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10分でわかる知財最新事情

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弁理士で翻訳家である奥田百子氏による知財最新事情のコラム。2024年は「英語で語る日本の特許出願実務」から内容を変更し、特許、商標、著作権など知財にまつわるトピックスをお届けいた… もっと読む
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記事一覧

博報堂がAIとの対話における仲介装置の特許取得

博報堂がAIとの対話における仲介装置の特許取得

(株)博報堂がAIに関する興味深い特許(7445108号)を取得しました。
人間とAIが会話する過程で、その仲介装置が人間(ユーザ)に対して広告を不自然でない形で提示するという技術です。

ここでいうAIの典型はChatGPT(OpenAI社)です。ユーザとChatGPTが対話する際に、ある広告を自然な流れで表示できるように、仲介装置がChatGPTに指示を出します。

この特許明細書に挙がってい

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AIが発明者と認められないとの判決が出る

AIが発明者と認められないとの判決が出る

AI発明に関して画期的な判決が出されました(令和5年(行ウ)第5001号、東京地裁)。

AIを発明者とすることは認めないという裁判所の判断です。これは国際出願(PCT/IB2019/057809号)で日本に移行された特許出願(2020-543051号)です。

発明者の欄には、「ダバス、本発明を自律的に発明した人工知能」と記載されていました。特許庁は、この記載は認められないとして、「自然人の氏名

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左向きのワニ商標に対してラコステが勝訴

左向きのワニ商標に対してラコステが勝訴

ラコステといえば、右向きのワニのマークで有名ですが、これを左向きにした中国ブランド「カルテロ(CARTELO)」があります。

この右向きと左向きのワニマークの争いには、長きにわたる歴史がありますが、今回やっと決着がつきました。

カルテロのワニマークは中国で商標登録もされており、これに対してラコステが無効の訴えを起こしましたが、これが退けられたこと、

ラコステはこの企業に対し、商標権侵害である

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相次ぐ無断転載

相次ぐ無断転載

無断転載の事件が相次いでいます。

デーリー東北新聞社の外部執筆者である短大准教授が、東京都内の会社がセミナーで配布した資料の一部を盗用した事件

近江八幡市が子ども・子育て会議で配布した資料の表紙に、インターネットからダウンロードした写真やイラストを無断掲載

http://shigahochi.co.jp/inf.php?type=article&id=A0040741

つくばエクスプレスを

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正露丸 商標の歴史

正露丸 商標の歴史

「正露丸」の商標について面白い記事を見つけました。

この商標は大幸薬品の商標ですが、実は一般名称であり、どの企業も使えるという事実があります。
しかしそのように言いつつも、「正露丸」の商標は登録されています。

J-PlatPatで調べると、「正露丸」商標は大幸薬品によって数多く登録されていますが、「和泉正露丸」が和泉薬品により登録されています。

これは「正露丸」の言葉が一般名称であることを示

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「漫画村」は出版権侵害!

「漫画村」は出版権侵害!

海賊版サイト「漫画村」の元運営者に対し、東京地裁は17億円余りの損害賠償を命じました。

「漫画村」とは、『ONE PIECE』など人気漫画を多数無断掲載したサイトです。いわゆる「漫画のただ読み」サイトであり、被害額は3200億円にも上ると推定されています。
類似のサイトは後を絶たず、社会に与えた影響は甚大です。

漫画村の元運営者には懲役3年の有罪判決がすでに確定しています。それに加え、KADO

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生成AIによる脚本朗読のイベント中止

生成AIによる脚本朗読のイベント中止

今回も生成AIの話題です。

生成AIにより創作された脚本を人気声優が朗読するイベントが中止になりました。未だに生成AIによる創作には批判が強いようです。

これは、有料版のChatGPTにアイディアを出し、脚本を書かせ、これを人気声優が読み上げるイベントでした。しかし、AIによる創作は「盗作」「ただ乗り」という批判が強く、このイベントを決行すると声優にも迷惑がかかるということで、中止を決行したそ

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生成AIによるイラストの著作権問題

生成AIによるイラストの著作権問題

生成AIによるイラストが著作権侵害のおそれがあるため、海上保安庁がリーフレットの配布と掲載を中止しました。問題の画像は次の通りです。

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1092740

海上保安庁がこれを同庁のウェブサイトやSNSにアップしたところ、イラスト中のまつ毛や髪飾りに自然な点があり、「生成AIによる創作ではないか?」「著作権侵害ではないか?」との

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「きのこの山」のイヤホン

「きのこの山」のイヤホン

「きのこの山」をモチーフにしたワイヤレスイヤホンが3,500台限定販売されます。このイヤホンは144言語対応のAI同時翻訳機能を備えています。

以下の写真をご覧ください。

「きのこの山」の形状はちょうど耳の穴に合っており、きのこを耳に刺しているようにも見えることから話題を呼んでいます。そして何といっても「きのこの山」の知名度です。

販売前からイヤホンの類似品も出回っているようで、(株)明治は

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アパホテルがルームキー回収装置の特許を取得

アパホテルがルームキー回収装置の特許を取得

アパホテルが「エクスプレスチェックアウトシステム」を導入しており、この特許を取得しました。

「ルームキー回収ボックス及びこれを用いたチェックアウトシステム」(特許第7430491号)です。

チェックアウト時はフロントが混雑します。アパホテルは「1秒のチェックアウト」を推進しており、利用客がルームキーを回収ボックスに投入することにより、チェックアウトができます(ただし、これはチェックアウト時の精

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「ミッキーマウス」の名称が入った公園って大丈夫?

「ミッキーマウス」の名称が入った公園って大丈夫?

北海道旭川市に「神居ミッキーマウス公園」という公園があることが、北海道新聞、Yahoo!ニュースに取り上げられました。ディズニー社の許諾は得ているのでしょうか? 得ていないとしたら、著作権管理に厳しいディズニーなのに大丈夫でしょうか?

ディズニーは多くの登録商標を有しており、たとえば「遊園地の提供」を指定役務とする以下の商標があります。

この公園は1979年に建設されたとのことで、当時はサービ

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ピアノ用靴の特許権侵害

ピアノ用靴の特許権侵害

「ピアノ演奏用の靴」の特許侵害事件の話題で持ち切りです。この特許(5470498号と思われる)はある女性が有していますが、この靴をある会社役員の男性が製造委託契約が終了しているにもかかわらず販売していたため、特許権侵害で逮捕されました。

この事件が話題になった理由は次の3点であると考えます。

①特許権侵害で逮捕は珍しいこと
(通常は、民事上の措置としての差止請求と損害賠償)
②この靴の特許がお

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NewsPicksの無断転載事件

NewsPicksの無断転載事件

経済ニュースサイトである「NewsPicks(ニューズピックス)」は他の報道機関の写真などを無許諾で掲載していたとして、謝罪のコメントを出しました。これは、一般社団法人日本新聞協会から著作権侵害の指摘を受けた結果です。

NewsPicksは国内外の報道機関やメディア100社以上の記事を掲載していますが、利用許諾を受けていないコンテンツを掲載していたとのことで、主に写真のトリミングが行われていまし

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『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』事件

『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』事件

芦原妃名子さんの『セクシー田中さん』の事件をお伝えしましたが、この事件と関連してよく挙げられるのが、辻村深月さんの小説『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』のドラマ化事件です。この小説をNHKがドラマ化するにあたり、プロットを見せて欲しいと講談社(出版元)がNHKに要求しましたが、これは実現されず、クランクインの2週間前になってやっと全4話までの準備稿が提示されました。しかも「容認しがたい改変」があるため、

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