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名曲に新たな命を吹き込む ~畑中摩美「壊れかけのRadio」~

名曲は、歌い継がれて何度も生まれ変わる。

畑中摩美がカバーした「壊れかけのRadio」を聴きながら、名曲が永遠である理由を実感した。

「壊れかけのRadio」は、徳永英明が制作して歌い、1990年に大ヒットした。
今でも徳永英明と言えば、「壊れかけのRadio」と答える人がほとんどだろう。

本人もずっと歌い続けているほか、数々のシンガーがこの楽曲をカバーし、歌い継いできた。

そして、発売から29年たった今も、尚、歌い継ぐシンガーが生まれている。

私は、この楽曲が描く世界観が好きだ。少年時代と大人の今を対比しながら、本当の幸せとは何かと繊細に問い続ける世界観が。
この楽曲は、大きくとらえると、Aメロとサビの構成になっていて、サビの後半だけ大人の今を描く。

興味深いのは、Aメロの少年時代の回想では「ラジオ」と歌い、サビ後半の大人の今は「Radio(レディオ)」と歌っているところだ。

純粋で夢に満ちた少年時代と、人ごみに紛れて世間ずれして悩み多き今。その対比を徳永英明は、心境や情景だけでなく、ラジオの呼び方でも表現した。

そんな名曲中の名曲を、畑中摩美は、デビュー20周年の今、弾き語りでカバーして、楽曲に新たな命を吹き込んだ。

黒いラジオを意識させる黒い衣装と、ウィスパーボイスで始まる迫真の歌唱により、楽曲の新たな魅力を引き出している。
鳥肌が立つほどの名演だ。

歌は、メロディー、リズム、詞、歌声、演奏のすべてがうまくかみ合うと、圧巻の世界観が体現できる。
デビューしてからの20年間、畑中摩美が突き詰めて、極めようとしてきた音楽の世界の一端がこの「壊れかけのRadio」からは、確かに感じ取れる。

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