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新NISA「つみたて投資枠」

2024年から始まる新NISAでは、つみたてNISAの対象投資信託に1年間に120万円まで、累計で最大1,800万円まで投資できます(成長投資枠を使わない場合)。

もちろんやった方がいいのですが、この記事では敢えて、つみたてNISAの欠点だけをあげつらいます。逆に言えば、この欠点が大したことないと思えるのであれば思いきりつみたてNISAを利用すればよいと思います。


投資の基本

投資をギャンブルにしない鉄則は、

  • 長期運用

  • 分散(投資の時期の分散、投資先の分散)

です。


過去の実績

過去のデータによれば、株式投資が資産形成には有利です。全世界の株式に投資すれば、世界経済の成長に合わせて株価も上昇していきます。これまでは、長期的な平均で年率7%のリターン(株価の上昇+配当金)が得られています。


方針

上記「投資の基本」と「過去の実績」を踏まえ、全世界株式に投資する投資信託「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」を投資枠上限まで積み立てると仮定して考えます。


eMAXIS Slim 全世界株式とは

投資対象

全世界の株式に時価総額加重平均で投資する投資信託です。
経済規模、株式時価総額ともに世界最大のUSAへの投資が6割超となっています。

eMAXIS Slim 全世界株式目論見書より引用

純資産残高

2023年4月28日時点で、純資産(そのほぼすべてが株式)が1兆円+αあります。分配金の実績はないので今後もないと考えておくべきでしょう。

eMAXIS Slim 全世界株式目論見書より引用

組入れ上位銘柄

米ハイテク大手7社、いわゆるマグニフィセント・セブン(アップル、マイクロソフト、アマゾン、エヌビディア、Googleの親会社アルファベット、メタ、テスラ)への投資割合が高めです。純資産のうち13.7%がこの7社の株式です。

eMAXIS Slim 全世界株式目論見書より引用

経費率

0.15%です。
たとえば100万円投資していたら、1年間に100万円×0.15%=1,500円の手数料がかかることになります。実際には1,500円徴収されるのではなく、投資信託の価格が経費分だけ目減りします。

eMAXIS Slim 全世界株式目論見書より引用


全力投資するとどうなる?

そんな eMAXIS Slim 全世界株式を、つみたて投資枠の上限1,800万円まで買い付けたとしましょう。すると・・・

1年間に45,000円以上の経費?

純資産に対して0.15%の経費がかかります。1,800万円に達するには、毎年上限の120万円を積み立てていっても15年かかります。年率で7%投資信託の基準価格が成長していたと仮定すると、1,800万円を積み立て終わった時の純資産額はだいたい3,015.5万円に達しています。

すると経費としては 3,015.5万円×0.15%=45,233円 かかることになります。そのまま保有し続け順調に投資信託の基準価格が成長していけば、経費も少しずつ上昇していくことに😥

既に述べたように、実際にはこれが経費として徴収されるのではなくて投資信託の価格がその分目減りするという形で表れるので、フトコロが痛むことはありません。自分でこの投資信託とまったく同じ資産構成で個別に株を買って運用したとした場合の資産額と比べると、投資信託の方が少し安い(毎年の経費を差し引いた分だけ低い)、ということになります。

毎年120万円を積み立て、世界株の年率リターンを7%とし、経費率0.15%で計算すると、積立年数の経過とともに累積経費は以下のグラフのように加速度的に増加していきます。

投資信託の保有コストの累積額
横軸は経過年数、縦軸の単位は百万円

15年間の積み立て期間中に負担する保有コストは累積で30.6万円に達します。
以降も保有し続けると、20年後には58.4万円、25年後には97.5万円、30年後には152.2万円の経費負担となります。
もっとも30年後には純資産額が8,000万円を超えているので、百数十万円の経費など気にならない?かもしれませんが・・・。


ホントに分散しているんだろうか?

組入れ上位銘柄の項にも書いたとおり、米テック大手7社への投資が13.7%に達します。仮に時価総額の変動がない(株価の変動がない)としたら、たとえばアップルには積み立て投資総額1,800万円の4.2%を間接的に投じることとなります。その額、75.6万円。マグニフィセント・セブン全体では、1,800万円の13.7%なので246.6万円。

ソフトウェア産業に偏っているのも気になります。こう言ってはなんですが、これらの企業はたとえなくなっても人は生きていけます😅 不便にはなりますが、30年前はそういう世界でした。それでも快適に生きていたと思います。これは私の個人的な好みかもしれませんが、19~20世紀に成長した、人が安全で、清潔で、快適に生きていくのに絶対に必要な産業への投資比率がもっと高い方が、不確実な将来への分散が効いている気がするのです。


無報酬で何年も継続できる?

eMAXIS Slim 全世界株式は、分配実績がありません。たぶん今後も分配は期待できないでしょう。配当は全額自動で再投資される、というのは確かに資産を増やすにはもっとも効率的な方法です。ですが、目に見える報酬(配当)がないのに毎年120万円も積み立てるという、修行僧みたいな禁欲生活が果たしてできるものでしょうか?特に投資経験がない人の場合。
1%でも分配金があって、積立額が増えるほどに分配金も少しずつ増えていくのが実感できれば、積み立てを継続するモチベーションが維持できると思います。仮に年1回、純資産残高の1%の分配金があったとすると、2年目以降1.2万円、2.4万円、3.8万円、5.3万円、6.9万円、…と少しずつですが漸増する収入が発生します。この心理的な効果はなかなか効きます。


投資をどう終えるかを考えなければいけない

分配金や配当がある投資であれば、投資の神様ウォーレン・バフェットのように「投資期間は永遠である」という戦略を採ることができます。投資は回収せず、配当金を享受し続ける。自分が死ぬ時に多額の財産を残すことになるので、「子孫に美田を残したくない」という方には不向きですが、たとえ動けなくなっても死ぬまで収入が途絶えないという安心を得ることができます。

一方で、分配金や配当がない場合は、どこかで売却しなければいけません。老境に入り収入が少なくなっている段階で、資産を取り崩すという行動をすることや、資産が目減りしていくのを見るのはストレスになるかもしれません。なまじそれまで積み立ての経験しかないと、売却という行動は思った以上に心理的負荷がかかるものです。

なので、積み立てを始める前に、出口を考えておきましょう。いつ、どれくらいの期間で、投資を回収するのか。家に帰るまでが遠足、というのと同じで、資金を回収するまでが「分配金なしのつみたて投資」です。以下の記事でも書きましたが、回収に失敗するとたいへん残念な結果になります。


私の場合

以上を踏まえて、私は成長投資枠をめいっぱい使って有配当の大型優良株に投資し「投資期間は永遠である」と宣言して永久に売らず、配当を享受し続ける戦略を採ります。
つみたて投資枠をどうするかまだ決めかねています。私は超長期を指向して運用するので、運用期間が長くなるほど経費がかさむ投資信託にはあまりいい印象がありません。そして時価総額加重平均型で組入れ比率が大きくなるアップル、メタ、テスラはあまり好きではなく😅、個別株投資の対象としては絶対に選ばない株を、投信経由であっても保有するのはあまりいい気分ではありません。


まとめ

以上、投資信託のつみたて投資の欠点ばかり列挙してきましたが、投資に興味がなかったり投資に時間を割きたくなかったりする人には、効率的に資産形成する手段であるのは確かです。
諸々踏まえて検討して、ご自身の責任において、投資行動を決定してください。


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