・建設業者がグルになり、不動産投資家(「かぼちゃの馬車」と呼ばれるシェアハウスのオーナー)に総額1,000億円以上の被害を与え、大きな反響を呼んだ不動産投資詐欺事件がありました。
(私は以前、こうした不動産詐欺で割高な価格で掴まされた被害者の救済にも携わっていたので、詳しくはまた別の記事で取り上げたいと思います。)


言い方は悪いですが、「詐欺はバカな人が騙される」と思う人もいるかもしれません。しかし、この事件の被害者の多くは副収入を得たい大手メーカーの管理職、銀行員、医者、パイロットといった、ある程度の社会的評価を得て、一定以上の見識のある人たちです。

上の画像の「積水ハウス地面師詐欺事件」は、2017年に積水ハウスの担当者が地面師(※)グループに土地の購入代金として55億5千万円を騙されています。

※地面師(じめんし)とは、土地の所有者になりすまして売却を持ちかけ、多額の代金を騙しとる不動産をめぐる詐欺の手口の一つ、またはそうした手口の詐欺師のことです。

出所:司法書士八木岡事務所

大手不動産会社の担当者でさえも騙されるのですから、宅建を取ることで不動産投資に活かせると盲信することは危険だといえます。株取引といった一般的な投資に比べ、不動産投資は実務経験などが問われる投資手法です。そのため、素人はそもそも手を出さないことをおすすめします。


なお、不動産投資詐欺のみならず詐欺は年々巧妙化しており、最近ではFacebookやInstagramなどのSNS広告により詐欺被害に遭う方が急増しています。

私も20代の頃に投資詐欺に遭ったことがあるのですが、警察や弁護士に依頼しても基本的にお金は返ってこないと思った方がいいでしょう。さらには残念なことに、回収できる見込みがないにもかかわらず回収できますと謳い、高額な着手金を騙し取る悪質な弁護士も増えており、さらにお金を失う二次被害に遭う方が後を絶ちません。


⑤効率的な勉強法と、合格基準点が変動する相対評価方式とは

宅建試験では「宅建業法」「法令上の制限」「税・その他」「権利関係」の4科目から計50問出題されます。内訳は以下の通りです。

宅建試験科目の出題順と出題数

大半の資格試験においては科目ごとの出題数が決まっています。そして、出題数が多い科目を重点的に勉強して得点を稼ぐことがセオリーになります。上記は実際の試験で出題される順番ですが、出題数の多い順に並べると以下になります。

①宅建業法→20問
②権利関係(民法など)→14問

③法令上の制限→8問
④税・その他→8問

宅建試験の合格基準点はここ数年は上昇傾向にあり「35~38点」程度、得点割合にすると「70~75%」程度の正答率で合格となります。宅建業法と民法の2科目の合計が34問なので、この2科目をマスターできれば合格基準点をほぼカバーできることになります。そのため、初学者はこの2科目を重点的に勉強していきましょう。なお、合格基準点と合格率について、直近10年間の宅建試験の実施概況は以下となっています。

出所:一般財団法人 不動産適正取引推進機構

ちなみに私は令和2年度の10月試験で一発合格したのですが、その回の合格基準点は「38点」であり、75%以上得点する必要がありました。ここ10年間だけではなく、過去全体で最も高い合格基準点となっているのですが、だからといって問題が難しいとは限らないのが宅建試験です。

それは合格率に現れており、直近10年間の合格率の中で2番目に高い17.6%となっています。これでも、10人中2人も受からない難易度ではあるのですが、その年の12月試験の13.1%と比べると高い合格率だと分かります。

これは宅建試験が相対評価方式を取り入れていた試験であるためです。上の画像を見て分かるとおり、毎年合格基準点が変動しています。これは、毎回の合格率を同水準(15~18%程度)に調整するためです。

実際に過去問を解いてみると「他の年に比べて問題が簡単だな」と感じる年があると思いますが、簡単な問題(基礎問題)は他の受験者も同じように得点するため差が付かないことから、合格基準点が高くなる傾向があります。

そして、基礎問題だけを解いて合格できるのであればこれほど合格率は低くなりません。過去問を解いた経験上、基礎問題の割合は6割(30問)程度ですので、基礎問題は確実に得点し、+αで他の受験者が間違えやすい応用問題も数問解けないと合格圏内に入ることができないということになります。


科目の話に戻りますが、出題数の多い宅建業法と民法だけを勉強すれば合格できるというわけでもありません。年によっては、出題数の多い宅建業法と民法は応用問題が多く、出題数の少ない他2科目は基礎問題が多いということもあります。そのため、4科目満遍なく勉強するに越したことはないのですが、限られた時間の中で勉強する以上、優先順位を付けて勉強するといいでしょう。

ちなみに私の例でいうと、得点源とされる宅建業法で20問中14点程度しか得点できず(宅建業法は最低でも16~18点は取るべきとされる)に不合格を確信したものの、難しいとされる民法を14問中12問正解できたことで合格基準点ギリギリの38点で合格しました。元々公務員試験を受験しており、法律科目を得意としていたことからアドバンテージを得られました。


このように、宅建試験の怖いところは相対評価試験のため、合格発表当日になるまで合格基準点が分からないということです。試験後は各予備校が合格基準点を発表するのですが、中には38点以上と予想する予備校もあり、当日まで気持ちが休まることはありませんでした。当日合格基準点が「38点」と見た時、人生でこれほどまでに「1点の重み」を感じたことはありません。


⑥資格を取る目的と、おすすめの教材

今回は資格シリーズ第2弾ということで「宅地建物取引士(宅建)」について4回に分けてお届けしました。冒頭にも申し上げましたが、資格は合格して終わりではなく実務などで活かしてこそだと私は思っています。

参考までに、宅建試験において合格までにかかる一般的な勉強期間は半年程度、費用は5~10万円(予備校、通信講座など)となります。これは決して安い投資ではありません。

私の元職場の同僚は一発で合格することができず、5年以上も勉強し、予備校にお金を払い続けています。宅建試験は年に1回(令和2・3年度は例外的に年2回)しかありません。不合格の場合、また1年先の試験を見据えて勉強し続ける必要がありますが、人間の集中力はそう長くは続きません。

大学受験でも同じことが言えますが、浪人すると現役の時に受かったレベルの大学に落ちることもあります。宅建においても「ここまで時間とお金をかけたのだから」と諦めきれずに毎年受験をし続ける人も多いです。過去に経験された方であれば分かると思いますが、大学受験でも資格試験でも、最も集中力が維持できるのは現役(1回目の受験)の時です。


宅建を受験者層で多いのは社会人です。勉強だけに集中できる学生時代と違い、社会人であれば仕事や家事の合間を縫って勉強する必要があります。そのため、「宅建がどうしても取得したい!」という人は1回目の試験に全力で取り組むことをおすすめします。逆に「これほど時間とお金を投資してまで合格する必要はない」という方は撤退(損切り)することも英断です。

資格を取ることを目的とせず、資格を取った先を見据えて勉強するときっと勉強にも身が入ると思いますよ。



最後に、不動産についてより分かりやすく勉強したい方は「正直不動産」というマンガを強くおすすめします!法改正により以前よりは厳しくなったとはいえ、未だ悪習が蔓延し悪徳業者も多い不動産業界の現状にメスを入れたマンガであり、最新のトレンドについてもカバーしています。

法律や過去の事例などがつらつらと書かれた、よく眠れそうな分厚い専門書を読むくらいなら、このマンガを読む方が圧倒的に勉強になります。不動産仲介などの実務や、不動産投資に携わる方にもおすすめできる良書です。

私物です。全巻保有しています。

山下智久主演でNHKでドラマ化もしているのでそちらを見ても良いのですが、個人的には手元に置いて何度も読み返せるマンガの方がおすすめです。ちなみに、私もクラウドワークスなどで不動産関連の記事を執筆する時には、正直不動産を読んで復習してから取り組んでいます。

残念ながら、このマンガを読むだけでは宅建には合格できませんが、きっと勉強のモチベーションにはなると思いますよ。



それでは、今回はこの辺で失礼します。

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