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【歌評】足りない / DUSTCELL / 2022年 / 作詞:EMA・Misumi

──『導かれるままドア叩いた
    揺るがないで 私の意志 
     まだ消えたくない
』──

☆☆☆
 歌詞の引用部分は『』になっています。著作権違反とならないように慎重に書いていきます。
☆☆☆

 2022年11月3日(木)。13時46分。文化の日。

 久しぶりの【歌評】になるが、相変わらず自由に書こうと思う。

 【歌評】ってなんだ? という気もするが、単純に歌を聴いての私の感想であり、しいては、あまりに美しい名言のような歌詞を自分の記事にも載っけて、他の人にも聴いてもらいたいという、ただ私のわがままなコーナーなだけです。

 冒頭の歌詞。そこだけが本当に身に染みる。

 『導かれるままドア叩いた
  揺るがないで 私の意志 
  まだ消えたくない

 『導かれるままドア叩いた』という表現で誰もがピンと来るであろう歌詞なのは、誰もがその自分の置かれた現実にいる状態──当たり前すぎて書くのもアレだが、誰もが、「何者」かであり、それを選んだのは自分自身であることは、ほとんどの人に当てはまるだろうと思われる。

 ほとんど、と言ったのは、誰もがその道を選べるほど贅沢な人生を進んでいないことを考慮しての発言なのだが。もう一度書くと、ほとんどの人が、導かれるように自然と何かを選択し、その渦中にいて、自分が選択したにもかかわらず、苦しいことやつらいこと、ないしは継続していくことの困難さを痛感して、「もう辞めてしまいたい」と思うことが多々あると思う。

 そんな中で。

 『揺るがないで 私の意志 
  まだ消えたくない

 という本音も出てくる。

 『揺るがないで 私の意志』というのは、苦しさの中にも継続を選びたい、自分で始めたことなので、力が劣らぬ限りは続けていきたい、という、まあ、誰もが思う考えの、現実に立ち向かう様子が聴いて取れる。

 私に移し替えてもいいでしょうか。

 私の場合は、昔から作家、ないしは小説家になりたいと思っていた。その努力も大学時代の一人暮らしの時に、「美しい文章とはどんなものなのだろうか」「名言をジャンルを問わずに集め続けたい」みたいな感覚で、本やら漫画やら、ツイッターやらゲームやらで集め続けた。大学の専攻も哲学で、高校時代か、それ以前から「作家になりたい」という夢は漠然と持っていた。大学時代には「小説家になって印税で暮らしたい」とか、ちょっと良く分からない方向に夢が変わってしまったが、とにかく、自分の考えを文章で打ち続けたい、という夢は一貫して持っていた。

 そして大学学部四年生。発達障害の薬を飲んでいたら昼間も特に眠くなくなり、普通に就職しようとしていた。誰よりも素早く就職活動の情報を集めていた。

 その矢先、統合失調症に襲われる。

 閉鎖病棟に3ヶ月居たことで、大学の出席ももちろん足りず、留年が確定。その後も病状は悪化。親に経済的な負担を与えたくないとも思い、大学を辞める決意をした。

 そしてパートタイマーで働き始める。自分の発言権などほぼなく、自分が思い付いたアイデアなど誰も聞いてくれる人もなく、淡々とした日々が続き、大学時代に始めていたカクヨムへの投稿への扉のドアを、また叩くことになった。

 『導かれるままドア叩いた』という歌詞が、私が子供の頃から一貫して持っていた、「作家になりたい」という夢の、その延長線上にカクヨムに登録する、という運命のような状態に、歌詞と自分の行動とが重なった。

 導かれるままに、自分からドアを叩いたのだ。

 結局のところ、統合失調症になろうと、いや、なってしまったからこそ、再び『導かれるままドア叩いた』という状態に陥ってしまった。自分の選択である。誰かからやれと言われたわけでもない。いや、過去の自分や、今現在の自分の性格、性癖、趣味趣向などから、《《叩かずにはいられなかった》》というのが正しい解釈なのかもしれなかった。

 そして、毎回、もう辞めようかと思う時がある。何回もある。やっても意味がないとか、お金にならないとか、色んな感情が渦巻く時がいつ、なんどきもある。

 そんな時に。

 『揺るがないで 私の意志 
  まだ消えたくない

 の歌詞をウォークマンで聴く。そうだ。本音では私は消えたくないのだ。ずっと何か文章を綴っていたいのだ。それに私は統合失調症という珍しい病気も持っている。ただ憂鬱になるとかそういうレベルではない。誰もが信じることのないような病状が次々と現れて、これは残しておく価値はあるのではないか、といつも思い至り、苦悶する。

 お金にならなくても。趣味でも。できるだけたくさんの人に見られて、自分の生き様の醜いところも、頑張っているところも、虚しさも、共有する誰かがいなくても、どこかの他人に、私自身を見せつけたい。統合失調症だけでなく、自分という存在が生きていることを残しておきたい。

 そういう気持ちが結局あるのだ。

 『導かれるままドア叩いた
  揺るがないで 私の意志 
  まだ消えたくない

 ウォークマンで聴くたびに、続ける勇気を持ち続けようと思う、自分への応援ソングとなっている。

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