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#6. 擦り切れてる理由

(前回はコチラ)


「ずいぶんと擦り切れてるね、
 何度も読んだのかい?」


なし男は、
なんとなく
恥ずかしくなり


どう返せばいいか
わからず
黙り込んだ。


おじさんは
あわてて

「あぁ、
 
 全然、悪い意味ではないんだよ、
 気を悪くさせてしまったら、ごめんね、

 いい意味で言ったつもりだったんだよ


 とっても 読み込んでるんだね、とねー
 なんだか、感動しちゃったんだ。

 ヒトツのものにそれだけ思いを注げる、
 とってもステキなことだよね」



おじさんは、
終わりの
“とっても〜“と語るあたりは、


こちらに
ちゃんと届いてるか


目に見えない
反応、雰囲気を
見つめつつ



ゆっくり
一言ずつを


丁寧に
選んで
確かめながら


コトバをつなぎ、


伝え届けたあとは

なし男へ
間(ま)を空けるために

そーっと
ひと呼吸を置いた。




なし男の
心の奥底の動きの変化を
ゆっくり
一緒に待ってくれるような

なにやら
心地よい
間(ま)だった。


すーっと
鎮(しず)かで
おだやかに


自分の内側に
おおきくゆったりした
自然の時間が流れていった。


その
一瞬とも永遠ともつかない
不思議な
ふんわり
訪れてきてくれた間(ま)は



その後
しばらくして


大きなうねりとなって
『そうだったのか〜、よかったー』と


なし男に
心の奥底からの
ほーっとした落ち着きと
大きな安心を
もたらしてくれた。



そうしていると
だんだん
不思議なことに


ふつふつ
もりもりと


心の奥の奥底の方からか
どこからか
よくわからない所から


むくむく
エネルギーと
元気がわいてきて



うれしさのうねりに
飲み込まれるような感覚になり、、



「そうなんです!
 とってもオモシロい本なんです!」


いつのまにか
自然に
思わずあげてしまった
自分の声の大きさに


なし男は
自分で驚いた。


(つづく)


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