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おくだったりおぐだったり@円盤に乗る場、NEO表現まつり

西尾久で「NEO表現まつり

演劇プロジェクト”円盤に乗る場”のNEO表現まつりに参加した。
会場は荒川区の西尾久の界隈で、都電だと"小台”からすぐの商店街に点在する。チケットを取った演目はおぐセンターというカフェの二階の劇場。演劇やダンスのほかライブもやるみたい。劇場に入るとカフェの喧騒が上がってくるのだが、仕込み音源かと思うほど町中臨場感が絶大。見えない喧噪は、すぐ下はリアルワールドだけれど、階下の平和なお喋りからは隔離された劇場空間にいる異世界感が強調される。

前から気になっていた『ほぐしばい 〜実話怪談編〜』辻村優子のダンスを観る。雰囲気怪談みたいな、誰かが経験した、やや怪異な体験談を朗読しながら、踊る。踊りは話の内容とリンクしてはいないもよう。あたかも一人の体の中に物語系とダンス系二つの主体があって、お互いにけん制しあっているような、人体の状況としては珍しい表現を一時間ほど凝視する。バーバルな情報と、ノンバーバルな情報が勝手気ままに流れ出てくる、その統合できない方向性で心も頭も違和感でいっぱいになる。それとも、誰かの経験談を朗読している、考えて話しているのではないから、朗読はダンスなのか。一人の人間が二つのダンスを二重写しに踊る方法なのか。

同じプログラム枠で散策者の『西尾久を散策した』も観る。これは辻村さんの演目から続いて舞台の切り替え、設営が始まるが、継ぎ目がない。仕込みで入ってくるスタッフは素なのか演技なのか境目がなく、客入れ(もう入っているけど)から開演告知まで一続き、いつのまにか始まっている、語られることを追って、描かれている関係や場の構造を読み解こうとするが、うまくいかない、追いかけて見失う。演者のエネルギーに押し流されてしまう。気になったのは、窓に貼っていた薄い暗幕で、薄くて軽いが恐ろしく遮光力が高く、何度も触ってしまった。どこで売っているのだろうか?演劇の内容は、タイトルとは関係がなかったようで、この劇団の文脈を理解していないと、わからないのかもしれない。

そのあとイベント?”お悩み聞かせて庭”に参加して俳優のたちくらようこさんと端田新菜さんに悩みを聞いてもらう。演劇公演ではないけれど、相談をする人、相談をされる人という役割で話をする。人の話を聞く、人に話をする、という行為を意識してやってみるという場で、演劇的に開いた雑談だった、相当面白い。オープンダイアローグに関心があるお二人。

予約していったけど、実はあんまり悩みもなくて都合雑談になる。百戦錬磨の現役演劇人と演劇について雑談するなんて贅沢でしょう。でもこんな機会もあまりないだろうから、アマチュアは観客として以外にどういう風に演劇と関わったらいいのかしらんみたいなこととか、プロの演劇人はどうやって仕事をしているのか、小学生みたいな質問にも快く応えてくださって、実に鷹揚な方々。いろいろお話できて楽しみが爆増してしまった。

”円盤に乗る場”の軒下で話し込んでいると、前の道を人がどんどん通る、ご近所の年配の方とか、小学生とか、気軽に「何やってるの?テレビ」とか聞いていく方も、3人の大人が放談している感じが「ボクらの時代」っぽいと言えばそういう感じも。どういう奇跡なのか俳優の矢野昌幸さんまでもが通りかかる。西尾久のグルグルした磁場に引き込まれてくるんだかね。