井上智裕

劇団春眠党主宰。 しばいのまち編集部。 シナリオとか、小説とか、しょうもない話とかを書…

井上智裕

劇団春眠党主宰。 しばいのまち編集部。 シナリオとか、小説とか、しょうもない話とかを書いたり書かなかったり。 好きなもの:村上春樹、吉本ばなな、ほぼ日、西川美和

最近の記事

眠れない夜のための

大学2年生の頃、私は30歳で死ぬと思っていた。 それは、教授との個別面談の時の話だ。 私はほとんど授業に行っていなくて、大学1、2年生のための個別面談というものが年に一度設定されていたのだが、完全に無視していた。 それでも何度も催促が来るもので、四度目の催促くらいでやっと行く気になって、面談室に赴いた。 その時話した教授について、当時はほとんどなにも知らなかった。その人はどうやらかなりゆうめな建築家だったらしく、東大を出た後に腕一本で食ってきたということだった。 「

    • 素敵なあの子と電車に乗って

      気になっているあの子と一緒に帰りたくて、タイミングを合わせて席を立つ。 といった経験をしたことがある人は多いだろう、いや、私はだけかもしれないが。 ともかく。 気になっているあの子と歩く帰り道ほど素敵なものはない。1日の終わりのご褒美と言っていい。 あ、お疲れ。帰り?…家どっちだっけ?あ、じゃあ一緒だね。 なんつって。 いやあ。いいね。書いてるだけでドキドキしちゃうね。 歩きもいいけど、電車もいい。 肩触れ合うくらいの距離感で、迷惑にならないように小さめの声で

      • 会社で嫌なことがあったなら

        「いい上司なんてほとんどいないよ。ただ、上司に嫌なこと言われたら、飲みに言って愚痴言える同僚がいればいいんだよ」 これ、誰が言ったんだっけなあ。忘れちゃった。しかし、そうだなあと思う。 僕は会社で(会社じゃなくても)嫌なことがあると、そいつにズバッと言ってやる妄想をします。 「なんかいいたいことあるんやったら、はっきり言ったらええやないですか」とか、 「それって〇〇という理由で合理的じゃないですよね?違いますか?」とか、威勢良く言っています。 でも実際は、 「いや

        • 感想を言わない男はつまらない

          「感想を言わない男はつまらない」 最近、彼氏と別れた友人が言っていたことだ。 確かになあ。大したことを言って欲しいわけじゃないんだよね。とりあえず、なんでもいいからなんか言えと。 別れた彼氏は、とにかく感想を言わなかったらしい。君の話の方が聞きたい、と。 君の話の方が聞きたい。 なかなか歯の浮いたセリフである。 見城徹が珍しく(失礼!)ツイッターでまともなこと言っていた。 仲良くなりたければ感想を言え、と。 彼は職業的に作家と関係を詰める必要があったことは想像

        眠れない夜のための

          占いが好き

          占いが好きです。 大学4年生の時、家族と仲が悪く、実家を出るかどうか真剣に悩んでいた。 あれは、たしか2015年の元旦だったと思う。 友人と梅田をぶらぶらしていたら、不動産屋の前を通った。店頭に張り出された物件情報をみながら、京都より安いんやなあ、なんて言っていたことを覚えている。 そのあと、梅田のお初天神に初詣に行った。 境内には、ネオンで作られたハート型のアーチがあったり、おみくじがガチャポンでひけたりと、まあ、「若者向け」にデコレートされた神社であった。 そ

          占いが好き

          社会に適合する哀しみについて

          上手くやれてしまう哀しみだってある、のかもしれない。 この春から新しい職場に勤めている。簡単に言うとキャリアコンサルタントみたいな仕事だ。 「これがやりたい!」という強い思いがあったわけではない。食っていくために仕方なく就職した。 しかし、働いていて、ふと仕事を楽しんでいる自分に気づく。 そうすると、どうにも、なんとも言えない哀しみを感じる。 萩尾望都の作品に「半神」という短編漫画がある。 十数ページに満たない、とても短い作品だ。 これはとある双子の物語だ。しか

          社会に適合する哀しみについて

          しまらっきょの冒険

          しまらっきょの冒険 しまらっきょは旅に出た。 自分と最も相性のいいカレーを探す旅だ。 しまらっきょは一般的な家庭に生まれた。 父は地方公務員、母は専業主婦、3つ上の姉は先月結婚した。相手の青豆は文学部でスピノザのけんきゅうをしている。 しまらっきょは、幸せだった。 しかし、彼は行かねばならない。 なぜなら、彼にはカレーが必要だからだ。 たとえ今が幸せでも、彼はカレーなしでは生きていけないのだ。 しまらっきょは旅に出る。 それは自分の半身を探す旅なのだ。

          しまらっきょの冒険

          アクティブな女性が好きです。

          「あなた、そんなにダラダラしていて時間がもったいないと思わないの?」 好きな女性に言われた言葉である。 昔から、私の好きになる女性はアクティブな人が多い傾向にあるようだ。 アクティブだから好きになるわけではない。好きな人がたまたまアクティブなのだ。 一方私は、というと全然アクティブではない。休みの日は寝ているか、本を読んでいるか、飯食って酒飲んでるかである。 当然のごとくライフスタイルが合わない。好かれない。どうしたもんかと思う。 モテたいと思う。 しかし、私は

          アクティブな女性が好きです。

          息子はちゃん付け、娘は呼び捨て

          飲み会での上司の話。 母親というのはどうして、ああも息子が大好きなのか。一方娘に対してはいささか厳しい(というか冷たい)育て方をする。ということが往々にしてある。 飲み会で異性の兄弟がいる場合、母親から、だいたい息子は〇〇ちゃん、娘は呼び捨てにされているということがわかった。 フロイトじゃないけど、やっぱり異性の親と子供は特別な関係なのだろうか。 上司の話は続く。 息子が女房を実家に連れて行った時の、父親のキモさは尋常じゃないと。 若い女性に優しくされて、嬉しくな

          息子はちゃん付け、娘は呼び捨て

          同棲するなら

          昔、とにかくback numberが嫌いだった。 僕が大学3年生の頃、サークルの友人の部屋によく泊まった。 その友人の朝のアラームは、まだ有名ではない頃のback numberの「花束」だった。 想像していただきたい。男の友人の部屋で、 「ねえ、どう思う?これから2人でやっていけると思う?♪」 である。ちょっと、いや、かなりきつい。この頃からback numberが苦手だ。 しかし、嫌い嫌いと言いながらも、何度も何度も聞いているうちにメロディーがこびりついてしまい

          同棲するなら

          日記です。

          今日は昔いた演劇サークルの先輩の芝居を見ました。 あと、中高の友人と飲みました。 変わってくこともあるし、そう簡単に変わらんこともありますな。 誰に向けてでもない、日記。

          日記です。

          暗闇の俳優。展に行きました。

          執着する対象を失ったら、人はどうなってしまうのか。 ほぼ日の記事を見て、星野正樹さんの写真展に行ってきた。 パーキンソン病に罹患し、演劇プロデューサーとしての道を絶たれた星野さん。そんな彼が撮った愛猫の写真が展示してされていた。 この写真は、自室をテープで目張りして真っ暗闇にし、頭に懐中電灯を巻きつけて、震える手で撮られたものらしい。 暗闇は擬似的な劇場で、言葉を介さずにコミュニケーションがとれる猫を俳優に見立てて、かれは演劇を作ろうとしたんじゃないかと、勝手に推測す

          暗闇の俳優。展に行きました。

          勝手にさらけ出してろよ

          最近ツイッターなんかを見てると、「自分をさらけ出せ!」的なフレーズをよく見かける。 なんというか、少し暴力的な気がする。 新国立劇場の小川絵梨子さんが(たぶん)言っていたことで 「役者は自分のもっとも深いところにある体験をさらけ出す必要はない。それは大切にしまっておくべきだ」 という話がある。 「俺はこんなにさらけ出してるぜ!お前はどうだ?」 なんて、言われてもねえ。勝手にさらけ出してろよと言いたくなる。 役者に「もっと自分を見せろよ、隠すなよ」 とディレクシ

          勝手にさらけ出してろよ

          カメラマンと演出家は似ているのかもしれない

          最近写真に興味がある。 カメラマンの友人が出来て、彼が撮る何気ない写真を見ると、「プロっぽいなあ」と思う。 普段は本当にどうしようもない人なんだけどね、なんだろう、あのかっこよさは。 ファインダー越しに見える真剣な表情がいいのか、あるいは「私を綺麗に撮ってくれる」という信頼感があるからか、とにかくモテそうだ。 話は飛ぶが、写真は、特に人物写真は「被写体とカメラマンの関係性をうつすもの」と言われるらしい。 言われてみれば、しれはそうかもな、と思う。 嫌いな人に撮られ

          カメラマンと演出家は似ているのかもしれない

          国語の教科書に挟まれた手紙の話

          昔はモテたとほざくオッさんほど醜いものは無い。 だけど、今日だけは言わせて欲しい。 僕は小学生の時、モテたのだ。 ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ それは僕が中学2年生の時、国語の授業の準備をしている時だった。 その日から、入学時に配られた中学2年生用の国語の教科書を持ってくるように言われていた僕は、どんな内容かとそれをパラパラとめくっていた。 すると、一枚の封筒がひらりと落ちた。 なんだろうと思い裏面を見ると、小学校のとき同じクラスだった、とある女

          国語の教科書に挟まれた手紙の話

          今日は前向きなので、未来のことを

          今日はなんだか気分が良いので、未来のことについて書きます。 基本的にやや後ろ向きなので、未来のことはあまり考えたくないのですが、今日は前向きな気分なので、先のことについて想像してみます。 とにかくお金が欲しいなっていうのがあります。欲を言うなら、気分よくお金を稼ぎたいです。 気分よく、と言うのはつまり、自分の問題意識とどこかしら重なる部分がある、ということでしょう。 何も考えずに出来る楽そうな仕事というのは、得てして本当は楽ではない、んじゃないかと思います。 その人

          今日は前向きなので、未来のことを