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#9. 波紋 .1


(前回まではコチラ)



波紋、、、


……… 〜〜〜 ………
……… 〜〜〜 ………


水面に
雫(しずく)の一滴が
触れたと
同時に


内側から外へ


さざりゆく波の紋様が
すこしずつ
何重にも
自然発生していくように


聞こえない音の
無音の響きが



自然発生し



波紋をカタチづくり


なし男の
内側から外側へ

広がっていった。



….


….



その波紋の
すこし後を


鎮(しず)かな間(ま)が、



内から外へ


あとに続くように
追いかけ
広がっていった。



それらが
耐え切れる境界、
ある一定の許容量をこえたとき、、、



「ウゥッッ、、、」




なし男から
うめき声が、
漏れ始めた。



それらは
だんだん
堰が耐え切れなくなった
とめどなく
流れだした。


奥底から
溢れてくるようだった。




これまで
ずっと、






ずっと、、
長いこと




がんばって
がんばって


周囲から言われること、


すべての要求に、


ちゃんと
しっかり
応えて続けてきた、


つもりだった、


走って
走って


きちんと
言われたことを
ひとつずつ
しっかりこなし



色々な要求に
精一杯
応えて
走り続けてきたつもり、だった。



問題などは、
何もない



ただ、、、、



応えても
応えても



それらは
何ヒトツ


「よくがんばってるね!」などの声が
どこからも
何ヒトツとも
聞こえてくる種類のものではなく



何か報われ
満たされる感覚が返ってくるものではなく


それらを
ひたすらに
こなした先には


何の反応もないまま
ただ
それらは当然のことと
受け止められるだけで



気づけば


また


ただ当然のように
次のハードルが上げられるだけだった。


ただ次に
当たり前に

がんばってこなした分だけ
高くなったハードルがあるだけだった。



長い間、
それが続いてきただけだった。



それぞれ、
人は
同時に、
多くの役割を背負っている


家族という中の自分
この人間関係の中での自分、
男という中の自分
学生という中の自分
国籍という中での自分
所属してる文化の中での自分
社会人という中での自分
経済社会という中での自分
人間という中での自分、、、



何個も
いや、
何十もの役割を
同時にこなしている



それらには
目に見えたり
見えなかったりだが


なぜか
とてつもなく
高い基準があるようだった。


そんな高い基準を



しかも
それぞれ
矛盾するものがある中で


あらゆる面で使い分け
バランスをとりつつ


こなし続け


なおかつ
そんな中の
中心にあるであろう自分を
正気に保ち続ける、、


とてつもない
ハードルがあるようだった。


生きるとは?


それほどの
ものであるのだろうか?


なし男にはわからなかった。


ただ
生きてる、


それだけなのに



なし男には
とてつもなく
とてつもない
高いハードルがあるように思えた。


(つづく)

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