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平成の音楽を振り返る⑥ ~女性シンガーソングライターが注目を集めた平成前半~

 平成の前半は、女性シンガーソングライターが注目を集めた時代だった。

 昭和から人気があった松任谷由実、中島みゆき、そして、平成になってから人気が出たプリンセスプリンセス(奥居香)、DREAMS COME TURE(吉田美和)、広瀬香美、大黒摩季、Kiroro、岡本真夜、宇多田ヒカルら。彼女らは、自ら作曲した楽曲でミリオンセラーを生み出した。

 その一方で、曲を提供してもらう、もしくはバンドメンバーに作曲にしてもらい、ミリオンセラーを出すボーカリストも多かった。
 ZARD、中山美穂、安室奈美恵、篠原涼子、trf、globe、Puffy、華原朋美、JUDY AND MARY、相川七瀬、今井美樹、SPEED、Every Little Thing、MISIA、倉木麻衣、浜崎あゆみら。ビーイング勢や小室ファミリーを中心に、プロデュース側にも注目が集まった。

 当時、自作派と他作派に2分化していたものの、世間ではその違いがあまり意識されていなかったように思う。
 シンガーソングライター、ボーカリスト、アイドルといった枠組みがあいまいな状態になっていたのだ。

 平成の中盤からは、アイドルの枠組みにぴったりはまるモーニング娘。やAKB48が出現して、アイドル全盛期が訪れたが、平成の前半は、そんなタイプのアイドルにとっては厳しい時代だった。

 平成の前半は、カラオケが大きな娯楽として成り立っていたから、いい曲ならメディアのタイアップがあれば必ずと言っていいほど売れていた。メロディーやリズムが歌手の外見以上に注目された時代。
 多くの人々が名曲を求めていて、毎週のように、ミリオンセラーが誕生するほどの盛況が訪れた。
 毎週、ヒットチャートの動きを見るのが楽しかったものである。

 ただ、1アーティストが連続してヒットを出すには、安定して名曲を発表できて、さらに高い歌唱力も必要だった。
 そのため、一時的に高い人気を誇っても、それが長期間にわたって続くシンガーはかなり少なく、人気の移り変わりが激しかったのも事実である。

 長年高い人気を誇っている、数少ない存在を数え上げるとすれば、松任谷由実、中島みゆき、DREAMS COME TURE、安室奈美恵、宇多田ヒカルあたりだろうか。

 松任谷由実は、日本で初めてアルバム200万枚売上を達成したし、中島みゆきは、1970年代、1980年代、1990年代、2000年代の4世代に渡ってシングル1位曲を出した。

 DREAMS COME TRUEは、日本で初めてアルバム300万枚売上を達成し、安室奈美恵は、デビューから引退するまで常に安定した人気を誇った。宇多田ヒカルは、驚異のアルバム800万枚売上を達成している。

 こう見てみると、自ら作曲したミリオンセラーを出さず、長年にわたって人気を維持し続けた安室奈美恵は、特別な存在である。

 私は、平成前半の女性シンガーが出したミリオンセラーは、そのすべてが名曲であったと感じている。

 しかし、今のミリオンセラーは、特定のアイドルに偏っていて、楽曲を制作する前から既にミリオンセラーが決まっている。
 アイドル自体の人気のみで決まるミリオンセラーに、ヒットチャートを見る楽しみは全く感じない。

 その反面、いい曲は、YouTubeやTwitterなどのSNSで話題になって、クチコミで広がるようになった。しかし、CDの売り上げには反映されず、無料動画やダウンロード、ストリーミングで楽しむ時代になってきた。

 昨年、若い女性シンガーソングライターのあいみょんが注目を集め、その作曲センスが高く評価されつつある。
 時代は、振り子のように流行が行ったり来たりする。アイドル全盛期に陰りが見える中、新元号の時代には、再びシンガーソングライターの時代が訪れるのだろうか。


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