滋賀に女子旅
2か月ほど前、滋賀に遊びに行ったんですけど、その時ちょっとおしゃれな喫茶店に入ったんですよね。
その日は恐ろしく天気が悪くて、外で何かするってのが難しいような感じやったんですね。まぁでもせっかく来たしってんで、びわ湖のほとりにある、ちょっとおしゃれな喫茶店に入ることにしたんですよ。あれですよ、コーヒーが1杯700円する系の、オーガニック推しのやつです。俺の対義語です。
んで入ると、ナチュラルなテイストの店内に、琵琶湖の見えるボックス席がふたつと、真ん中にテーブル席がひとつとこじんまりした感じなんですね。すでにボックス席にはお客さんがいた事もあって、真ん中のテーブル席に通されました。
コーヒー700円の文字に、「ちょいとお姉さん…あっしの地元ではコーヒーは400円と相場がきまっちょるんでごわすが…なんかのまちげぇでわ?」と声をかけそうになるのをぐっとこらえ、店員さんを呼びます。ちょうどお昼時と言う事もあって、パンの間にカツが挟まったスペシャルサンドとコーヒーを注文し一息ついていると、隣のボックス席が目についたんですよ。
そこの席には、女子旅でもしてるのかなって感じの女の子が3人座ってたんですよ。一人は携帯をみて、他の二人は携帯を見ている人を眺めながら、話をしてるんですね。
「京都まで5分だって~やばくない?」
携帯を見ている人がそういうと、「ちかいですね!」だの「雨だし行っちゃいます?」だの、二人が敬語で追随してくる。おそらく関東圏から来た、先輩後輩で女子旅をしている3人組なんだろうと思う。
「生ゆばだってぇ~やばくない?」
携帯を見ている人の声に「いいですねぇ~」だの「食べたい!」だの全乗っかりする2人。わざわざ関東から遊びに来て、こんな雨は災難だなぁなんて思っていると、店員さんがスペシャルサンドを持ってきたんですね。
「お待たせしました。スペシャルサンドでーす。」
見ると、4枚切りくらいの太い食パンに、10cmはあろうかという太いカツが挟まっている、特大サイズのサンドイッチ。思った以上のボリュームにテンションが上がっていたんですけど、なんか変なんですよ。
目の前のスペシャルサンドは、もちろんめちゃくちゃおいしそうなんです。ただ、雰囲気がなんかさっきと違うんですね。空気感が違うというか。さっきまでの、ふわっとした雰囲気から、ちょっとピリッとした感じというか、なんかちょっと張り詰めた感じがするんです。
見渡すとすぐにわかりました。
なんか知らんけど横の女子旅、俺の飯見てドン引きしてやんの。
女子三人とも俺の飯をしっかり見て、目をかっぴらいてドン引きしてんすよ。さっきまであんなに楽しそうに談笑していたのに、だれも一言も話さず、完全に俺の飯を見てるんすよ。
普通に綺麗なおねえちゃんが、
この顔ですよ。
楳図かずおのテイストで、俺のカツサンドを見てましたからね。
俺も状況がつかめないまま、とりあえず一旦コーヒーに口を付けます。
なんであの子たちはドン引きしてるんや?
なんか俺、変なもん頼んでるんか?
俺にはカツサンドに見えてるけど、もしかして六法全書やったりする?
色々なことを考えていると、女子旅がひそひそと話してるのが聞こえてくるんですね。
「あれ…すごいね…」
「ですね…」
「ちょっと無理じゃない?」
「ですね…」
なにが?どれが?
せめて、聞こえないように言って。
「私あんまり食べれないから…この前も餃子食べに行ったんだけど、全然食べれなくて…」
「わかります!私も白いご飯と餃子とか食べれないです!」
「よね!私も1個が限界!!」
新しい陰口で攻撃をしないでくれ。
餃子一個しか食えねぇ奴は、一生クラムチャウダーでも飲んどけ。
彼女達がその後どこに行ったのかわかりませんが、おそらくおしゃれなどこかに行ったのでしょう。結局滋賀を選んだ時点で、君たちがドン引きした僕と同じダサさを持っているんだよ、と心で諭しながら、おいしくカツサンドを食べたのでございました。
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