留学体験記 (5) in タイ (臨床留学)

氏名:佐藤 嵩浩 (医学部5年)(留学当時)
留学先:シリラート病院(マヒドン大学)
留学期間と実習科:
2019/02/04~2019/02/15 循環器内科
2019/02/18~2019/03/01 胸部外科

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1.留学動機
 私が今回留学を希望した理由としては、自分の英語に対する苦手意識が挙げられる。大学入学前より英語でのコミュニケーションは得意ではなかったが、入学後の医学英語の授業で、リスニング力の低さや自分の考えを咄嗟に英語で話すことに対する苦手意識から焦りを感じることが増えていった。次第に「学生でいる間に英語を使わざるを得ない環境を経験して苦手意識をなくしたい」と思うようになり、その手段として臨床留学プログラムやAME(Advanced Medical English)に興味を持ち、友人と相談した上で一緒に受講することになった。
マヒドン大学を選んだ理由は、部活の先輩が過去に留学していたために話を聞く機会が多く、興味が沸いたから。加えて、アメリカなどの英語圏に比べてアジアの国には比較的馴染みがあるため、最初の留学には最適であると考えたから。

2.実習内容
 私は今回の留学で「循環器内科」と「胸部外科」の2つの診療科でそれぞれ2週間ずつ実習を行った。

【循環器内科】
 1週間目はカテーテル治療を専門とする医師について回った。午前中は主に手術室に入り、
冠動脈造影やカテーテル治療の見学を行った。治療の合間に症例について細かく教えていただき、実際にカテーテルを触ることができた。施術室のすぐ隣のモニター室で治療直後に患者家族に説明を行ったり、造影結果から治療が必要であると分かった場合はその場で本人や家族に治療の同意を得たりと、治療の現場と患者側との距離感の近さを感じることができた。また、週末には東南アジアの循環器内科医が集うシンポジウムに参加する機会があった。様々な国の現場で働く医師たちが英語で議論を行っている姿は、自分にとって大きな刺激になった。
 2週間目は研修医の方々と一緒にCCUでの実習を行った。午前中は回診について回り、午後は外来に参加した。外来では患者に協力してもらい、疾患名を伏せた状態で胸部聴診を行い診断する訓練に参加することができた。また、大学内で毎年この時期に開かれる大規模な講演会(Photo3)にも参加した。

【胸部外科】
 胸部外科では、朝は曜日ごとのカンファレンスに参加した。研修医が興味を持った分野や症例についてスライド形式で発表するものや、MMカンファレンス(死亡症例検討)が行われていた。
カンファレンス後は、基本的に夕方まで手術室に入った。心臓血管外科や呼吸器外科、小児外科が分かれている千葉大学病院とは異なり、領域を問わず胸部のあらゆる手術が共通の手術室で行われていたため、冠動脈バイパスグラフト術と弁膜症に対する人工弁置換術を同時に行う大規模なものや、小児の心室中隔欠損症に対する欠損孔閉鎖など毎日様々な術式を目にすることができた。
 
3.実習を通して
 今回の実習を通して、タイの医学教育について日本とのいくつかの違いを実感した。一つは、日本のように自国語に訳された教科書が揃っていないため、医学生が英語での学習を余儀なくされている点だ。これは裏を返せば、自国語で医療を学んだ後に英語で学び直すプロセスが必要ない、ということでもある。実際、病院内の医師や学生は皆英語が堪能であったためコミュニケーションで困ることはほとんどなかった。カンファレンスでの発表に関しても、スライドは英語で作成されており、中には発表をすべて英語で行う場合もあった。
 次に、学生が行う医療行為の多彩さだ。特に循環器内科では、学生が患者に対して胸部超音波検査や運動負荷試験を行って自ら所見を取っていたため、教育レベルの高さを感じられた。研修医に関しても、地方病院で経験を積んだ上で大学に戻っているそうで、上級医とともに積極的に臨床に携わっていた。
 病院の状況についても驚く点があった。シリラート病院は病床数が2000床規模の極めて大きな病院だが、外来には毎日多くの患者が押し寄せており、病棟の通路をふさぐような形で簡易ベッドや担架に乗った患者が並べられている日もあった。一方で、一般病棟とは別にSiriraj Piyamaharajkarun Hospital(SiPH)という入院費が高額な高所得者向けの棟が存在しており、タイの貧富の格差の大きさも垣間見られた。

4.最後に
 今回の留学を実現させてくださった、医学教育研究室の稲川先生を始めとした先生方、学務係の黒瀬様、矢吹様、マヒドン大学国際交流課のMs.Korboon、Ms.Janjiraに心より御礼申し上げます。
 また、今回の留学に際しJASSOの海外留学支援制度より奨学金を支給していただきました。この場をお借りして感謝申し上げます。

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Takahiro Sato
Mahidol University, Siriraj Hospital(Thailand)
2019/02/04~2019/03/01
Cardiology / Cardiovascular Thoracic(CVT) Surgery

From February 4th to March 1st of 2019, I had the opportunity to stay at Siriraj Hospital of Mahidol University in Thailand as the exchange student from Chiba University.
I was interested in Cardiology and I wanted to experience the difference between Japanese hospitals and other Asian countries`. Additionally, my senior had been to the same hospital and he recommended me to stay at there. That`s why I chose Mahidol University.
I rotated in two divisions: Cardiology and Cardiovascular Thoracic (CVT) Surgery.
From February 4th to February 15th, I took part in the clinical clerkship of Cardiology. In the first week, I observed catheterization and CAG (Coronary Angiography) in the operation room. I had the opportunity to touch the catheter devices. In the second week, I rounded in CCU with the residents in the hospital.
From February 18th to March 1st, I observed a lot of operations in CVT. Doctors in this division do operations of heart, coronary artery, lung and children, so I could look on various types of surgical procedures.

Most of staffs and medical students in Siriraj were good at speaking English and kind enough to teach me the topic they were discussing about in the conferences and rounds. Therefore I didn`t feel so much inconvenient and difficulty of communication with them.

As described above, I got a lot of valuable experience in Bangkok. I`d like to express my gratitude to Ms. Korboon and Ms. Janjira, International Relation Office of Siriraj; Dr. Inagawa, Chiba University; and all the staffs of the Cardiology and the CVT, Siriraj Hospital of Mahidol University.


Sincerely yours,
Takahiro Sato

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