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#2. その本は... 

(前回まではコチラ)


その本は...


何度も
読み返した本だから
どこに、どんなことが書いてるかは
だいたいわかっていた。


気分によっては
最初からペラペラ
さらっとながして読んで見る時もあったし


じっくり読んで見る時もあった。


時々は
いきなり途中のページをパッと開いてみる時もあった。


その本は…


その時々の自分に必要なことが書いてあったり
心にグッとくるフレーズに満たされていたりした


その本で語られるコトバ
その本から届けられる響き


それらは
いつも
どんな時も


なし男のそばにあって
応援し・よりそい、励ましてくれた。


「ん〜、真の名作って、こういうものかもしれないよ、たぶん、きっと、こういうものだよなー、少なくともボクにとってはさ、」


なし男は
読む度に、
そんなことをつぶやいたりしながら、


物語にちらばめられた
キラキラとした
コトバのきらめきに
手を引っ張られ


それらの
コトバとともに
手を携えて
扉を開け


その物語の
世界の中を
自由自在に


大きく深呼吸して
おさんぽしてあるいてまわるのだった。


それは
とっても

ヨロコビ…


そう
幸せで満たされた、ヨロコビの時間だった、


そんな時は
外側の世界の色々が

いつのまにか
遠くに過ぎ去って
忘れられしまい


決まりきった枠にはめられてるような
いびつな時空が
グンニャリ歪んで


大きく真っ白い光の輝きの中で


自分の内側に
大きくゆったりとした時間が流れる、


そんな時間ともにあれる、
そんな時間だった。


「さて」


そんなふうにして
今日も、
ペラペラとめくって
どこを読もうかなとしていたところ


「何の本を読んでるんですかー??」


とつぜん、知らないおじさんが声をかけてきた。


(つづく)

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