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「漫画村」は出版権侵害!

海賊版サイト「漫画村」の元運営者に対し、東京地裁は17億円余りの損害賠償を命じました。

「漫画村」とは、『ONE PIECE』など人気漫画を多数無断掲載したサイトです。いわゆる「漫画のただ読み」サイトであり、被害額は3200億円にも上ると推定されています。
類似のサイトは後を絶たず、社会に与えた影響は甚大です。

漫画村の元運営者には懲役3年の有罪判決がすでに確定しています。それに加え、KADOKAWA、集英社、小学館の大手出版3社が19億円余りの損害賠償を求めており、この判決では出版社の「出版権が侵害された」という判断が下りました。

出版権とは何でしょうか?

著作者(著者)が出版社に対して設定する権利です。出版権を設定すると、出版社が出版権者となり、第三者が著作物(漫画など)を複製したり、公衆送信したりすることに対して、差止、損害賠償請求ができます。
インターネット上に漫画をアップロードすることは、出版社の複製権や公衆送信権の侵害になるので、「出版権の侵害」という判断が下りました。

「原作のまま、記録媒体に記録された著作物の複製物を用いて公衆送信を行う」という難しい文言が著作権法80条1項に規定されています。
漫画を原作のまま媒体にコピーし、これをアップロードする行為はこれに当たります。

出版権者はこの権利を「専有」できるので、他者がこれを行ったら差止請求や損害賠償請求ができます。

海賊版については著者の複製権のみが着目されますが、「漫画村」は漫画を無断でアップロードしたサイトであるため、他人の漫画を無断で電子書籍として出版したも同然であるといえます。出版行為ではないにもかかわらず、「出版権の侵害」と判断された点がこの事件の興味深さです。

ネットの発達、電子書籍という出版形態の出現により、紙の書籍では想像もし得なかった事態が起こっています。正式な出版ではなくても、「ただ読みサイト」をつくることにより、無断で電子書籍を出版し、これを無料で購入させるに値する被害が発生しています。今回の「出版権の侵害」の判断は、このような事態の試金石になるともいえるでしょう。

参考サイト

弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
翻訳家、執筆家、弁理士(奥田国際特許事務所)
株式会社インターブックス顧問、バベル翻訳学校講師
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)英検1級、専門は特許翻訳。アメーバブログ「英語の極意」連載、ChatGPTやDeepLを使った英語の学習法の指導なども行っている。『はじめての特許出願ガイド』(共著、中央経済社)、『特許翻訳のテクニック』(中央経済社)等、著書多数。