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ファンサービスをしない監督 落合博満は野球ファンに何を与えたのか 第49章

落合が中日監督時代のベストナインに選んだ投手は川上憲伸

最近、落合自身が自らのYouTubeチャンネルで監督時代を数多く語っている。

その中で私が注目したのは、中日監督時代のプロ野球ベストナインを選ぶこの動画だ。

中日選手だけを選ぶのではなく全球団から選ぶとあって、他球団の選手も選出している。
実際のプレーをあまり見てない選手を選ばず、好き嫌いでも選ばないところが落合らしい。

その中で、落合が投手として選んだのが川上憲伸だった。
理由は、監督時代、最多勝を2回獲得しているから。

そうすると、吉見一起も、落合の監督時代に2回最多勝を獲得しているじゃないか、と反論もあるだろう。

落合は、かつてラジオ番組のインタビューで、「8年間でエースと呼べる投手は?」と聞かれて「川上と吉見」と答えている。

理由は「負け数が少なかったから」「必ず貯金をしてたから」「続けて年数投げてたから」。

かつて落合は、エースの条件を聞かれ「どれだけ貯金をできるか」だと答えている。
そして、吉見一起には「5年2桁勝利を上げれば、エースとして認める」と告げていた。

川上憲伸に対しては、投げては好投し、打っては勝利打点を挙げて勝った試合を称賛していた。

落合の見解を踏まえて、川上憲伸と吉見一起の成績を比較してみると、こうなる。

川上憲伸(2004年~2008年の5年間)
2004年:17勝7敗(+10)、防御率3.32 最多勝、優勝
2005年:11勝8敗(+3)、防御率3.74
2006年:17勝7敗(+10)、防御率2.51 最多勝、最多奪三振、優勝
2007年:12勝8敗(+4)、防御率3.55 日本一
2008年:9勝5敗(+4)、防御率2.30 五輪での離脱期間あり

吉見一起(2008年~2011年の4年間)
2008年:10勝3敗(+7)、防御率3.23
2009年:16勝7敗(+9)、防御率2.00 最多勝
2010年:12勝9敗(+3)、防御率3.50 優勝
2011年:18勝3敗(+15)、防御率1.65 最多勝、最優秀防御率、優勝

これを見ると、2人のエースとしての成績にほとんど差はない。
そして、落合が言うように、ローテーション投手としてすべての年で貯金を作っている。
川上と吉見は、相手チームにほとんど先制点を許さず、ほとんど逆転も許さない投手だったことが分かる。試合の流れの中で、勝ちパターンに持ち込める、負けない投手だったのだ。

負け数が少なく、必ず貯金をし、続けて年数投げる。
という落合がエースとして認める条件を満たしているのは、中日では明らかにこの2人だ。

それでも、落合がエースとしてどちらを選ぶかを考えたとき、川上になるのは、川上にプラスアルファがあったからだろう。

それは、2004年・2006年・2007年と3回に渡ってゴールデングラブ賞を獲得した守備力。そして、5年間で35安打、4本塁打を放った打撃力。

吉見が4年間でゴールデングラブ賞なし、打撃でも13安打、0本塁打に終わっているのと比べると、川上が総合力で少し上という判定になるのだろう。

改めて川上と吉見の成績を見てみると、落合がエースとして評価するのもうなずける。

吉見が故障した2013年以降、2022年現在に至るまで、中日に「負け数が少なく、必ず貯金をし、続けて年数投げる」投手は現れていない。

それが如実にチーム成績として表れているところが興味深い。

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