畑中摩美「もってるものでやるしかないじゃん」レビュー ~あきらめの境地と自分らしさの鍛錬~
畑中摩美の「もってるものでやるしかないじゃん」は、自分がどう生きるべきかを考えさせられる歌だ。
最近の私の座右の銘になっていると言っても過言ではない。
人は、誰しも輝かしい才能に憧れを抱く。
たとえば、野球をやっている人の多くは、大谷翔平に憧れを。テニスをやっている人の多くは、大坂なおみに憧れを抱く。
私も、ソフトボールをやっていた子供の頃、落合博満に憧れを抱き、あんな選手になりたいと思っていた。
でも、落合博満にはなれない。そう悟ったのは、わずか数年後だ。
ほとんどすべての人は、自分が好きな分野の頂点に立つ大天才に憧れ、そして、憧れの人になろうとして、いずれあきらめなければならない。
永遠に憧れの人そのものになることはできないのだ。
しかし、自分には憧れの人が持ってない能力も持っている。人は、それぞれ個性を持ち合わせているから、落合ができないけど、自分ができることだってあるのだ。
そうやって、自分が周りの人よりも優れているなと感じる能力を磨いて、いくつかを組み合わせていけば、誰もが真似できない自分独自の才能が開花する。
大抵の人は、自分の優れている能力に気づかずに、あるいは、その能力をどこにも発信せずに、ずっと蓋を閉めたまま一生を終えてしまうのだと思う。
世間体やしがらみの中で、平均的な普通の人生を歩んでしまう。そんなステレオタイプが最も生きやすい世の中だから。
やりたいことと、やっていることが一致していなくても、我慢して生きていく。
大抵のサラリーマンは、そんな生活だろう。
「もってるものでやるしかないじゃん」は、憧れの人になれなくて苦しむ人、手の届かない恋をして失恋した人、我慢して普通の生活を送る人に贈る応援歌だ。
憧れの人には永遠になれない。憧れの恋には永遠にたどり着けない。しかし、自分の優れている能力、他人が認めてくれる能力を組み合わせて磨けば、宝石のように輝き、人生を豊かにしてくれる。
憧れの人になろうとするのはあきらめよう。その代わり、自分のもっているものを活かして、自分にしかできない才能を作り上げよう。
畑中摩美は、この歌をリズミカルに明るく、そして、優しく励ますように歌い上げる。あきらめの境地と自分らしさの鍛錬。
この歌には、幸福に生きるヒントが詰め込まれている。
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